ヨシキさんとの間にあった事
※この投稿には、高橋ヨシキ氏をいたずらに中傷したり、スキャンダルを告発するような意図は一切ありません。
もう15年近く前の2008年頃、私は当時日本最大のSNSとして隆盛を誇っていたmixiにドップリで、プロアマ問わず気軽にコミュニケーションできる楽しい楽しいフィールドに夢中でのめり込んでおりました。
今と変わらずジャンル映画について熱く語っているうちに、今はなき映画秘宝周りの”中の人”たちとも親しく交流できる幸運に恵まれ、秘宝周りの飲み会などにもお呼ばれして、直接お話できる間柄にもなり、ちょっとした『ミッドナイト・イン・パリ』状態を満喫しておりましたよ。
そんな頃、界隈では気さくな人柄で人気者だった映画監督のKさんが新作映画を発表されまして。自分はその素晴らしい出来栄えに、決して身内贔屓ではない(つもりの)大きな感銘を受け、自分のアカウントで連日のようにプッシュしまくっておりました。
ところがその作品に、これまた自分とは程よく親しい間柄にあった脚本家のN氏が、割と辛辣な批評を投稿しておられましてな。
今は故人となった氏のことを悪し様に言うのも気が退けますが、N氏は常日頃の空気を読めない素行から決して評判のよい人物ではなかった事も有って、その投稿には界隈から嵐のようなクレームが押し寄せ、なかなかハードな炎上と相成りました。
「人が一生懸命作った作品を悪し様に言ってはいけないと思いまーす!」的な一番言っちゃあいけないヤツに始まって、「大体あんたは前々から言動が鼻持ちならなかった」「そういや以前にはこんな心ない振舞いもあった」等の人格攻撃にまで発展。
自分は氏の常日頃の言動にも、本作への的はずれな批判にも「何だかな」と思ってはいましたが、こういう寄ってたかっての私刑のような個人攻撃には不快感しかなく、大いに義憤に駆られて、強い抗議の意味を込めて↓このような日記をしたためたのでありました。
(当時のmixi日記をNoteに転載)
我ながら絶妙なメタファーをカマしてやったわ!と自己満足な悦に浸っておりましたが、生憎にして遠回り過ぎたのか界隈にはまったく皮肉が伝わらず、N氏をこっぴどくリンチしていた面々も「わーい!面白いテーマだね♪」と群れ集まって、嬉々として大喜利に参加する始末。
今にして思えば、こんなエアリプみたいな回りくどい批判でなく、肝心の炎上しているリプ欄に直接批判をぶつけるべきでありました。
そんな状況を、界隈の中心人物であった人気者のライター/デザイナーの高橋ヨシキ氏は極めて苦々しい眼差しで見ていたようでして。
氏の昔からの主張や、それが結実した監督作品『激怒』を観れば、こういう衆を頼んで正義面した集団リンチこそ、氏の最も忌み嫌うものであるのは明白ですな。昔から一切ブレておりません。
そんな折、映画秘宝周りのプロアマ問わぬ面々が一同に集う新年会が新宿ゴールデン街の居酒屋にて開催されまして、自分も図々しくも末席を汚しておったわけですが、やや遅れて入店したヨシキ氏は、自分の姿を見咎めるや、スタスタと一直線に近寄って来られて開口一番
「オレは、お前みたいなヤツが一番嫌いなんだよ!」
と激昂して、手にしていた小銭入れをビターンと投げつけて来られたのですね。
あまりの展開に縮み上がってアウアウしてる私に、氏は怒りが収まらぬ激しい口調で詰問を続けておられたのですが、どうやら自分がK氏の作品を一番熱っぽく推してた事から、自分が今回の炎上リンチの首謀者だと認識しておられたようなのです。
「知り合いが作った映画だからって、身贔屓なバイアスをかけて必要以上に褒めそやすのはケシカラン」
「そんな作品が誰かに貶されたからと言って、寄ってたかって攻撃するのはケシカラン」
と言った意味合いのことを一時間近く怒鳴られた上で、氏は吐き捨てるようにテーブルを離れ、私はひたすら気圧されて、後者の指摘については大きな誤解が有ることは主張できずに終わりました。
前者については、当時は監督のK氏との距離が近すぎたこともあって、本当に冷静な評価だったのかは自分でも断定できぬものの、今でも何度となくDVDで見返す、私のツボを的確に突いて来る大好きな作品であることは確かです。
ちなみに、ヨシキさんも監督のK氏とは親しくしておられ、むしろ脚本家のN氏のことを「非常に不愉快な人物」と嫌悪されてたので、そのスタンスを超えて今回の炎上騒ぎを痛烈に批判したのは、さすがのフェアな矜持だと思います。
ともあれ、この件を境ぐらいにヨシキ氏とも秘宝界隈とも疎遠となって今に至るのですが、ヨシキさんに「そういう輩」だと認識されたまま終わっているのは本当に心残りで、今でもシクシクと胸が痛んでおります。あの時の剣幕からして「俺は違う」と言い返したところで醜い自己弁護としか受け止められなかったでしょうし、イマサラ「あの時のは誤解なんですよ」と弁明したところで「そんな事は覚えてないってば。ていうか、そもそもオメー誰だっけ?」ぐらいのモンでしょうし、本当に今となってはどうにもならない、苦い苦い思い出であります。
今回Twitterにてヨシキさんの初監督作品『激怒』に対してかなりキツい事を書いてしまったのは、決してヨシキさんへの鬱屈ではなく、むしろ氏は身内目線の歯の浮くような賞讃こそを何よりも嫌うハズだという、例の一件を経た上での自分なりの表明でした。逆に「なるたけ正直に、歯に衣を着せぬように言わなきゃ」という反動に引っ張られ過ぎた感は有るかもしれませんけどな。
↓そのTwitter投稿
https://twitter.com/roger_demarco/status/1567449846541619201
この出来事には、今も胸をかきむしられるほど忸怩たるものが有りますが、氏のフェアで高潔なポリシーには賛同できますし、今でも氏の活躍ぶりを眩しくチェックさせて頂いております。すっかり高いところに行ってしまわれましたが、氏のことは今も陰ながら敬愛しております。