売掛金回収不能にともなう資金繰対策
[要旨]
売掛金が回収不能になったときは、そのことをなるべく早く銀行に報告することが得策です。さらに、銀行から融資などの支援が必要なときは、取引先が倒産した会社向けの自治体の制度融資などを申請し、早期に、事業改善のための体制を整えるようにすることが大切です。
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前回は、売掛金の回収が遅延している相手が倒産したり、夜逃げしたりしたときは、弁護士などの専門家に煩雑な手続きを委ね、自社の役員、従業員は、売上増加のための前向きな活動に労力をあてることが得策ということを述べました。今回は、売掛金が回収不能になったときはどうするかということについて述べたいと思います。
未回収の売掛金が、売上高や利益額と比較して、軽微な額であれば、特段の対策は必要ないと思いますが、資金繰悪化が見込まれたり、利益額が大幅に減少するときは、何らかの対策をしなければなりません。まず、軽微なものであれば急ぐ必要はありませんが、未回収額が金額的に大きい場合や、売上高に比較して5%程度以上の場合など、自社の信用に影響すると考えられる場合は、早い段階で取引銀行に報告することが大切です。
もちろん、単に報告するだけでは、銀行から、取引方針を消極方針に変更されてしまいかねないので、今後の自社の資金繰の見込みと、影響が大きい場合は、それをどう打開して行くかという方針について、自社の考えを伝えることが欠かせません。また、多くの自治体は、売掛金が回収不能になった会社むけの制度融資を用意しています。資金繰の改善のためにも、このような制度融資を早めに申し込み、収支状況の改善のための取組を迅速に行えるようにしましょう。
繰り返しになりますが、資金繰に関する支援は、銀行などの金融機関からしか受けることができません。ネガティブな情報であるために、売掛金が回収不能になったことを、銀行に隠したままにしておきたいと考える経営者の方もいると思います。そのような気持ちになることは理解できますが、少しでも早く支援を求めることの方が、受けることのできる支援策の数も多くなりますので、銀行への報告は、躊躇せずに行うようにしましょう。
また、当面、資金繰が維持できるからということで、銀行になにも報告せずにいることもあると思いますが、それも、避ける方がよいでしょう。できれば、「今般、取引先の●●社が倒産し、売掛金が回収不能になりましたが、当社は、今期、その金額を上回る利益を得る見込みなので、資金繰への影響はほとんどないため、引き続き支援をお願いします」などと伝えておけば、従来通りの支援を受けられるでしょう。逆に、何の報告もせず、後日、提出された決算書から、回収不能の売掛金があったことを銀行が把握することになった場合、銀行に対して悪い印象を与えてしまいますので、注意しましょう。
2022/1/26 No.1869