マイナスブランドを防ぐには…
[要旨]
ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんによれば、食品偽装やデータ改ざんなど、不正をすることによって顧客の期待を裏切れば、その会社のブランドは一気にマイナスに陥ります。したがって、経営者の方は、ブランドをプラスの状態にするために、社外への活動に注力するだけでなく、それと並行して、社内をマネジメントすることも重要ということです。
[本文]
今回も、ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんのご著書、「愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング」を読んで、私が気づいたことについてご説明したいと思います。前回は、渡部さんによれば、ブランドとは、商品についているシンボルやマークを指すのではなく、顧客の心の中で優れていると認識されている状態を指すので、ブランドを確立するためには、商品の良さが認識されていない状態、すなわち、ブランドゼロの状態から、商品が優れていると認識される状態、すなわち、ブランドプラスの状態になることを目指さなければならないということについて説明しました。
これに続いて、渡部さんは、ブランドは、ブランドゼロの状態からブランドプラスになるだけでなく、ブランドマイナスにもなるので、注意が必要ということについて述べておられます。「(ブランドの状態は)プラスもあれば、マイナスもあるということで、ひとたびお客様の期待を裏切れば、そのブランドは一気にマイナスに陥ります。これを『ブランドマイナス』と言います。実際に世の中を見渡せば、食品偽装やデータ改ざんなど、不正をする会社が後を絶ちません。もし、あなたが信じていたブランドが、そのような不正行為を行っていたとすればいかがでしょうか?そんなブランドは嫌いになるだけでなく、買わなくなってしまい、下手すればタダでもいらないという状態になります。
このブランドマイナスが起こる原因はたったひとつ、それは、『この程度ならバレないだろう』という、ブランドに関わる人の驕りや慢心です。つまり、ブランドをマイナスに陥れるすべての原因は人。もう少し踏み込むと、経営者や社員など、ブランドに関わる社内の人間です。ゆえに、経営者ひとりがブランドの重要性を理解していても、ブランドをつくることはできません。ブランディングはブランドに関わる社内全体で取り組まないといけないのです。最後に、もうひとつ、重要なポイントをお伝えします。
ブランドの状態は、プラスになれば『少々高くても買いたい』となり、マイナスになれば『タダでもいらない』というように、お客様の購買行動を左右します。そのため、多くの経営者は、ブランドをプラスの状態にしようと、社外への活動に注力しがちになります。もちろん、それも大事なことですが、それと並行して、ブランドマイナスの状態に陥らないよう、社内をマネジメントすることも重要です。ブランドの状態をプラスにするには、社外と社内の両方を意識しないといけないことを押さえておいてください」(80ページ)
以前も述べたように、顧客は、モノ消費ではなく、コト消費、トキ消費、イミ消費をするようになってきていることから、商品そのものよりも、それを販売(製造)している会社や、その従業員の態度や姿勢まで評価するようになってきています。したがって、商品そのものに直接的な影響がなくても、会社が法令違反をしたりすると、顧客は、会社、商品、そして、ブランドに否定的な評価をするということは、渡部さんのご指摘のとおりです。
そこで、渡部さんは、ブランドプラスの状態を目指すために、会社から顧客への働きかけでなく、会社は従業員への働きかけも必要になると述べておられます。ちなみに、会社から顧客との関係を強化する働きかけをエクスターナルマーケティング、会社と従業員の関係を強化する働きかけをインターナルマーケティング、従業員と顧客との関係を強化する働きかけを、インタラクティブマーケティングといいます。
この3つのマーケティングは、かつては、従業員の活動そのものが商品であるサービス業のためのマーケティングとして位置づけられていましたが、これまで述べてきたように、有形の商品であっても、コト消費やイミ消費が行われる時代では、あらゆる事業にあてはまると、私は考えています。今回は、3つのマーケティングについて詳しい説明はしませんが、ブランドプラスの状態を目指すためには、事業活動の結果である商品(製品)だけでなく、それが販売(製造)される過程も評価の対象になるということを認識することが、ブランディングを成功させる重要な鍵と言えます。
2024/7/4 No.2759