私の住みたい家
私の家は、表面的には、「きちんと」していた。
毎朝用意される、にぼしから出汁をとったお味噌汁、炊き立てのコシヒカリのご飯。
キッチンの出窓でさんさんと日光にあたりながら欠伸をする愛らしい猫の姿。
朝シャンプーが出来る大きなシャワー付きのピンクの洗面台
毎日洗われるバスタオルやタオル類。
布団は、打ち直しのため布団屋に出され、庭の木は庭師さんにより剪定される、
刺身が食べたいとなれば、漁師の家のおばあさんが、朝一でとれたものを売りに来てきてくれる。
浄水器で毎日おいしいお水が飲めるし、グランドピアノだって置いてある。
でも、いくら物質的に充実していても、人権はそこになかった。
だから私は実家を去った。
実家のキッチンの出窓から降り注ぐ朝日はあんなにも明るくてすがすがしいのに、私の薄暗い内的世界にはその光は届くことはなかった。
出窓のレースのカーテンを揺らす風は優しくリビングまで通り抜けるのに、私の内的世界は澱んだままで、一陣のそよ風も通らなかった。
私は、身体だけでなく、心の中まで注ぐ光や吹き込む風のある家に住みたい。
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