2)_映画で見た水のこと

渋谷ユーロスペースで映画「こちらあみ子」を鑑賞したのは8月のことだが、
そのとき頭に浮かんだのが6月に観た「はい、泳げません」だった。

映画の冒頭。
母親の習字教室を襖の隙間から覗き見しながら、トウモロコシにかぶりつく あみ子。
大口でかじり、汁が実からほとばしる音。それが畳の上にボタボタ落ちる音。
それが耳に張り付くような音量と精度で響き、この後の展開をも予期させる強い効果を上げていた。
(同日聴講したトークでも、森井勇佑監督がこの点を言及されていた)

この、トウモロコシの水分である。

「はい、泳げません」は、タイトル通り泳げない主人公が、
スイミングスクールのコーチのもとで泳ぎを特訓する話。
この、全編において水が重要な役割をもつ映画と あみ子が重なったのは
実に単純な連想からくるものであったが、この脳内の一時の連想は、
「こちらあみ子」のラストシーンによって私の中で裏打ちされた。
ラストシーンへの具体的な言及はここでは避けるが、
水が一つのキーになっているという考えは、強ち間違いではないのではないかと思っている。

そしてどちらも、前情報なしで鑑賞したこともあり、
思いもよらないシリアスな展開に息が詰まる思いをした。
鑑賞の態度としては実に恥ずかしいことだが、
「こちらあみ子」のアフタートークでゲストの俳優 池松壮亮が
「トップガンがおもしろかった」話をずっとしていたことが可笑しくて、
率直なところ その余韻で無事に帰路へついたようなところもあった。

ついでに思い出したのは、4月に観た映画「ツユクサ」である。
主人公が海沿いに運転する車のボンネットに隕石が衝突するという
突拍子もない場面から始まり、ごく日常的な(ように見える)淡々とした展開へ向かう
その落差がとてもおもしろくて、主演の小林聡美が同じく主演した
ドラマ「すいか」を思い出すところもあり、連想はいくつも続いていった。

映像作品をいくつも辿っていくことの楽しみは、
こういったところにもありそうな気がする。


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