ハラスメントの再生産
[要旨]
小学生の発明したランドセルについて、ヤフーニュースで多くの批判のコメントがつきましたが、これら批判のための批判のようです。日本には、このような、イノベーションの芽をつぶそうという人の存在が少なからずあり、イノベーションが起きにくい要因になっているようです。
[本文]
ノンフィクションライターの窪田順生さんが、ダイヤモンドオンラインに、小学生が発明したランドセルへの批判に関する記事と投稿していました。「発端は今年4月、栃木県の小学生6人が開発に関わった『さんぽセル』の発売だった。これは2本の棒状のものをランドセルに取り付けるとキャリーケースのように引きずって運ぶことができ、ランドセル運搬に必要な力が90%軽減されるという優れものだ。
しかし、発売を報じたYahoo!ニュースに1000件を超える批判コメントが寄せられてしまったのだ。(中略)『開発者は頭悪いな、ランドセルは子どもが転倒した時に頭を打たないためにあるんだ!』『成長期の子どもがキャリーを引いて歩いたら体のバランスが悪くなって背骨がゆがむ!』『ランドセルは毎日背負って歩くことで下半身が鍛えられるのにもったいない!』」
これについて、窪田さんは、次のように分析しています。「これらの批判は、大前提としていることがかみ合っていないので、建設的な話し合いができないのだ。とにもかくにも、つぶしたい。新しい取り組みなど認められない、そんな結論ありきで、『ちゃぶ台返し』をしているようにしか見えない。このような形で、日本社会にはイノベーションの芽をつぶそうという人たちがいる。(中略)
『体罰』や『シゴキ』がわかりやすいが、日本社会は、『オレたちガマンしてきたんだから、お前たちも同じようにガマンしろよ』という感じで、自分が受けたハラスメントを次世代に忠実に再現していく傾向が強い。この『ハラスメントの再生産』こそが、イノベーションを阻んでいる一要因だと個人的には考えている」
私も、窪田さんの指摘する、「ハラスメントの再生産」を会社勤務時代に経験しており、仕事の労力の多くをこれへの抵抗に費やしていたと感じています。こういった経験から、「ハラスメントの再生産」は、窪田さんと同様に、あってはならないと私も感じています。とはいえ、ハラスメントの再生産は、感情の問題なので、これをなくすことはとても難しい課題だと思います。
でも、そういった非生産的な慣行をなくすことによって、業績を高めている会社も存在します。これからの経営者は、生産活動や販売活動よりも、ハラスメントの再生産を解消するといった、経営環境(内部環境)の改善に力を発揮することが求められているのではないかと、私は感じています。
2022/6/10 No.2004