5月3日@高円寺
高校時代の同級生に会った。(以降、Sと呼称)
最初は上野の展示を観に行く予定だったのだけれど、近頃私は不眠気味で午前中からの活動が難しかったことと、GW真っ只中の上野に行きたくないな、という気持ちが勝って私と彼女にとって近場の高円寺で会おうと当日に提案をした。
快諾してくれたSと午後一番で電車の中で合流をした。
適当にお互いの近況について話し合った後、私は10年くらい片想いしている同性の相手についての相談をした。彼女はSにとっても同級生であるから、私が彼女に好意を持ち始めた当初から今の今まで、私の片想いを側で見ていたことになる。
Sと今年の1月の終わりの夜に会った際に、「好きな人にはもう会わないし、連絡もしない」と宣言したのに、そこから私が勝手に理由をつけて2度ほど会ったのだ。まず、そのことについて軽く非難を受けた。「お前は一生そいつを引きずるんだろうね」とのお言葉を頂いた。返す言葉もなかった。
去年の11月の終わり頃、私は好きな人に告白をした。
勇気がないから、メッセージアプリ上で伝えた。
「私はずっとあなたのことが好きだった。付き合いたいとかそんなんでは無いんだけど」
その時、私にできる精一杯の言葉だった。
対してその人は、「ありがとう。受け取っておくね」と返した。
続いて、「25歳ってなんか色々あるよね。なんかね。なんだろ」と言った。
「急なのに読んでくれてありがとう。もう25だし、いい加減色んなことにケジメをつけて前に進みたいって思ったんだ」
その人から返事はなかった。その時点でこの恋の行く末をなんとなく理解していたはずなのに、そこから理由をつけて2度も会った。私は結局自分の言葉に嘘をついて、その場にとどまり続けた。
告白をしてから、私と好きな人が2人で会うことは無くなった。その時好きな人の家には、私の共通の友人が金銭的事情で居候をしていた。会う時は必ず3人で会った。2度目に会った際に、好きな人が私をなんとなく避けるような行動をした。私はそこで初めて彼女に受け入れられていないのだという実感をした。そして同時に、私が彼女に受け入れられることを切望していたのだという気づきがあった。家に帰った後、私は声を上げて泣いた。その夜まで長く長く、彼女に恋をしていた。私の知らない世界を教え、楽しさや喜びを伝えてくれた彼女に。彼女を想っていた。本当にそれが打ち砕かれて、私の手から砂粒みたいに流れ落ちてしまった。私の人生で一番に大切な人だと断言できたから、喪失感に耐えられなかった。次の日の朝まで泣いて、仕事をしなければならないからと外出した先でも泣いて、仕事にならずに家に戻ってまた泣いた。
高円寺の喫茶店で、Sは上記の私の経緯を聞いた。
「その時のあいつとの最も綺麗な記憶を忘れられなくて引きずっているんだよね。でも、その時のあいつはもう居ないことを認めた方がいい。時間がかかっても良いから、あいつのことはもう忘れたほうがいい。忘れた頃に、マルタにとって大事な人がまた出来るから」
私は10秒くらい間を空けた後に、「うん。そうだね」と言った。
「これでも私は貴女を心配しているよ。昔の私を見ているみたいだから」
「そうだね。Sは私にとって鏡みたいな存在かもしれない。私のことを見抜いてるから、嘘が何もつけない」
「前を向いて、マルタにとってのいい女を探そう」
「ふふ。ね」
喫茶店を出た後、私とSはぷらぷらと商店街を歩き始めた。
Sは花屋に寄って、私は古本屋に寄った。Sはガーベラが好きで、店先に並んだその花を眺めては愛でていた。私は古本屋で「読書の日記」を購入した。
その後、特にお互いやりたいことがこれ以上なかったので、早めに解散することになった。電車が最寄りに着いて私が降りる前、Sは「応援しているからね」と声を掛けてくれた。