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「生産性が低い」として中小企業をつぶすのではなく、 人びとの所得を増やすコロナ不況対策を 2020年9月26日 薔薇マークキャンペーン事務局

私も賛同している「薔薇マークキャンペーン」の「菅政権批判」。文中でてくる「生産性」なるインチキ概念批判は、その通り、日本のほとんどすべての商人の思想は、「生産性」なるインチキ概念とは、別のベクトルで日本文化の伝統を形成してきた。私も、今後、竹中インカムを執拗に批判するとともに、この「生産性」なるインチキ概念も徹底的に批判していこうと思う。
いま、ひとつだけ、ヒントを。生産性というインチキ概念に実体をあたえたのは、石油文明をその根底において発達した20世紀のアメリカン・ウェイ・オブ・ライフなる「ライフスタイル」にその一因がある。もう、そんな時代は、古臭い遺物である。今風にあえていうなら、「生産性」とは量的概念ではなく、「質的」概念としてとらえるべき。だが、このことですら、アメリカン・ウェイ・オブ・ライフにすりよった甘い批判ではあるが、まあ、最初だからお許しあれ。

~~~~~~~~ 以下・はりつけ ~~~~~~~~~
【コメント】菅政権発足にあたって
「生産性が低い」として中小企業をつぶすのではなく、
人びとの所得を増やすコロナ不況対策を
2020年9月26日
薔薇マークキャンペーン事務局


安倍政権は明文改憲を果たせぬまま退陣
 9月16日、歴代最長の7年8ヶ月続いた安倍政権が終わり、菅政権が発足しました。コロナ禍という出来事によって、東京五輪の延期に象徴されるように、安倍さんの思い描いていたことが実行できなくなり、またコロナ対策が何をやってもうまくいかない中で、政権運営が行き詰まっていたのは事実でしょう。しかし、そもそも安倍さんは、自らの手による明文改憲の実現に執念を燃やしていたのでした。それが、昨年の参議院選挙で改憲勢力に三分の二を許さなかったことで、結果的には実現できないまま終わったのです。
 薔薇マークキャンペーンは、もともと安倍政権に対抗することを目的として発足しました。昨年の参議院選挙において消費税の引き上げの是非が争点となり、消費税の引き下げや廃止を唱える候補者も現れ、複数の政党が経済問題を表に出して選挙戦に臨むというような情勢をつくるにあたっては、私たちの運動も一助になったものと考えます。私たちの運動に協力してくださった皆さんの声が、歴史の分岐を決めるのに貢献したといえるのではないでしょうか。


菅新政権の経済政策は安倍政権よりも危険
 安倍政権があまりにひどかっただけに、首相が交代して少しはマシになるのではないか、という期待を抱いている方も少なくないかもしれません。しかし、少なくとも経済政策についていえば、菅新政権は安倍政権よりも危険である可能性を指摘しておく必要があります。 安倍さんは、何としても自分の手で明文改憲を実現しようと狙っていたため、景気を悪くして人気の落ちるようなことは可能な限り避けようとする傾向がありました。これに対して菅さんの場合は、個人的なブレーン人脈の影響もあって、これまで以上にあからさまに、新自由主義的な政策がすすめられていく危険が強いのです。
 菅さんは、就任して間もない9月18日の午前、竹中平蔵さんと朝食を取りながら1時間以上にわたって懇談したと報じられています。菅さんは、小泉内閣の総務相であった竹中さんを副大臣として支えたこともあり、菅政権で竹中さんの影響力が強まる可能性があります。
 今年に入ってコロナ禍に見舞われる中で、かつて竹中平蔵さんも理事長を務めた「東京財団政策研究所」が、コロナ禍を中小企業淘汰のチャンスにしよう、という路線を打ち出してきました。7月には、政府の成長戦略から、中小企業の企業数維持の目標が外されてしまうということもありました。こうした動きに、官房長官であった菅さんが関わっていたことは十分に考えられることです。菅さんが提唱している「デジタル庁」の設置も、東京財団提言が、政府支出は需要拡大のために闇雲にするべきではなく、生産性を上げるためにデジタル化に集中すべしとした精神に沿ったものです。
 菅さんのブレーンとしては、竹中平蔵さんに加えて、デービッド・アトキンソンさんの名前も挙げておかなければなりません。アトキンソンさんは、生産性向上のための中小企業の淘汰再編が持論で、中小企業を保護する「中小企業基本法が諸悪の根源」と主張しています。「新型コロナウイルスの補助金も小規模事業者にはいらない」「コロナ危機が日本最後のチャンスだ」とも言っています(「慢性的な赤字企業は、ただの寄生虫」プレジデントオンライン2020年7月12日)。菅さんもこうしたアトキンソンさんの主張に合わせるように、中小企業基本法「改正」を公言しています。
 菅さんは最低賃金の引き上げも唱えています。いいことのように聞こえますが、これもアトキンソンさんの持論です。アトキンソンさんは、最低賃金の引き上げを、「生産性の低い」中小企業を淘汰する手段として位置づけています。ですから、通常このような主張をする人が合わせて提唱する中小企業支援策は唱えていません。
 また、菅さんが官房長官のときに、海外の富裕層が宿泊するような高級ホテルを国の支援で50カ所開発していくと表明したのも、アトキンソンさんと同じ考えです。地方に高所得の雇用を作るとのことですが、少子高齢化で地方の介護人材が不足する中、貴重な労働資源を海外の富裕層のサービスのために割くことになります。
 アトキンソンさんは、国の借金が多いのでコロナ対策の「真水」が少ないのは仕方がないと言い、給付は将来世代が返済する必要があるとも言って、「国の借金」論による緊縮を唱えています。菅さんも「行政改革」(つまり緊縮)の徹底と消費税の引き上げが必要だとし、反発の声が強まると、10年以上将来の話と言って火消しに追われましたが、本心は明らかでしょう。 消費税・コロナ不況の未曾有の顧客蒸発と雇用蒸発状況の中で、このような路線が推進されたならば、おびただしい倒産・廃業で、再就職の目処のない失職者があふれるに違いありません。


「生産性が低い」は偽りの問題設定
 アトキンソンさんたちは、「生産性」の低い中小企業はつぶさなければ日本は良くならないと主張するわけですが、「生産性」なるものが、非常にいい加減な概念であることを指摘しておかなければなりません。「生産性」は一応、労働者1人当たりの付加価値額のことだとされています。モノやサービスを販売した結果、どれくらいの利益が得られ、どれくらいの所得が得られたか、労働者1人当たりいくらかで測ったものが「生産性」だというわけです。少し考えればわかりますが、お客さんが来なくなって商品があまり売れなくなったら、労働者1人当たりの付加価値は低くなってしまいます。「生産性が低い」というと、商品を供給する側の効率が悪いとか技術が低いというような問題だと思われてしまいがちですが、もっと単純に、みんながお金を持っていなくて色々なものを買い控えているという需要側の問題なのではないでしょうか。
 「生産性」ということでいえば、富裕層を相手に付加価値の高い商売をすれば「生産性」なるものは上がります。「生産性」が低いからつぶしてしまえというのは、利益は薄いかもしれないけど庶民の生活にとってなくてはならない商売をしている事業者を切り捨てていくことにほかなりません。
 「生産性が低い」というのは、真面目に働く庶民を切り捨て、残った人たちを過重な労働に駆り立てていくための偽りの問題設定です。日本経済の「生産性が低い」などという見立ては、格差社会を前提にして、富裕層向けの付加価値の高い商売ばかりを増やし、庶民相手の利益の薄い商売をつぶすことを正当化するものでしかないのです。私たちは、こういう問題意識の押し付けを断固拒否し、新政権の露骨な新自由主義的な路線に対抗していかなければなりません。
 いま必要なのは、コロナ不況に対して、人びとの所得を増やす経済政策です。すべての人への現金給付の拡充と、消費税の停止(ゼロパーセント)、中小事業者への支援策、学費免除など、私たちが5月21日に訴えた真の「コロナ」経済政策(※)を実施させるため、声を上げていきましょう。
 みなさん、一緒にがんばりましょう。


(※)2020年5月21日【薔薇マーク提言】全員に確実に届く、真の「コロナ」経済政策はこれだ

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