読書ノート

明日の記憶 萩原浩
恐竜レッドの生き方 ロバート・T・バッカー

少し前に古本屋さんで買ってた本をようやく読み終わった。

あまり期待してなかったけど、なかなか面白かった。
萩原浩さんの「明日の記憶」
若年性アルツハイマーにかかったまだ60前の広告代理店勤務の男性。仕事には苦労もあるものの充実した日々。娘の結婚式も控えている。そんな彼が仕事でも物忘れをするようになって、妻に強く勧められ病院を訪れ、初期の若年性アルツハイマーと診断されてしまう。現代の科学ではアルツハイマーを治す薬もなく、あるのは進行を遅らせる投薬のみ。アルツハイマーが怖いのは記憶力だけでなく、体の機能まで次第に衰えていき、つまり生きることを忘れてしまう。そして最後には死に至る病気なのだ。こう書くと救いようのないストーリーに思えるけれども、最後の場面はとても美しい。今の時代は尊厳を持って死んでいくというのが難しい時代になったのかもしれないなと思う。

ロバート・T・バッカー
恐竜レッドの生き方
北米ユタ州で大きなラプトルの化石が発掘される。
ユタラプトルと言われた大型のラプトル類レッドというメスの恐竜のラブストーリー。
正直、この本はそんなに期待してなかったんだけど、なかなか面白かった。筆者の古代生物に対する深い知識と何よりも想像力の豊かさがこの面白いストーリーを作り上げたんだろうなと思う。
この中で私が一番はまったのは、古代生物に限らないが、人間を除く全ての動物が排泄物を情報伝達に使っているということだった。つまり匂いによって、それがどの種のどの家族の誰のものか、その動物がいつそこにいて今どこにいるかなどの情報を伝えるために使われているということ。これは現代の動物世界でも普通に行われている情報伝達だ。
ホモサピエンスだけがこの能力を失ってしまったというくだりがあって、なるほど確かにそうだなと深く頷いてしまった。我々にとって排泄物というのは不潔なものであり、なるべく自分のそばに置きたくない。遠く離れておきたいものとなってしまっている。もはや排泄物から誰かを特定したりする能力は我々にはない。それが衛生面や文化の獲得であり、同時に失った能力でもあるのだということを知った次第。
人間も小さい子供の時は、特に男の子に多いと思うけれども、うんちに惹かれる時期があるような気がする。
まだ動物に近い感覚を持っている子供に、一時的に見られる傾向なのかもしれない。

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