特殊な会社は改善手法も汎用性が低い
[要旨]
個々の会社には、個々の事情があることから、自ずと事業の改善策も自社に合わせて策定することになりますが、そのことが時間のかかることであっても、改善プロセスとして省くことはできません。
[本文]
「実は、うちの会社には特殊な事情があって、そのような改善手法を実践することはなかなか難しいんですよ」このような説明は、私が銀行職員時代や、経営コンサルタントとして活動している現在も、ご相談を受けた会社経営者に対し、改善方法を提案したときに、その相談者の方からしばしば返答される説明です。もちろん、経営者の方が、そのような説明をする事情はよく理解できます。
例えば、これは、ある本に書いてあったのですが、かつて、新潟県のある旅館が、業況を改善するにあたって、仕入先を見直して、原価率に引き下げに注力したものの、どうしても替えることができない仕入先があったそうです。それは、社長の夫人の実家の米問屋だったそうですが、メインバンクから、改善が進まなければ、支援はしないと伝えられ、やむなく、最後の最後の段階になって、その米問屋からの仕入を止め、別の問屋から、もっと安く米を仕入れることにしたそうです。
ここまで書いてきたことは、個々の会社には、個々の事情があるので、改善方法も、他社にもあてはまるような汎用性の高いものは、個々の会社にはあてはまらないことも多いということです。このことは理解していただくことは容易とは思うのですが、逆に、コンサルタントには、「うちの会社にも、すぐに実践でき、かつ、効果のある改善策を教えて欲しい」という要望を伝えてくる会社経営者の方も少なくありません。
会社の改善策には、汎用性のあるものもありますが、前述のような質問をしてくる経営者の方は、そのような改善策をお教えしても、期待したほどの効果が見込めないので、落胆されることがほとんどです。要は、自らは、自分の会社は特殊、すなわち、個性があるということを分かっているわけですから、効果のある改善策も、自社の個性に合わせた改善策になるということも理解できるはずです。私は、むしろ、会社の改善策は、会社ごとに違うことが当然だと思います。
すなわち、日本には約400万の会社がありますが、改善策も会社の数の400万通りあるということです。その理由は、繰り返しになりますが、それぞれの会社にはそれぞれの「特殊な事情」があるからです。そこで、私が顧問先から改善策の策定のご相談を受けたときは、ある程度の時間はかかるものの、PDCAを実践して、その顧問先により合致した改善策を策定するようお薦めしています。このようなことはまどろっこしいと感じる経営者の方もいると思いますが、「経営に王道なし」というのが私の考えです。
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