事業再構築補助金の根抵当権問題(6)
[要旨]
事業再構築補助金は、業績の向上が見込まれる場合に採択されます。そのことは、補助金で建てた建物に担保設定が行われていても、実際に、担保権が行使される見込まれないということです。このようなことから、担保設定にこだわることは、あまり意味がないと考えられます。
[本文]
前回は、事業再構築補助金は、リスクに果敢に挑む会社を支援する補助金制度であり、補助事業そのものにリスクがあるのであるから、形式的に根抵当権の設定にこだわりすぎることは、事業再構築補助金の斬新さを失わせることになるということについて書きました。今回は、根抵当権の設定にこだわり過ぎることが問題となることを、別の観点で説明します。事業再構築補助金は、「必須申請要件」として、事業計画書で、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3%以上増加、または、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3%増加を達成できることを示さなければなりません。
すなわち、採択された事業計画は、補助金事務局が、その達成が見込めることを認めたことになります。このことは、そのような事業計画を申請した会社は、補助金で建てた建物に担保設定さるとしても、業績が向上することが見込まれるわけですから、担保権が行使される見込もないということになります。したがって、行使される見込みのない担保権について、その設定を認めないということは、矛盾していることになります。
これに対し、業績が向上することと、補助金で建てた建物を目的外に使用されないことは、別の問題だという主張があるかもしれません。しかし、補助金で得た資産が目的外に使用されるかどうかは、担保契約がある場合は行われ、担保契約がない場合には行われないとは限りません。このように考えれば、担保契約の有無にこだわることは、あまり意味がないと言えます。とはいえ、これまで示してきた私の考え方が、100%正しいとは、私も考えていません。
ただ、そもそも、建物を建てるための費用を補助する補助金制度の構想を立てた時点で、不動産担保についてはどうするのかということについては、検討することができたはずです。そして、担保設定については厳格に認められないのであれば、このような補助金制度を最初から設けなければよかったし、または、当初から公募要領に、そのことを明記すればよかったと、私は考えています。
2021/11/4 No.1786
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