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売掛金を100%回収することは不可能

[要旨]

売掛金が回収できなくなると、その分が損失となりますが、そもそも売掛金を100%回収することは不可能です。そこで、不可避であることを避けようとすることよりも、売掛金が回収できなくなりそうになったときはどうするかということを、前もって決めておくことの方が重要になります。


[本文]

私は、ときどき、なかなか回収できない売掛金について、ご相談を受けることがあります。では、売掛金が回収できないと、何が困るのでしょうか?それは、回収できなければ、その分だけ、損失が発生するからと考える方が多いと思います。当然です。ただ、その前に、売掛金は回収できない可能性があると考えていれば、現実に回収できなくなったとき、困る度合いが低くなります。

とはいうのは、売掛金は回収できないこともあると経営者の方が考えているのであれば、何らかの対応を講じることになるからです。このことは、ほとんどの方が理解されていると思うのですが、その一方で、売掛金は回収できない可能性があるという前提で、事前の対策をとっている会社は、中小企業ではあまり多くないと私は感じています。

では、事前の対策とはどういうことかというと、そのひとつは、与信管理です。具体的には、販売先の信用状況に合わせて販売額を決める、営業担当者ごとに販売額の決定権限を定めるなどということです。2つめは、管理体制の整備です。売掛金管理は誰が行うのか、回収が遅れたときは誰が督促するのか、販売先が業績不振になったり、支払い不能になったりしたときは、誰が債券管理するのかということなどを定めることです。

3つめは、経理規定の整備です。もし、売掛金が回収できなくなる可能性が高い時に、貸倒損失をどのタイミングで計上するのか、計上する判断は誰が行うのか、また、計上する判断をする人には、どれくらいまでの金額の計上を認める権限を与えるのかなどを規則で定めることです。このような準備をしていないと、売掛金の回収が怪しくなってきたとき、損失が発生しそうで困るという前に、誰が何をすればよいのかということで困ることになるわけです。

確かに、事前の準備をしてさえいれば、回収が難しそうな売掛金が回収できるようになるわけではありませんが、困ることは、貸倒損失の発生だけになります。そして、貸倒損失の発生は、ビジネスを遂行する中で避けることができないわけですから、乱暴な言い方ですが、不可避なことを避けること自体は無意味になり、この不可避なことを除けば、困ることはなくなるわけです。したがって、不可避なことをなくそうとせずに、避けられることだけを避けようとするべきということになります。この観点からすれば、貸倒への事前の準備をしていなければ、困ることは必然ということです。

2022/1/19 No.1862

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