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🖊夏目漱石と武者小路実篤、二大文豪の心の交流を垣間見るチャンス!

 私もあなたと同じ性格があるので、こんな事によく気を悩ませたり気を腐らせたりしました。しかしこんな事はいつまで経っても続々出てきて際限がないので、近頃はできるだけこれらに超越する工夫をしております。私は随分人から悪口やら誹謗を受けました。しかし私は黙然としていました。「猫」を書いた時多くの人は翻案か、または方々から盗んだものを並べたてたのだと解釈しました。そんな主意を発表したものさえあります。
 武者小路さん。気に入らない事、癪に障る事、憤慨すべき事は塵芥の如く沢山あります。それを清める事は人間の力で出来ません。それと戦うよりもそれをゆるす事が人間として立派なものならば、出来るだけそちらの方の修養をお互いにしたいと思いますがどうでしょう。
 私は年に合わせて気の若い方ですが、近来ようやくそっちの方角に足を向け出しました。時勢は私よりも先に立っています。あなたがそちらへ目をつけるようになるのは今の私よりもずっと若い自分の事だろうと信じます。以上。夏目漱石(武者小路実篤宛)

武者小路がああみえて粘着な印象があるのは、以下の白樺派の、エピソードがある。

志賀直哉 武者が大学にいた頃、学習院で「人間の価値」という演説をしたことがある。人間は人間の価値を知らないところから色々な不幸が起こるというような話なんだ。ところがやりだしたらすぐつかえた。僕は聴衆の中で聴いていた、すると「つかえたから初めからやり直す」と言ってやり直したが、又すぐつかえた。今度は「とばします」といって、とばした。しまいの方に来て、直ぐ近いところに腰かけていた乃木さんの顔をにらんで、「人間の価値を知らない者は××ですッ」とやってたよ。(笑)大いに愉快に思ったがね(笑)。それから「政治家です」とか、「実業家です」とか、「学者です」とか何か他の者が出て来たが、それが一番初めに「××ですッ」と乃木さんの方を向いてやっていた(笑)。あとで乃木さんが「あれは坊主か」と言ってたそうだ(笑)。
柳宗悦 志賀も学習院時代に演説をやったよ。志賀の演説で面白かったのは、「よろしく」と言う題で「よろしくと言うのはいかん」と言うのだ(笑)。
志賀 そこまで遡る必要はないよ(笑)。

---乃木さんに向かって、「××が一番××だ」と仰ったのは・・・。
志賀 「××」じゃない。「人間の価値を知らない者は・・・」と言ってちょっと黙って、「××ですッ」と言ったんだ。

武者小路 志賀のことを聞いたらいいだろう。俺達は東京にいるけれど志賀はそうじゃないからみんなでいじめるかな。
柳 志賀が電車に乗ったらあればスリだスリだと言って・・・(笑)。あれはおぼえているかい・
志賀 そんなのは書く必要はないよ(笑)。俺一人は止そうよ(笑)。何も関係がない(笑)。

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××には好きな言葉を入れよう、というやつだが、出版時は検閲がはいってたみたいで、前後に出たやつには文字が入ってて乃木さんの職業が入るんだが、伏せてる方が迫力があるのでこのままにしておこう。わいせつな言葉という訳では無いので気をつけよう。
白樺派のひらきなおりと構成力の無さみたいなものが遺憾無く発揮されている。
構成力のなさからもうちょい大味な万人の形式に至る白樺派は、結局散文では小林秀雄みたいな人が踏襲していったように見える。
漱石は礼節を含めてイギリスかぶれの慇懃な人のようにみえるが、構成は随分感心することろもあるので、好みの問題かもしれない。
個人的には人の魅力というか、どうしょもない演説とやらを一生キャッキャありがとうってるような白樺派は人の生き方として好感が持てる。


夏目漱石と武者小路実篤、二大文豪の手紙交換を描いたヴィンテージ風イラスト。荒いドットスタイルでヴィンテージ感を強調。20世紀初頭の日本の書斎で、伝統的な障子と畳が設えられた場面。漱石は低い木の机で手紙を書いており、実篤は手紙を読む姿が描かれています。荒いドットの版画技法を採用し、初期の新聞印刷を彷彿とさせる質感と粗野な外観のイラスト。


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