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思っていたより、世界は優しい。

カミングアウトについて。わたしの場合、今まさに徐々に行なっているという感じ。正確に言えば「意識的に行うようになった」のが最近。実は昔から秘密にしていたわけではない。

もちろん昔のわたしは、自分のセクシャリティについて詳しく理解していなかったし、説明もできはしなかったのやけど、「同性に惹かれることはあるな」とは思っていた。恋愛に性別は関係なく、人間として惹かれてたまたまその人が男の人だったり女の人だったり、性別はあとで付いてくるもの、おまけのようなものだと感じていた。(のちにそれがパンロマンティックだと知る。)
自覚しつつもそんな考えを話してこなかったのは、先にも述べたように秘密にしていたわけではない。単純に話す機会がなかった。

わたしの周りには「平均」チームの人しかいなかったので会話の大前提が異性愛。わたしも異性にいいなと惹かれることはあるので、その話をすることになる。例えばゲイやレズビアンの場合、その時点でカミングアウトしやすいタイミングがくる。言いたいと思えばそこで話せばいいので、会話の流れとしてもスムーズだ。

「彼氏はいるの?」と聞かれたとき、彼氏はいませんと答えながら、彼女かもしれないけど彼女もいません、と心の中で答えている。これを声に出してもいいかもしれない。でも会話の流れとしては急すぎるというか、相手のことを考えていない会話の運びになりそうでわたしはいつも切り出せない。あえて今言わなくてもいいか、となる。

近頃は例えば呑みの席で恋愛の話題になったとき、まず初めに「前提としてわたしのセクシャリティはこういう感じです」と話すようにしている。

初めて人に打ち明けるときは、それなりに勇気が要った。わりと他人の物差しに左右されない生き方をしているわたしだけど、否定的な言葉や意見に心が強いわけではない。知識としては理解できても感覚としては「気持ち悪い」と感じる人も少なからずいるだろうと思っていた。
それでも話してみたいと思った。オープンにしたら何処となく感じ続けている生きにくさが、なくなるような気がした。

次、何かの折に誰かに話してみよう。そんな心持ちだったある日、信頼している先輩と二人で話す機会があった。よし話そう、と思った気はするが、何をどう話したのかはあんまり覚えていない。実はややこしいことに、この時まだ”デミロマンティック”や”パンロマンティック”という言葉をわたしがちゃんと理解出来ておらず、自らの感じている「平均とは違う部分」だけをぽつりぽつりと話していたのだ。
ただ初めてハッキリと「同性を好きになることがある」と語ったのが、この時だということは強く覚えている。それ以前にも口にしたことはあったが、相槌のように軽くふわっと消えていく程度で、わたし自身も曖昧なまま発言していたので、聞いた人はほとんど記憶にないらしい。あとで追求されることもなかった。

その時先輩に話したことをキッカケに、もっと周りに話してみようと思った。そしてもっとちゃんと自分のことが知りたいと思ってセクシャリティの世界について勉強し始めた。
anone,のサイトを通じて、自らを知り納得できた時、自分で自身をちゃんと受け入れられた瞬間でもあった。拒否していたわけではない。ただ何者か分からずにいて、結果それがわたしの生きにくさや孤独に繋がっていたようだ。

自分のこの状態や状況には名前がついていて、そういう同じ立場の人が世界にはたくさんいて「大丈夫、あなたは異常ではない」と言ってもらえた気がした。それだけで肩の荷が降りたような、すーっと空気が喉の奥まで、肺まで、カラダに入っていく感じ。
わたしがわたしを知り受け入れた時、世界もわたしを受け入れてくれた。

そしたら今度は、わたしの愛すべき人達にも分かってほしいな、受け入れてほしいなと思うようになった。だから、今は意識して自分のことを話していくようにしている。今のところ怖い辛い思いはしていない。意外とみんなの反応は「納得」といった感じ。わたしはどこか影があったらしく、それはあえて話さない部分を持ち続けていたからのようだ。思いきって手放してみたら、とても生きやすくなった。
思っていたより、世界は優しい。

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