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ギャンブラーの朝は早い
『まぁ好きで始めたギャンブルですから。』
最近は高額馬券が当たらないと口をこぼした。
まず、全出走馬の入念なチェックから始まる。
『やっぱり一番嬉しいのは読者からの感謝の言葉ね、この趣味やってて良かったなと。』
『毎回毎回、馬も相手も違う。AIではできない。』
今日は日曜日。
彼は競馬新聞を片手に、競馬場へと向かった。
基本的な買い目は決まっているが、パドックの馬の状態に合わせ、多種多様な考えをしなければならないのが辛いところ、と彼は語る。
『やっぱ夏の競馬場はキツイね、愚痴っても仕方ないんだけどさ(笑)』
『でも自分が選んだ道だからね。後悔はしてないよ。』
『この馬は買えない。ほら、すぐに落ち着きが無くなる。』
彼の目にかかれば、見るだけで馬の可愛さがわかってしまう。
ギャンブル大国日本、ここにあり。
今、一番の問題は資金不足であるという。
オッズに満足できないとその日の馬券購入をやめてしまうという。
数年前は何百ものレースを買い漁っていた彼だが
今では購入は重賞かつ気が向いた時のみになってしまった。
問題は展開をいくつも予想して、着順を当てるのに100年はかかることだと、匠は語る。
『自分が当たるのも勿論だけれど、読んでくれる人はもっと当たらないといけないね。』
『もちろん予想したレースはひとつひとつ丁寧に観戦しています。』
ここ数年は、印だけ打って理由を出さない予想家に呆れていると言う。
『いや、ボクは続けますよ。読んでくれる人がいますから。』
競馬予想の灯は当たらない。
だが、まだ輝いている。
『時々ね、わざわざコメントまでくれる人もいるんですよ。またお願いしますって。ちょっと嬉しいですね。』
『普段やらない人でもわざわざ乗っかってくれる人が何人かいる。資金が続く限り続けようと思っとります。』
『やっぱねぇ、予想したからこその当たった喜びってあるんです。AI予想がいくら進化したって、コレだけは真似できないんですよ。』
2017年、キタサンブラックの引退で競馬へのモチベーションがダダ下がりし、一時は完全に身を引くことも考えたという。
『やっぱりアレですね、大抵のギャンブラーはすぐやめちゃうんですよ。金が無いとか、当たらないとか。でも、それを乗り越える奴もたまにいますよ。ほら、そこにいる大学生集団がそう。そういう奴が、これからの競馬界を引っ張っていくと思うんですね。』
最近では海外のレースにも注目されているという。
額に流れる冷や汗を拭いながら
『本物のギャンブラーに追いつき、追い越せですかね。』
そんな夢をてらいもなく語る彼の横顔はギャンブラーのそれであった。
今週も彼は、日が昇るより早く競馬新聞を買いに行った。
来週も、再来週もその姿は変わらないだろう。
そう、ギャンブラーの朝は早い。