アクティビティとコストドライバー
[要旨]
活動基準原価計算(ABC)の考える原価は、単に、費用が集計されたものととらえるのではなく、活動の積み重ねによって製品が製造されるのであり、その活動に要した費用を集計するという考え方です。その活動をアクティビティといい、製品ごとに要するアクティビティの量を示すものをコストドライバーといいます。
[本文]
今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、財務会計では、製造間接費の製品への賦課が、必ずしも適切でないことから、より、実態に近い配賦を行い、適切な経営判断ができるようにする手法が、活動基準原価計算(ABC)であるということを説明しました。
今回は、ABCでは、間接費の適切な配賦を行うために、どのようなことを行うのかを説明します。「ABCでは、間接費を製品なそのアプトプットを生み出すための、ひとかたまりの活動を意味する、アクティビティというグループごとに区分し、それぞれのアクティビティのコストの発生と関係の深い数値データであるコストドライバーを探索し、それによって、各製品に間接費の割り振り計算をする。
アクティビティとは、例えば、メーカーでは製造ラインに関係する、原材料の保管、移動、切断、加工といったものから、製造を支援する生産管理、人事といったものまで幅広く、数十、あるいは、数百にも及ぶことがある。また、コストドライバーについても、いくつかの候補をあげながら、過去の各アクティビティのコストの発生とコストドライバーの数値殿関係の深さをもとに、割り振り基準(配賦基準)として、最も適切なものを選択していく」(315ページ)
ABCの特徴は、「活動基準原価計算」という名前からも分かる通り、活動を基準としている原価計算です。これは、製品の原価は、財務会計のように、単に、費用が集計されたものととらえるのではなく、活動の積み重ねによって製品が製造されるのであり、その活動に要した費用を集計するという考え方です。その活動が、ABCでいうアクティビティであり、前述の通り、数十から数百に細かく分類されるので、正確な原価計算ができるわけです。
そして、コストドライバーとは、各製品の製造に要する活動の量を示す数値で、例えば、製品Aを製造するには、3回の段取りが必要というときは、「製品Aは、『段取り』というコストドライバーが3なので、段取りに必要なコストを3つ集計する」ということになります。今回は、ABCのアクティビティとコストドライバーの概要を示しましたが、ABCの集計は、複雑で労力もかかるということがご理解いただけると思います。しかし、複雑で労力がかかることから、より実態に沿う原価計算ができるということになるのです。
2022/5/12 No.1975