見出し画像

東京都現美「デイヴィッド・ホックニー展」でほっこり&白色LEDってすごい!と思った。

以下は、2023年7月に観た「デイヴィッド・ホックニー展」をアートコミュニケーター仲間に紹介した時の文章です。

ホックニーさんは、80年代のカリフォルニアっぽいプール付き邸宅の絵や、フォトモンタージュで有名な方で、当時のアメリカのアヴァンギャルドなアーティスト達の中では、比較的穏健な作家、というのが私の勝手なイメージでした。それから30年以上が経ち、大御所となり、気立てのいいおじいさん作家の朗らかな絵画を観てほっこりできるかなー、とか思って行きましたがとんでもない。
めちゃアグレッシブな挑戦を続けていました。私の認識不足です。すみませんでした。

まず作品キャプションに「iPad絵画」という技法が堂々と書いてある。モチーフは郊外の美しい自然風景が多い。作家は屋外に電子機器を持ち出して、キャンパスではなく発光する画面に絵を描き込んでいく。これを美術館に展示する時は、やはりデジタルサイネージが最も適した支持体になる。タイムラプスを使い、描き込んでいくプロセスも観せる。
また、以前は沢山の写真を繋ぎ合わせてアナログで制作していたフォトモンタージュも、巨大な3D合成写真や、9台の超高精細カメラによる「動画」へと進化。聞いただけで凄そうでしょ?

圧巻は長さ90mの四季絵巻「ノルマンディーの12ヶ月」。iPadで描いてプリントアウトしたものと思われますが、継ぎ目がわからないし、ぱっと見、光っているモニターのようにも見える。何故かと言うと、これほどまでの長い画面なのに、どの部分にも均等に光が当たっている。明暗のばらつきがないので、絵画の物質性が打ち消されている。天井を見ると、100基位のスポットライトがぎっしり並んで、緻密に、精密に、万遍なく、画面を照らしている。

ここ数年、展覧会における照明技術の進歩はすごいです。以前は考えられなかった圧倒的な視覚体験が可能になったと思います。おかげで以前私が勝手に名付けた「e藝術」的な表現が、リアルに体感できるようになってきました。
マティスは、70歳代に病床に就いたのをきっかけに、切り絵の手法を開花させたと聞きます。ホックニーにも、共通するものを感じます。高齢の大御所芸術家が、iPadと言うICT技術を使い、第一線で新境地を切り開く。可能性を感じます。

いいなと思ったら応援しよう!