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盟友・渡邉浩史郎へ

10月23日は、麻雀最強戦決勝卓の観戦記担当だった。

決勝の場合は、A卓・B卓それぞれから勝ち上がってきた選手の試合を書くわけなのだが、基本的には誰が上がってきてもいいようにしているし、特定の人への肩入れはしないようにしている。

ただ、今回の麻雀最強戦は別だった。

大会直前の「バカジンのバー」に立ち会った際には、この大会に出場する麻生ゆりプロ、小宮悠プロとお会いしており、二人を応援する気持ちももちろんあった。

しかし今回ばかりは、あのプロにどうしても決勝卓まで勝ち上がってほしかった。

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B卓の渡邉浩史郎である。

仲間意識

僕は麻雀界でお仕事をさせていただいているとは言え、プロ雀士でも何でもない、一介の文章書きである。

一方で、SNSなどで麻雀プロの情報をチェックしていると、お互いの交流であったり、大舞台に出る者を応援する声であったり、勝てば祝福、負ければねぎらい、いろいろなやりとりがかわされている。同じ麻雀の道で研鑽を積む人たちの間には、きっと何らかの仲間意識があるのだろう。それが同じ団体であれば、なおさらだ。

僕にはそうした仲間、同士と呼べる存在は、少なくとも身近にはいない。近代麻雀編集部の皆さんはビジネスパートナーとして信頼しているし、人としても好きな人たちなのだが、やはり立場の違いはある。

その中である種の仲間意識を持てる存在なのが、僕と同じキンマwebの観戦記ライターたちだと、少なくとも僕は思っている。当然ライバルでもあるのだが、特に麻雀プロをしている書き手の人たちがプロの世界で結果を出すのは、僕も心から願っていることだ。

渡邉と実際に会ったのは、僕が主催したとあるイベントに彼が来てくれたときと、EX風林火山ドラフト会議指名選手オーディションで彼に取材をしたときの2回だけだと記憶している。でも、彼が日本プロ麻雀連盟の「The Legend of Dragon Youth2020」という大会で優勝したとき、本当にうれしかった。

そして今回、彼は麻雀最強戦の舞台へ駒を進めてきた。紛れもなく、自分の麻雀で結果を出して勝ち取った権利であり、彼にとって麻雀プロとして過去最大の晴れ舞台であることは間違いない。

だったらその晴れ舞台は俺に書かせろよ。

依頼

10月12日、キンマweb編集部からこの大会の観戦記の依頼が来た。その際、試合の割り当てについて、こんな質問が添えられていた。

「渡邉浩史郎の卓の方が書きたいとかありますか?」

編集部サイドでも、僕が彼に思い入れがあることを分かっているからこその質問だろう。僕は、こう回答した。

「できればそちらがいいですけど、決勝卓含めてお任せします」

B卓担当の希望を出せばきっと通っただろうし、そうすれば確実に彼の試合を書くことができた。だが、自分の希望は伝えつつ、こちらから指定はしなかった。

今年の麻雀最強戦では決勝卓の担当をすることが多かった。それだけの仕事をしている自負もあったし、今回もおそらく決勝卓になるんだろうなと、漠然と思っていた。そして書くのであれば、やはり渡邉が頂点へ挑む戦いを書きたかった。もしも彼が勝ち上がれなかったとしたら、今回はそういう巡り合わせ、縁がなかったのだと思うことにした。

翌日、正式に決勝を担当することが決まった。彼の記事を書くのであれば、決勝まで勝ち上がってもらうしかない。

脇役

当日、僕は担当ではないB卓戦を見た。渡邉は序盤からいい戦いを見せていたが、南1局で小宮プロに5200を打ち込んで後退。入り目7mでの放銃はメンタルにも来るやつだなー、とか思っていた。

次局、結果論とは言え、渡邉はガッツリアガリを逃した。そして原プロの清老頭が炸裂した。解説の瀬戸熊プロには「名脇役渡邉」と呼ばれていた。もちろん冗談なのは分かっている。

渡邉は南3局でも勝負を決するチャンスを逃し、小宮プロとの競り合いに敗れた。結局彼は、脇役として大会を去ることになった。

数日後、渡邉の自戦記がキンマwebに掲載された。その中で彼は、自らの実力が足りなかったこと、悔しさのあまり涙したこと、そして再度前向きに麻雀に取り組み、再びこの舞台へ帰ってこようという意欲を記していた。

大舞台の場数を踏んだこと、薄毛キャラで視聴者にアピールできたこと、彼にとって今回の最強戦は、非常に有意義なものであったはずだ。それは大いに結構だし、ぜひ今後に生かしてもらいたいと思う。

だが、ちょっと待て。

こうしろう、俺との約束はどうした?俺は君の試合の観戦記を書くんじゃなかったのか?

もちろん、それは僕がB卓の担当を立候補していれば済んだ話である。でも、ここはあえて渡邉に責任転嫁させてもらう。これは単なる僕の身勝手だ。

盟友・渡邉浩史郎へ

今から書くのは、僕の一方的な思いだ。もしこれを渡邉が読んだとして、彼がどう思うかなんて知ったこっちゃない。嫌われたなら、そのときはそのときだ。

決勝は非常に熱い戦いで、こちらも気合いを入れて記事を書いた。だが、やはり個人の思いとして、こうしろうのいる決勝を書きたかったし、それが叶わなかったのはすごく残念だ。

本当にまた、最強戦の舞台に戻ってこられるのか?それはいつだ?その場所を目指す人間はたくさんいるし、チャンスなんてもう二度と来ないかもしれないぞ。

FocusMでMリーガーにボコボコにされているだ?逆にボコボコにしろよ。上を蹴落とさなきゃ、出番はいつまでたってもまわってこない世界なんじゃないのか?

言うだけなら簡単だ、それを結果で見せてくれ。それが麻雀プロなんじゃないのか?

こう思っているのは、僕だけかもしれない。でも僕はあえてこの場で、同じ観戦記ライターである渡邉を「盟友」と呼ぶ。

書き手同士から、書く側と書かれる側の関係になる。これはきっと、我々の間にしか生まれない特別なものだ。観戦記を書くのには慣れたが、周りから見ると、こいつはかなり過酷なものらしい。その苦労や喜びを共にする渡邉には、麻雀プロとして成功を収めてほしいと、心から願っている。

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君を応援した8パーセントの1人、東川亮より。

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