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有形固定資産の価額と減価償却

[要旨]

貸借対照表上の有形固定資産の価額は、会計的な手続きである減価償却によって計算されています。これは、保守的に資産額を見積もったり、機械的にに算出したりするためのもので、必ずしも、資産の時価などを反映しているものではないということに注意が必要です。

[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、貸借対照表上の固定資産の時価が下がったときは、減損会計基準に基づき、時価が帳簿価額の50%程度以上下落し、かつ、一定の要件を満たした場合に、時価を帳簿価格とするということについて説明しました。今回は、西山教授は、直接は言及していませんが、資産に関することがらとして、減価償却について説明します。減価償却は、有形固定資産などを、それが利用できる期間にわたって費用化することということは、多くの方がご存知の通りです。

しかし、それは、手続き的な側面が大きいものです。まず、耐用年数が、必ずしも実態とは一致していません。例えば、乗り合いバスの法定耐用年数は5年ですが、一般的に、乗り合いバスは10年~15年、中には20年も使われることがあるそうです。したがって、6年目以降は、貸借対照表に計上されているバスの価額は、備忘価額の1円ということも考えられます。すなわち、耐用年数を過ぎたバスは、貸借対照表上では1円であるにもかかわらず、6年目以降は、1円の資産で収益を得るという、実態と乖離した状態となります。

しかし、減価償却の手続きに妥当性がないかというと、やはり、保守的に資産価値を見積もるという点からは妥当と考えられます。また、減価償却の方法も、手続き的な側面が大きいと言えます。減価償却の方法は、定額法、定率法、級数法、生産高比例法などがありますが、いずれも、資産の実際の時価を反映させるものではなく、会計的な手続きによって計算するものです。したがって、貸借対照表上の有形固定資産は、あくまで手続き的な金額で計上されているということに、注意が必要です。

2022/4/21 No.1954

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