在庫30日ルールで資金効率を高める
[要旨]
過剰な在庫は資金効率を下げ、それは利益を減らすことになります。そこで、在庫の効率化を意識して事業活動を行うために、在庫30日ルール、すなわち、30日を過ぎた在庫は、割引販売などで処分するというルールを採り入れることで、事業の効率化を図ることができます。また、これを実践するためには、在庫状況や資金残高などを、迅速に把握できる仕組みも整備する必要があります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、資金繰改善のためには、在庫を最小化することが重要だと説明しておられます。「在庫の最大の欠点は、会社の動きを止めてしまうことです。在庫にとても厳しい、ある社長に、『なぜそこまで在庫を目の敵にするのですか?』ときいたあことがあります。その答えはとても明快で、『在庫を抱えてしまうと、商品を置く場所もないし、お金もないので、新しい商品が入らなくなります。
そうすると、店の流れが停まってしまいますので、それを断ち切るために、在庫はできるだけ早く処分するようにしています。店の棚があけば、新しい商品を仕入れられるので、商品が動き出します』(中略)在庫がなくなると、商品も、社員も、お客も、お金も動き出し、会社全体がよい方向に流れ出すというわけです。(中略)在庫管理を徹底している小売店では、“在庫30日ルール”というのを決めて運用しています。原則として、仕入れてから30日を経過して売れ残っているものは、セール品として処分するのです。
自分が仕入れた商品がワゴンセールで売られるのは悔しいので、社員も、いろいろなアイディアを出して、何とか30日以内に売ろうと努力します。期限が決まっているので、売れる分しか仕入れなくなり、在庫はかなり絞られています。商品の種類や業種によって在庫期間は異なりますが、食べ物でなくても、販売期限を決めると、社員の商品を見る目が変わり、顧客対応が変わります。顧客の好みの変化を素早くキャッチして仕入れたものが売れるようになると、商品の回転がよくなり、会社のお金がスムーズに流れ出すのです」(113ページ)
在庫はどれくらい持つべきかと言うことは、事業活動において、永遠のテーマであると、私は考えています。資金効率の観点からは、在庫は最小限にすべきなのですが、一方で、最小限の在庫はどれだけなのかという正解は、事後的にしかわかりません。したがって、正解を求めるために、事前にたくさんの労力をかけすぎることも、これもまた、無駄と言えます。また、在庫を少なめに持つことは、在庫切れになる確率も高くなり、ビジネスチャンスを失うことになります。
では、どうすればよいのかというと、私は、まず、経営者の方が在庫方針を明確にすることだと思います。その例のひとつが、児玉さんが指摘している、“在庫30日ルール”だと思います。この“30日”も、あくまでも目安ですので、本当は、20日が正解かもしれませんし、60日が正解かもしれません。したがって、“在庫30日ルール”を実践して、在庫を減らす効果があったかどうかを検証し、より、正確なルールを目指していくことで、最終的に正解を求めることができるようになります。
そして、これを実践するためには、在庫量や資金量を迅速に把握する仕組みをつくることも必要になります。さらに、これも、前回、言及しましたが、事業活動のデータを迅速に把握する仕組みがなければ、競争力を高めることはできません。これを言い換えれば、データの収集を行っていない会社は、活動が成行に行なわれ、非効率な状態が続き、業績が悪化すると言えます。
2022/12/20 No.2197
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?