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コンサルティング機能の効果は限定的

[要旨]

金融庁では、地方銀行に対し、コンサルティング機能を強化すべきという意見があるようです。その方向性は正しいものの、効果は限定的であり、それだけでは地方銀行の収益状況を転換させる原動力にはならないでしょう。


[本文]

経済情報通信会社のブルームバーグのホームページに、金融庁銀行第二課長の新発田龍史氏へのインタビュー記事が掲載されていました。「地方銀行のビジネスモデル改革の先にあるべき姿は、『三河屋の三平さん』だと、新発田氏は指摘する。三平さんは、漫画サザエさんに登場する酒屋の御用聞き。酒やしょうゆが切れる前に磯野家に顔を出し、必要な注文を取っていく。いわば、『ニーズ』を未然に察知し、『タイムリーにソリューション(解決策)を提供する』キャラクターだ」

私は、新発田氏の指摘は、地方銀行に対してコンサルティング機能を強化すべきということであり、私も、その方向性は正しいと思います。しかし、地方銀行の改革の決め手にはならないと考えています。新発田氏が指摘するまでもなく、すでに、多くの地方銀行では、コンサルティング機能を強化しています。

その一方で、地方銀行のコンサルティング機能に関する力量が不足しているという指摘もあり、それも事実でしょう。しかし、地方銀行にとっての「コンサルティング機能」は、コンサルティング業を営むことではなく、直接の対価はありません。融資業務から得られる収益を、間接的に増加させることに過ぎません。もちろん、そのことが無意味ではないのですが、コンサルタント会社が行うコンサルティングを行うようが、大きな収益源を得ることにはなりません。

もうひとつは、銀行が融資相手の会社に助言をしたとしても、それを受け入れて実践するかどうかは、融資相手の会社が決めることなので、銀行側の働きかけの効果は限定的になるということです。これは、私が銀行勤務の経験や、フリーランスになってから中小企業の事業改善のご支援をしてきた経験から感じることなのですが、中小企業の経営者の方には失礼な言い方になるものの、「苦い薬を飲む(効果の高い助言を受け入れる)」会社は、あまり多くないということも現実です。

むしろ、助言は必要がないという会社ほど銀行に助言を求め、逆に、助言をきいてもらいたいと銀行が考える会社ほど、助言に関心がないという状況が実態です。では、銀行は、これからどうすればよいのかということについては、文字数の兼ね合いから割愛しますが、地方銀行のコンサルティング機能の発揮は大切であり、実践すべきことではあるものの、銀行の収益体質を大幅に変えるための鍵にはならないということです。

昨年、政府が、地域金融機関がシステム統合をする費用の一部を補助する資金交付制度を設けることを表明したり、日本銀行が、金融機関に対して、経営統合や経費削減に取り組むことを条件に、当座預金に、0.1%の金利を上乗せするなどの支援策を行うことを決定した背景には、地方銀行などの業績改善は、すでに、地方銀行だけの努力では実現しないということを、認識しているからでしょう。これからは、そのような前提で、金融政策を行うべきと、私も考えています。

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