見出し画像

[要旨]

財務家計に基づく原価計算は、適切な経営上の判断を行うにはものたりない部分があります。それを補うために、例えば、製品を完成させるまでの活動に基づいて原価を計算する活動基準原価計算など、管理会計に基づく原価の管理方法があります。


[本文]

前回まで、財務会計の考え方による原価計算を説明してきました。あえて、この原価計算を説明してきた理由なのですが、そのひとつは、経営者の方から見て、財務会計の原価計算はものたりなさを感じるものであるということを理解してもらえると考えたからです。財務会計の原価計算は、なるべく実態を反映させようと工夫がされていますが、やはり、経営上の判断には適さない面もあるということは否めません。

そこで、経営上の判断に適した考え方である管理会計の観点からの原価計算をご紹介したいと思います。そのひとつが、活動基準原価計算(Activity-Based Costing、ABC)です。ABCは、製造間接費の配賦に特徴があります。配賦とは、間接的な経費(間接的な作業を行う作業員の賃金、複数の製品の製造ために共通に使われる材料費、複数の製品が製造されている作業場の光熱費など)を、個別の製品の原価に振り分けることです。

そして、その配賦の根拠とする基準を配賦基準といいます。財務会計の配賦基準は、直接材料費の割合、作業時間の割合、作業場の面積の割合などから適切な基準を選び、間接費を配賦します。一方、ABCではもっと実態に沿った配賦が行われます。例えば、製品の検査に関する費用は、検査に要する時間、検査を行う回数など、別の基準で配賦する方が、適切な判断を行うためには望ましいと言えます。

このように、ABCでは、製品を完成させるまでの活動に基づいて原価を計算し、より経営者の感覚に近い原価管理を行うことができるようになります。ちなみに、ABC以外にも、管理会計に基づく原価を管理する手法に、スループット会計がありますので、もし、ご関心のある方は、こちらの記事をご参照ください。ただ、これらの管理会計に基づく原価の管理は、財務会計の原価計算の知識が前提になりますので、原価計算を学んだことがない方は、併せて習得されることをお薦めします。

2022/3/31 No.1933

いいなと思ったら応援しよう!