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「赤ちゃんが欲しい」その瞬間から、人生設計の選択肢を。30年寄り添い、いま伝えたい『ふたり妊活』とは
『妊活』とは、カップルふたりの、そして家族の人生設計そのもの。2022年4月から、不妊治療の保険適用が開始となり、妊活を取り巻く環境は変化してきています。
そもそも、子供を授かりたいと考えた時、まずはどのようなことを知っておくべきなのでしょうか。
皆さん、こんにちは。ロート製薬公式note編集部の柴田です。ふだんは広報として妊活の支援事業にも携わるなか、私の周りでも妊活に取り組む人が現れ、触れる情報が増えてきました。
今回は、『ふたり妊活』と、それに必要な、自分の体を知ることの大切さを、妊娠検査薬開発の取り組みと、『妊活白書』の事例を通じてお伝えします。
このnoteが、妊活に取り組んでいる方、その周りでサポートされているご家族、ご友人、職場の方々に参考になればうれしいです。
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「赤ちゃんが欲しい」そう願ったときから、妊活が始まる
子供を授かりやすい体の状態を目指すには、適切なタイミングを把握し、仕事や日常生活とのバランスを整えていくことが大切です。
私たちロート製薬は「赤ちゃんが欲しい」そう願ったときから、妊活が始まると考えています。また、『妊活』という言葉を、女性だけではなく男性にも関わってほしいとの想いを込め、ロートでは『ふたり妊活』というキーワードを考案し、2018年から『妊活白書』の調査を実施しています。
「何から始めたらよいか分からない」、「周りの夫婦がどうしているのかわからない」ことで不安になったり、「自分だけ他の人と違うんじゃないか」と悩んだりすることも。私たちは、そんな不安な気持ちを抱えるカップルに少しでも寄り添いたいと思い、今の世の中の「妊活」に関する“声”を集め始めました。
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私たちがこうしたことを考える契機は、37年前に遡ります。1985年当時、妊娠検査薬『チェッカー』の輸入販売を開始し、その後、誰でもドラッグストアで買えるようにOTC(市販薬)化に向けて働きかけたこと。以後、妊娠検査薬を起点にしながら、妊娠を望む方々と歩んできました。
妊活を取り巻く社会背景
はじめに俯瞰的な視点で、ロートの独自調査から見えてきた、妊活を取り巻く社会背景について、簡単に見てみたいと思います。
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この図にあるように、日本の出生率は右肩下がりの傾向にあり、合計特殊出生率は1.3(2021年)で6年連続の低下、出生数は約84万人(2020年)まで減少しています。
その背景には、少子高齢化、女性の社会進出、晩婚化、未婚化、カップルにとっての理想的な子供の数の減少、経済的理由など、さまざまな変化が複雑に絡み合っていると思われます。
また、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、健康意識の変化や『ステイホーム』など生活習慣の変化により、妊活への意識にも影響を及ぼしました。2021年の『妊活白書』では、「ふたり妊活ができている人」の割合は増加し、特に男性の意識が2019年に比べ20%もアップしています。
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コロナ禍における健康意識の高まりが落ち着きを見せる一方で、「妊活についてポジティブ・積極的な気持ちになった」「自分の気持ちに余裕が生まれた」といった意識は増加しています。新型コロナウイルス感染症の影響で下がり気味だった妊活マインドが、徐々に回復傾向にあることが伺えます。
そんな中、2022年4月から、不妊治療の保険適用が開始に。これにより検査や一部の療法(タイミング法、排卵誘発法など)や体外受精、人工授精などの治療も適用対象となりました。
これは、子供を授かることを望む方々にとって、経済的負担が軽減するうれしいニュースです。しかしながら、治療開始時点で女性が43歳未満であるという年齢制限があり、保険適用される回数にも上限があるので、計画的に利用する必要があります。詳細は厚生労働省のリーフレットによくまとまっていますので、ご確認ください。
妊活に取り組むタイミングや進め方は人それぞれ
2021年の『妊活白書』では、多様な価値観、周囲との関係性、環境などを背景に、特徴的な6つの妊活タイプに分類し、各タイプを「マイペース」「周囲・社会からの理解」「パートナーからの理解」「ツール・サービス利用」「自治体・職場の支援環境」といった5つの項目で分析しました。
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こうした分析を通じて、妊活の継続期間に比例して、妊活タイプや満足度が変化していることが見えてきました。長期化する妊活を前向きな気持ちで乗り越えるには、パートナーの理解・行動が必要であり、周りに相談できる、情報交換できるといったサポートも大切です。
そして何よりも、妊活に関する正しい情報を知ること、その情報にどうやってスムーズにアクセスできるかが重要なカギになっています。
私は、男性側、女性側それぞれに、選択肢が増えるよう、情報を得ることが大切だと思っています。妊娠というライフイベントは、女性ひとりではできなくて、パートナーの協力がなくてはなりません。
パートナーと互いに、自分たちがどんな人生を送るかを対話できるようになることがスタート。その下地があってこそ、子供が欲しいね、授かれたらいいね、という話をできるようになる。そう思います。
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とはいえ、妊娠については、それぞれの身体のこともあるし、環境によることもあるので、わかりやすい正解を見つけにくいことかもしれません。
情報やモノが巷に溢れていて、どれを信じたらいいかわかりにくいな、と自分自身も感じていたので、妊活をはじめたい、と思った人に、限られた時間の中で、正確な情報を得るきっかけをつくるため『妊活白書』の企画に携わることにしました。
検査薬開発の社会背景「病院での確定診断じゃ遅い」
ここまで、妊活をとりまく社会背景とロートの想い、情報提供の取り組みについてお話させていただきました。
ここからは、妊活において一番軸となる、「自分の体の状態を知ること」について、かつて検査薬の開発担当だった橋本さんにお話を伺いました。
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柴田:まず、橋本さんが関わるきっかけとなったタイミングに、どんな社会背景があったのかを、聞きたいと思っています。妊娠検査薬が一般用に認可されてから、今年でちょうど30年なんですよね。この間の変化をどう捉えていますか?
橋本:まさに30年ほど前は、多くの人が妊娠を知るのは、病院に行ってから初めてわかるという状況だったんじゃないかと思うんです。そもそも妊娠検査薬が医療用だったんです。
今よりハードルが高いし、妊娠を知っていれば生活習慣を変えていたであろう時期を、気づかずに過ごしてしまうリスクもある。
そんな状況を変えるべく、ロートは規制が変わる前から先立って1985年、米国から妊娠検査薬『チェッカー』の輸入販売を開始したり、妊娠検査薬のOTC(市販薬)化に挑戦してきました。私が入社して開発部門に配属された頃は、ちょうど自社開発の準備をしているタイミングでした。
今のように、女性の社会進出を支えるという大義が浸透する前のことです。母体はもちろん、お子様も守るため、女性が妊娠という大きなライフイベントにおいて、自分で出来るだけ早く妊娠を知ることができるような社会にしたい、そうした想いを強く持っていました。
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柴田:妊娠に気づくきっかけのところ。ロートとしては、そこに注目し、課題としてとらえたんですね。
橋本:ええ、そうですね。当時は検査薬を買って、自ら検査するという習慣がありませんでした。
よく誤解されてしまうんですけど・・・妊娠を望んでない方に対して、最近だと、例えば緊急避妊薬の是非が問われたりしているじゃないですか。同じように、妊娠検査薬を一般の人が買えるようにするなんて、社会的に意義があるのか?と言われたこともあって。
要するに、妊娠中絶を促すだけでは?などと、誤った認識を持つ方も少なからずいらっしゃって。最近でも、緊急避妊薬のスイッチOTC(市販薬)化が議論されていたりしますが、同じような論調でスイッチ化に反対する専門家の意見を聞いていると、当時を思い出します。
そういった背景があったので、OTC(市販薬)になるときに非常に苦労しました。本来は、母体や赤ちゃんを守ってあげるためにも、妊娠を早く知らせてあげることが本当に大切なのに。こういった視点が、十分に理解されてないような状況でしたね。
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妊娠検査薬のくわしい仕組み「妊娠特有のホルモンをキャッチする」
柴田:橋本さんは、妊娠検査薬について、どうやって説明をしていらっしゃいます?いま一度、仕組みについて聞いてみたいです。
橋本:まず、今回ご紹介するのは、排卵日検査薬、運動精子濃度検査キット、妊娠検査薬の3つですね。
『妊娠検査薬』・・妊娠している可能性があることをいち早く知るための検査薬
『排卵日検査薬』・・妊娠しやすい排卵日を事前に調べる検査薬
『運動精子濃度検査キット』・・男性の精子の運動機能率や濃度を測るキット
そして、とくに質問してくれた妊娠検査薬について話すと、妊娠をした時の体の変化って、要するに『hCG』というホルモンが出てくるわけです。特有の変化として、妊娠4〜5週でホルモン分泌ということで現れるんだけれども、これをキャッチアップして、目に見える形で検出するのが妊娠検査薬です。
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俗に女性ホルモンと呼ばれているものが、25日~38日周期とかでグルグル変動しているのですが、着床すると、胎盤から先ほどの『hCG』が分泌され、妊娠前のホルモンバランスがガラッと変わるわけです。
ここで、すこし難しいけど大切な話をしておくと、hCG に似たような構造を持つホルモンって、実はいくつかあるわけですが、それを間違ってキャッチしてはいけないんですね。正確な検査結果をお伝えすることに差し障ります。 つまり、検査性能に影響するんです。
ですから、特に、hCG に特異的な反応を確認できる検査キットをロートは開発してきました。発売当初は、病院に行って検査しなくても「尿」によって、ご自宅で簡単に検査ができるようになったんですよ、とよく言ってました。もちろん、最後にはお医者さんの確定診断は必要ですが。
柴田:確かに妊娠初期は胎児の脳や心臓など、体の中枢器官が形成され始める大切な時期とも聞きます。今では当たり前のように、自宅などで簡単に検査できていますが、よく考えてみるとタイムリーに知るのはとても重要なことですよね。
クオリティコントロール「個体差・ユーザビリティを突き詰める」
橋本:今でこそノウハウが溜まってきているので、大きな苦労っていうのはなくなってはきてはいますけれども。検査する対象が尿じゃないですか、そうすると、標準的な尿って何ぞや?ということを考えないといけないんですよね。
今でも100%解決しているわけではないですけど、要するに、一人ひとりの個体差や、食生活の違いによって変わるものです。この、クオリティコントロールの仕方自体が、その各社のノウハウだったりします。積み上げてきた知見がものを言っているところだと思います。
新型コロナウイルスのワクチン接種でもよく聞く「抗体」という言葉がありますね。妊娠検査薬でもこの抗体が、カギとなるhCGホルモンをキャッチします。つまり、抗体の良し悪しによって、キットのクオリティが決まるんです。
そこに技術競争があった。その抗体をロートは何とか捕まえてこれたんですが、一番苦労したところでもありました。
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それでも、開発当初は、次から次に色々な壁が出てきます。例えば、尿を検体として測るわけですけど、多量の水分を取れば薄まりますし、摂取する塩分が多くなったり汗をかいたりして塩分濃度が上がれば、反応にも影響が出てきます。その影響ができるだけ小さくなるよう改良を進めるのが、当初の大きな課題のひとつでした。
検査薬の容器を開発するにしても、正直、男性には分からないんですよ。改良したい想いはあるけど、とくに使用感の面においては、男性がいくら試してもダメなんですよね。なので、実際のユーザーの声をしっかり聞き届けるために、研究担当者をはじめとした女性社員の皆さんに、ヒアリングや、テスト使用に協力を募って感想をもらったりしていました。
商品発売後においても、お問い合わせに寄せられるお客様の声にもひとつひとつ向き合っています。
柴田:そんなふうに、社内のみんなでものづくりをする意識って、今でも、ロートの人たちには自然に備わっている気がしますね。
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橋本:ああ、おそらくですけど、自分の体験がものづくりに反映されていく、特に、ユーザビリティを上げていくことにコミットできることの嬉しさみたいなものを持ってらっしゃる方が、うちの会社の人って結構多いんじゃないかなと思いますね。
リスクにさらすことなく、自分の体をちゃんと知ることの大切さ
柴田:私は、不調を治す薬を研究開発している製薬会社だからこそ、自分を知るという検査薬に取り組む意義があると思っています。そのあたり橋本さんいかがですか?
橋本:そうですね、内服したり、点眼したりするようなお薬と違って、尿で分かる体外診断薬はそれ自体が健康被害を与える可能性はないですよね。リスクにさらされることなく、自分の体をちゃんと知るっていうことの大切さがあって。これは、検査薬だからこそできることだと思っています。
でも別に尿でなくても、例えばCOVID-19の検査薬で、鼻の奥の粘膜を綿棒で突っつくのもあります。つまり、体に少しだけ負荷をかければ、自分の体がわかるわけですよね。
そういうのって検査薬ならではだと思うし、これからセルフケアが注目されていく中で、すごく大切なプロセスなんじゃないかなと。自分の健康状態を知ることに対する意識や価値観も、これから、さらに変わっていくんじゃないかなと思います。
結果として、何かネガティブなことが分かったとしたら、病院に行くっていうことも含めて、いち早く対応ができますし。
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柴田:今後、検査薬の使いやすさはどう変わっていくとお考えですか?
橋本:かんたんに検査ができて、明確に結果がわかるってすごく大切ですから、これからも、お客さんの声をふまえた開発を突き詰めていきたいと思いますね。
もちろん、できるだけ検査は簡単に終われば終わるほどいいと思います。簡便になればいいし、時間は短くなればいい。デジタル機器との組み合わせや、新たな形に置き換わったりする可能性も十分にこの先、あると思います。
そんなふうに、大きな変化が起きるのだとしても、生活者の健康を守っていくために必要なものであれば、ロートとしては、果敢にチャレンジしていけるといいなと思いますね。
『Reproductive Health and Rights』ふたり妊活として向き合うサポート
橋本:30年ほど前、妊娠検査薬がOTC(市販薬)になった時かな。婦人科の先生方とディスカッションするなかで、不妊の原因というのは「女性だけでなく、女性と男性と半々ずつです」と、ずっと言われてました。
当時から、開発している者として、なんとかしたいと思っていたんですが、男性の側には踏み込めませんでしたね。男性には、当時は少なくとも対処する方法がほとんどなかったんです。
男性の方に原因がある場合今でこそ、体外授精とかね、色々ありますけど。当時ってまだ今ほど、選択肢なんてほぼなかったので。
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でも、世の中がこうやっていろいろ変わってきて。今や、『Reproductive Health and Rights(生殖に関する健康と権利)』なんて言われてます。女性側はもちろん、男性側も一緒になってやっていかないといけないっていう社会に、今はずいぶん変わってきたと思います。
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柴田:橋本さんは、検査薬の存在意義を、どんなふうに考えていますか?
橋本:前提として、みんなができるだけハッピーに暮らして生活できる方がいいわけです。で、妊娠をすると、とくに女性は、生活を変えていかないといけないですよね。
これは妊娠検査薬だけじゃなくて排卵日検査薬も同じかもしれませんけども、まず、妊娠したいと思ったときに、タイミングを測ることができるというのが、女性側も、男性側にとっても大切なことだと考えています。人生設計に関わることとして。
柴田:そうですよね。自分の人生を豊かに送るために、さまざまな情報を正しく捉え、検査薬を上手に使っていきたいと改めて感じました。本日はありがとうございました。