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営業活動以外のCFには限界がある

[要旨]

キャッシュフロー(CF)は、営業活動、投資活動、財務活動のいずれによって増加させても同じものですが、投資活動、財務活動から得られるCFの額には限界があります。そこで、投資活動、財務活動によって得られるCFに頼りすぎることなく、恒常的に営業活動でCFが増加するよう、経営者の方は、CFを管理することが大切です。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、キャッシュフロー(CF)は、基本的には営業活動によって得られた利益によって増やしていくものであるということを説明しました。今回は、その続きについて述べます。

これも当たり前のことなのですが、増加したCFそのものは、どのようにして増加したのかによって区分されることはありません。すべて同じCFです。そこで、「来週、買掛金を支払わなければならないけれど、預金残高が足りない」というときは、銀行から融資を受ければ、買掛金を支払うことができます。

ところが、問題なのは、融資を受けたり、資産を売却したりするなどの方法でCFを増やすことには、限界があるということです。もちろん、一時的な不足を補うために融資を受けることに問題はありませんが、そもそも、営業活動からCFが獲得できていなければ、早晩、CFは枯渇し、事業は行き詰ります。このことも当たり前のことなのですが、一方で、営業活動でCFが獲得できているかどうかを、適宜、確認している会社は、中小企業ではあまり多くないようです。

この、営業活動でCFが獲得できないという状況は、売上が減少していたり、売上が減少していなくても採算がとれていなかったりするときです。売上が減少しているときは、経営者の方も業況がよくないということは、当然、気づいているのですが、融資を受けることで、事業を継続できるので、改善活動が先延ばしにされることが少なくありません。また、採算がとれていない場合、月次で収支状況を確認していなければ、経営者の方が、「売上があるから大丈夫」と考え、やはり、改善活動が先延ばしにされてしまいがちです。

このように、CFは、本当は営業活動で維持されなければならないものの、融資などでも一時的に維持もできるので、営業活動の見直しが行われなくなってしまいがちになることが少なくありません。したがって、キャッシュフロー計算書では、営業活動でCFが増加しているかどうかを確認し、もし、営業活動でCFが増加していない場合、直ちに、営業活動の改善を行わなければなりません。

繰り返しになりますが、売上減少や不採算な取引が行われたからといって、直ちに、事業は停止になりませんが、それは、営業活動を改善するための猶予であり、改善をしなくても済むということではないということに、注意が必要です。CFは、どのように獲得しても同じですが、営業活動以外の方法で獲得できるCFには限界があるということを、強く、意識しなければなりません。

2022/4/28 No.1961

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