事業再構築補助金の担保の制約(2)
[要旨]
事業再構築補助金の担保の制約は、事務局の知識や配慮が欠如していたため、補助金適正化法を、形式的に適用しており、補助金の本来の主旨を遂行の妨げになっています。
[本文]
前回、事業再構築補助金で建物を建てるにあたって、担保に関する制約があるが、それは誤った判断に基づくものであると述べました。今回は、その理由について述べます。補助金事務局が、担保の制約をしている根拠は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の、第22条であると思われます。
同法第22条では、「補助事業者等は、補助事業等により取得し、または、効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または、担保に供してはならない、ただし、政令で定める場合は、この限りでない」と規定しています。この条文を読めば、補助金を使って建てた建物を担保とすることは、禁止されるというように理解できます。
その一方で、事業再構築補助金は、建物の建設費も補助対象としています。私は、建物建設費を補助対象にしたことは評価できるものと思いますが、そうであれば、それを決めた時点で、敷地に(根)抵当権がある場合はどうするのかといった点まで想定し、対応を考えておくべきだったと思います。前回も述べましたが、(根)抵当権がある土地に建物を建てる場合、その建物も担保に加えることは、銀行業務では常識的なことであり、それは、決して銀行にとって過度に有利な慣行ではありません。
そして、事業再構築補助金の制度の制定にあたり、事務局では、担保の取扱についてはあまり考えずに公募要領を作成したものの、公募開始後、それについて質問され、あわてて法律を文面通りに適用し、(根)抵当権の設定されている土地へは、補助金を使って建物を建設することは認めないと判断したのだと思われます。また、事業再構築補助金が3,000万円を超えるときは、申請前に、事業計画書を銀行に確認してもらうことが必要です。
これは、実質的に、補助対象事業の遂行の確実性や、融資が必要なとき、その妥当性の判断を、事前に銀行に求めているものと思います。それだけ銀行が重要な役割を果たすと認めているのであれば、銀行取引に不利になるような担保の条件を付けることは、矛盾していると言えます。加えて、採択される事業は、付加価値率の向上が認められるなど、業績が向上するものと判断されたものであるのに、補助金で建設した建物に担保権が行使されることを想定することも、自己矛盾していると思います。(この点については、文字数の兼ね合いから、詳しい説明は割愛します)
では、補助金事務局はどうすればよかったのかというと、私は、次のように考えています。まず、適正化法の主旨は、補助金を目的外に流用されることを防ぐことであり、補助金で建設した建物については、補助事業者の事業のために設定される担保は、それを認めるよう、政令、または、省令を改正すべきであったと考えます。その際は、中小企業庁を、(根)抵当権の第一順位の権利者として設定するとすることも、ひとつの方法でしょう。結論としては、事業再構築補助金の担保に関する取扱いは、補助対象事業者を狭めることになり、中小企業庁の手落ちです。