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売る努力よりも売れるシステムづくり

[要旨]

ニトリでは、チェーンストアの考え方に基づき、「売る」努力を求めるのではなく、会社として「売れる」状態をつくることを実践してきました。これは、チェーンストアでは、仕組み(システム)をつくることが重要であるという考え方ですが、この考え方は、チェーンストアでない会社にも共通して重要なものです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんのご著書、「ニトリ-成功の5原則」を読で、私が気づいたことについてご紹介します。似鳥さんは、チェーンストアにおいては、システム化が重要であると説明しておられます。「(チェーンストアのコンサルタントの第一人者の)渥美先生から私が教わったチェーンストア理論では、『システム化』が鍵になっていました。ビジネスにまつわるすべてのことを標準化して、どこでも誰でも同じことができるようにする、価格も、品質も、品揃えも統一し、仕事のやり方も統一することが重要です。すなわち、一人ひとりに、『売る』努力を求めるのではなく、会社として『売れる』状態をつくる、『儲ける』のではなく、『儲かる』状態をつくっていく、社員が特別なことをして努力しなくても、自然にそうなるようにしていくということです。

もし、たいへんな時間を使ってがんばって売上を上げた人がいたとしても、他の社員が見たら、『あんなこと、オレにはとてもできない』と思うでしょう。そこで、チェーンストアの考え方では、そうのようなことを社員に求めるのではなく、すべての社員が時間をかけないでも、自然と同じことができてしまう仕組み(システム)をつくることがポイントです。システムとは『よい習慣』であると、私は考えています。すなわち、悪い習慣を見つけ、断ち切ってなくす、よい習慣をつくって、それを拡大し、会社に植えつけていく、それは、企業文化(コーポレートカルチャー)と言われるものです」(102ページ)

ニトリと同じく、チェーンストアであるマクドナルドが急速に発展したのも、おいしいハンバーガーをつくったからではなく、たくさんの店舗で、アルバイト店員の方が同じ味のハンバーガーをつくることができる仕組みをつくったからということは、広く知られています。したがって、経営者の方の役割は、事業活動の中に入って、製品を製造したり、商品を販売したりすることではなく、事業活動の中には入らず、仕組みづくりを行うことだと、私は考えています。これに対して、「自社は、チェーンストアではないから、仕組みづくりを行う必要はない」と考える経営者の方もいると思います。しかし、仕組みづくりは、チェーンストアでない会社でも重要であると、私は考えています。

というのは、ドラッカーは、「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである、マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである」と述べていることは、よく知られていますが、現在は、製品をつくってから売るという考え方ではなく、売れる製品をつくらなければならない時代になっていると考えることができます。このドラッカーの考え方から見れば、事業活動が成功するかどうかは、事業のプロセスに注力するよりも、どのようなプロセスをつくるか、すなわち、仕組づくりが重要であるということがわかるでしょう。

2022/10/26 No.2142

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