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『ゾンビ』全米公開版について【1】

【用語解説】

DA版ダリオ・アルジェント監修版。118分。
US版
全米公開版。127分。
DC版ディレクターズ・カット版。139分。
ロメロ版US/DCを併せた、ロメロが編集したバージョンの総称


さて今回は、『ゾンビ』全米公開版(以下US版)に関するヨモヤマ話でご機嫌伺いです。

これは日本で初めてソフト化されたバージョンであり、劇場公開から遅れて来た私ごときファンには、さながら魂の故郷のような、じつに思い入れの深いバージョンですねー。

今のように、2000円やそこらで高画質のDVDを買える時代が到来するまでは、レンタル店でこのVHSにいくらお金を注ぎこんだことでしょう。
2泊3日で1000円のレンタル料を、最低でも30回ぐらいは払ってるから… 当時14800円の本体が2本買えるじゃん!

もう何度も観てるハズなのに、レンタルして帰ると毎回嬉しくって…
憧れの彼女が家に遊びに来てるって感じ?思わずイソイソと お部屋の片付けなんかしちゃったりして。「あー、今日から3日間は、『ゾンビ』が家に居てくれる!その間は何度でも遊んでもらえるんだ!」という嬉しさに、学校でも浮き足立っちゃって、ソワソワと落ち着かなかったものですわい。

あと、パイオニアLDCから発売されたLD版(9800円)も、プレイヤーも無いのに購入。 あの素晴らしくスタイリッシュなジャケットやライナーノーツを眺めては、「この銀色の板っ切れに『ゾンビ』が丸々入ってるんだ… 凄いなぁ文明は!」などとよく分かんない感慨に耽ったりしておりましたともさ。

まぁ そんなわけで、このバージョンで100回ぐらい観た「ゾンビ」が、少なくとも私にとっての『ゾンビ』ですねえ。
実際、「DC版ほどダル過ぎず、DA版ほどカル過ぎず」というバランスの良さで、これをベストに挙げるマニアも多いです。

それでは見逃せないキーポイント毎に、このバージョンの魅力をじっくり語ってみませう。

【3大ゴエ~ン♪の威力】

後にリリースされたDC版は、US版のシーンを丸々含んだ上に追加シーンまで有り、実のところ US版でしか味わえない要素は、正直さほど無いです。 昨日今日の映画ですかい!?ってぐらいにハイクォリティなDVDが出た現在では、高画質・高音質という大きな取り得は有りますが。

ただ、「これだけは絶対にUS版じゃないとダメ!」というポイントは、私が常日頃から口をすっぱくして言ってる「ゴエ~ン♪」という効果音。イントロのフランの寝顔にかぶさる、あの強烈なジングルですわ。これが、ストーリーの大きなポイントとなるシーンに、実に的確にインサートされ、見事なアクセントになっております。

まずはイントロ。 ぶぉぅん…ひゃぁああああ…ほえはえひえひえ…
と不気味な音楽が徐々に迫って来て、真っ赤な壁からフランの寝顔までズームアウト (微妙にカクカクした動きがナイス)したところで、満を持して

と来るワケですよ。「おりゃあ!『ゾンビ』が始まりまっせー!!!」って感じで、何度観ても全身が震えます。ここで「ゴエ~ン♪」が入らない「ゾンビ」など、私は「ゾンビ」と認めません。(きっぱり)

これがDC版ではどうなってるか?ってのは、後日改めて語ります。まぁ観た人なら誰でも知ってますな。あの「あらら?ヒザかっくん…」な拍子抜けな感じ…

次は、モール到着のシーン。 明け方の空を飛来してくるヘリのショットを枕にして、次のショットでいきなりズドォン!とモールの全景が大俯瞰ショットで叩きつけられ、ここに

と来るワケです。何度観てもショッキングでカッコ良くて、おしっこチビりそうになります。「おりゃあ!本筋に突入しまっせー!!!」という景気づけのファンファーレ。ここで「ゴエ~ン♪」が入らない『ゾンビ』など(以下略)

エレベーター内でゾンビどもに襲われ、アチコチを噛まれながらも必死の思いで撃退したスティーヴン。 それから数時間…
一筋の希望を信じ、階段フロアで ひたすら待ち続けるピーター。その頃、エレベーターの扉に へばり付き、意地汚くスティーヴンの人肉を求め続けるゾンビの手が、偶然「開」のボタンに触れ、エレベーターの扉がおごそかに開いた瞬間…

と来るワケです。 もう、壮絶にショッキング&ドラマティック!「おりゃあ!神も仏もあらへんでぇ!!!」な気分をMAXまで強調してくれます。 このシーンの選曲は、誰が何と言おうとUS版最強。ここで「ゴエ~ン♪」が入らない「ゾンビ」など(以下略)

というわけで、この「3ゴエ~ン」は、どれも「ゾンビ」にとって必要不可欠と言い切れる、まさにシーンと一体化した名スコアなのです。 コレが有るからこそ、例えDC版よりシーン数は少なくても、US版は絶対に捨て切れないですねえ。

【この項 つづく】
初出:2005年12月21日


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