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加地葵、"地を這うもの"の矜持

加地葵について、残しておかなければならないと思った。

金色のコルダ無印にて、総合優勝やら月森くんとEDを迎えるなどして、満を持して加地葵に会いに行きました。結果、これまでプレイした乙女ゲームで出会えてよかったキャラクター総合ランキング上位に食い込む男だったので、当時のツイートという名の魂の叫びを、忘れないうちにまとめておこうと思います。

下記、実際にゲーム・資料集で語られていることが4割で、残りの6割は私の妄想なので話半分で読んでもらえると幸いです。また、加地葵とコルダ無印に関しては無印と2ffのゲーム、資料集の知識しかないので、「ここはゲーム内や設定で否定されている/答えが出ている」ポイントがあれば、できればnoteのコメントでもお題箱でもDMでも教えて頂けますと助かります!

■加地葵と天才たち

コルダのテーマは音楽の祝福と呪いだと思うんですけど、所謂持つ者である音楽科メンバーとは反対の、持たざる者の苦悩や葛藤が加地葵√では描かれていたのがすごくグッときました。無印で月森くんという""選ばれる側""の男を攻略した後なので加地葵の何もかもが""選ばれない側""の様式美なの、舌を巻いた。

ね……。

特に月森くんとの対比でウワァとなったの、対立イベントなんですけど、""努力してるのに月森から指摘された""ことによってますます彼が他のメンバーに及ばない(と、思ってしまう)ことが浮き彫りになるの、残酷じゃないですか?
ただそんな対立イベント、解決編(?)では、月森くんと加地葵が一緒に練習していてビックリした。プライドの高い彼にとって、「月森くんに自分の音を聞かせて意見を求める」なんてとてもハードルが高そうなのに、それを日野香穂子のためならと言い切ったのを見て、ああ…これが恋の力……!って思った。

ちなみに無印で月森くんのクリア後に見れるイベントで、さも当たり前みたいに「積み重ねてきたことは君を裏切らない」って言葉をくれるんですけど、彼はそれを真っ直ぐに信じられる体験を重ねてきたんだなって思うと同時に、そういう言葉に加地葵はきっと傷付いて来たんだろうなと推察できるの、辛い。もちろん月森君には月森君にしかわからない苦労もたくさんあるんですけどね。
加地葵の周りの優しい人たちは、彼を想って「頑張れば大丈夫だよ、なんとかなるよ」と励まし続けてきたんだろうと思うし、それがわかる加地葵だからこそ、地雷を踏まれても泣いてるみたいな顔で笑うしかなくなってしまったんですね……

あと、土浦くんとバチってる加地葵も良かった。
比較的仲良しの土浦くんに対して、加地葵が多少の私怨込みでああいう物言いになるの、致し方ないことなんだと彼のイベントを見てきた私は思うワケ…。好きな子の前でちゃんとしてる加地葵が、それでも言わずにいられなかったんですよね。わかる!自分が欲しくて欲しくてたまらないものを持ってて、本当は音楽が好きになのに本気になってないような顔をして簡単に捨ててしまえるような口ぶりでさ!そりゃ言葉に棘もでるわ!私は見れてないんですけど、どうやらご親戚の柚木先輩ともバトルするイベントあるらしいですね。絶対見たい。

色んな天才と比較(を自分でしている)加地葵なんですけど、志水くんには「ヴィオラの音、だんだん良くなってきているのに… 気づかないのかなあ」って言われてて、結局彼をがんじがらめにしているのは彼自身であるから、こうやって外部の評価にも素直に耳を傾けてほしいなとも思いました。自分にはこれが足りない、みたいなことを言うの、加地葵としては謙遜でも卑屈でもなんでもなくてそれが事実以外の何物でもない、と思っているからなんだろうけど、彼に足りないのは「人間は成長する」という視点かもしれない。みんな加地葵のこと褒めてるんだよ。でも、足りないんだよね、自分が思う場所に行くにはさ……

■恋愛失敗選択肢から見る加地葵の"氷点"

加地葵の恋愛失敗(パリーン)、日野香穂子による「もっとがんばってみて」というセリフなんだけど、これ、単純に彼を傷つけるというか、普段の加地葵を見て彼に寄り添っていれば絶対に出てこない言葉なんですよね。なので、彼はこの言葉自体のもつ無邪気な残酷さ以上に「日野香穂子からこの言葉を送られてしまった」ということに傷ついたのではないかと思います。

というかこの選択肢、別イベント含めて合計2回あるのがエグすぎんか?何なの?

音楽をテーマにする上で、""頑張ってもできないこととしての音楽""を描くのは避けて通れないとはいえ、ある意味天賦の才にて音楽の神様みたいになった主人公に「頑張れ」って言わせるの、めちゃくちゃ人の心がなくて笑っちゃいました。嘘。笑えんわ。

金色のコルダ文脈で勝手に解釈して語ると、「頑張れ」っていう言葉、日野香穂子(と、もっともっと昔から加地葵にその言葉を無邪気に向けてきた人々)から加地葵への音楽の呪いなんだけど、それに耐えられるかどうかというのも、また音楽の才能の1つであるという事実が残酷だなぁと思います。

神様は加地葵に審美の才能を与えて美しい音楽を愛してしまうという呪いを授けたのに、加地葵自身には彼の才能に耐えうるような音楽を生み出せる力は与えなかったの、非道いと思う。でも…だからこそ他人の生み出す音楽がいかに尊いかを彼はだれよりも知ってるし…加地葵の優しさやある種の謙虚さはそういうところからきてると思うし…(ろくろ)

思うに、彼の悲劇は音楽の才能がないことではなく、ただただ音楽の才能(=彼が欲している楽器演奏の才能)以外のだいたいのものを持ってる側の人間として生まれてきたことかもしれないですね。
加地葵、MF出せなかったら私が号泣するけど出せないんだろうな…

ところで、頑張れって言われるのも地雷だけど、頑張ってるねって言われるのも嫌がりそう。頑張れって言うと「頑張ってないみたいじゃない」って言うし(パリン)、頑張ってるねって言うと「頑張ってるのにこの程度なんだ」って言うんじゃないんですかね。何???


■加地葵の可愛いところ、好きなところ

好き放題言いまくってたので、初心にかえってシンプルに加地葵の好きなとこ挙げたいと思います。
外見がまず好き。あと、ピアス、ひとつだけかと思っていたらヘリックスも開いててえっちですね。持ってきたサンドウィッチを午前中に食べたって聞いて男子高校生の食欲…!ってなった。このイベント2回くらい見たんだけどオシャレぶってないでバズーカ弁当にバカの量のからあげと白ごはん入れて持参してこい!って思いました。
意外だったのは香穂子呼びに照れているところ。かわいいね…

■加地葵、モテ…る?か??

上の香穂子呼びに照れるのでも思ったけど、加地葵、最初見た時は経験あるだろって思ってたんですけど、これワンチャンないですよね?
根が陰キャというか、文学青年だしロマンチストだし、酒は飲んでても女は経験ないんだろうなぁと思った。(言葉がきれいじゃなくてすみません)

そんでプレイしてて思ったのが、言うて加地葵、モテる…か?ということで、なんかこう…知り合いになったらちょっと変な人枠に入りません!?もちろんカッコいいし、ゲーム内ではモテ描写もあって、明るくて面白いんだけど、完全に陽キャだと思って近づいたら変にナイーブなところがあると思う。
しかも自分のナイーブとプライドの高さをわかっているようで制御しきれていないので、ツッコミのつもりで何かを指摘したら一瞬だけ険しい顔しそうなタイプじゃないですか?

外から見てる加地葵と、ちょっと仲良くなった加地葵って結構違うと思ってて、ノリのいいキャラだけど彼のプライドを刺激するようなツッコミをすると一瞬だけ間があったり、最悪そういうのはちょっと…って言ってくるから距離を測りかねるタイプだと思います。(見てきたかのように言う)

■加地葵と文学

「太宰や中原をよく読みます。」これ最初の自己紹介で彼が語った時、え?こんな陽のど真ん中にいるタイプの人間なのに太宰や中原読むの?どちらもなんというか比較的""生きづらい者の文学""なのに、何でもうまく行ってそうな彼が好むちょっとちぐはぐじゃない?って印象に残ったんですけど、これ加地葵を知れば知るほど「ああ…」ってなる好みだった。
それがわかるのがアンサンブルで苦しむ彼のイベントあたりで、人のために笑って、その心の内では思うように弾けない自分の音に引き裂かれそうになりながら参加してたとかいうのを知って「いや加地葵、まごうことなき治の系統、"道化"じゃん……」ってなった。

後、何かの作品に出てくる登場人物が自分に似ているって言ってたけど海外の作品だったので忘れてしまった。何でしたっけ…

ちなみにこれ、最初は加地葵自身の話をしていると思ってたんですけど
どっちかというと加地葵から見た天才たちの話なのかなって思いました



■朝日奈唯は加地葵に「頑張れ」と言わない

急にスタオケの話をします。
恋愛失敗が存在しない仕様とか状況とか諸々あるので、どっちがどうという話ではないけど、日野さんには加地葵に対して「頑張れ」という選択肢があるのに対して、スタオケの主人公の朝日奈には三上に対する「頑張れ」の選択肢がないの、趣深くないですか?

三上蒼司は音楽の祝福を受けながらも外的要因でそれを封じ込まれてしまった人で、加地葵とは別方向に非常にナイーブな性質で、多分彼の氷点も「がんばれ」じゃないかなって思うんですけど、朝日奈唯は親愛ストにて結構キツい場面でも、三上に対して「がんばれ」は言わないんですよ。

朝日奈唯は、不思議なヴァイオリンによって力を得て見事それを自分のものにした日野香穂子や、星奏音楽科や別時空では天音学園に入学できるほどの実力を持つ生まれながら音楽の祝福を受けている小日向かなでと違って、(様々な要因があったとはいえ)音楽科や星奏以外に受からなかったという設定があるんですけど、ひたむきに音楽を愛していて、朝日奈と加地には似た部分があるなと思います。

とはいえ音楽に選ばれなかった者二人、加地葵は生来のプライドの高さも手伝って己の理想とする音を奏でられないが故に苦しみ一度は音楽から離れていたけど、朝日奈唯は例え無様でも、それでもどのような形であっても音楽に関わることを喜びとしているという点で、まったく同じかと言われれば出発点は結構異なってる気がする。

ただ、朝日奈唯は加地葵に「がんばれ」と言わないけど、加地葵は朝日奈唯の音楽には惹かれないと思います。敵にもならないが同時に彼を強くゆさぶる存在にもなりえないから、やっぱり加地葵には日野香穂子というイカロスの翼を焼いてくれるような太陽しかないんですね。(コルダ主人公3人の"太陽属性"、それぞれ異なってるのも面白いです)


■エンディング

プレイ開始直後くらいに「私は天女の羽衣を隠して人間にひきずりおろす男が好きなんですけど(日本昔話「天女の羽衣」参照)、加地葵は自分のところに引きずり下ろすんじゃなくて、自分が相手のところに行こうとする男なんですよね。その結果あまりの熱に羽が溶けて落ちてしまっても、加地葵は日野さんが己のところに落ちてくるのは望まない気がする。」みたいなことを言ってたんですけど、なんか概ねそんな感じで天を仰いだ

あと、日野さんという太陽に憧れて手を伸ばす加地葵はイカロスじゃんって言ってたら
まじでイベント名に「イカロスの飛翔」ってのがあってぶっ倒れた。

さて、エンディングですが、非常に…良かったです。神に選ばれなかった者であっても、結局それは加地葵の自称であって、音楽の祝福はそれを愛するものに平等に与えられるものなんだ、っていう、金色のコルダの価値観を回収してくれる最高のエンディングでした。

ところで連鎖は日野さんとぶつかり合って(?)答えをだす一方で通常恋愛√の加地葵、自分で答えを出すことができるんだね。
イカロスの飛翔はすなわちイカロスの墜落と同義であり、加地葵も太陽に焦がれて飛び立ったは良いけれど、楽器を持って横に並び立つのは自分ではないと気づいてしまったのかもしれなくて、でもそこを愚かだとしても…と自分なりに自分で落とし込めたのが通常恋愛√なんだろうな、と思いました。

連鎖では最後音楽と日野香穂子をまぜこぜにしてほぼ概念みたいな話で好きだと言われたけど、明確に告白されてしまった のも面白かったです。より恋に落とし込んだ側の√なのかもしれない。なるほど。

連鎖と通常恋愛、どっちが好きかといわれると難しい!ってなりますね。連鎖イベントで2度もパリンポイントがあって苦しんだ加地葵が刺さったまま抜けてないんだけど、通常恋愛の、墜落したイカロスは太陽に焦がれるのを諦めるのではなく、どうすれば太陽を愛したままでいられるのかというのにシフトして、天を翔られないのなら地上から君の助けになればいいという、地を這う者として健気かつ図太い選択をする加地葵も大好きです。

以上!ありがとうございました。








いつか天宮についても書きたいわね…

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