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耳の悪い夫婦 —― とりあえず「何が?」と聞くことの功罪

(文責:はむすた)

突然だが、私たち夫婦は揃いも揃って耳が悪い。

かぴばらは右耳がほとんど聞こえず、右側からやってくる音があまり聞き取れない。
左耳は正常に機能してるが、右耳との聞こえ具合がアンバンスすぎるために音のする方角がよくわからない。

はむすたは聴力としては問題ないが、言語を聞き取りにくいという、いわゆる聴覚言語処理障害のような状態だ。
(「ような」と言葉を濁すのは、調べた限りではそれに当てはまるが医師の診断はまだ受けていないからである。)
つまり、音は正常に届いているのに人間の言葉として何を言っているのかがわからないことが多い。

そんなわけで、私たち夫婦の会話は聞き返しが多く、1つのセリフにつきお互い2~3回ずつ聞き返し合うので、会話が前に進まない。
同じテーブルに座って目の前で話をしていていればもちろん普通に会話できるが、当然ながら日常的には仕事や家事をやりながらの会話が多いため、お互い声を張り合って何度も同じことを言い合う。
とどのつまりは、はむすたが喉が弱く酷使できないこともあって、同じ部屋の片方の端ともう片方の端とでLINEを使い始めることになる。

30代前半夫婦とは思えない有様である。

ところで、かぴばらは聞こえない言葉や文があると、とりあえず「何が?」と聞く癖がある。
この何気ないセリフが、ときどき会話にいたずらを仕掛ける。

たとえば、
はむすた:「しまった、お湯が足りないかも」
かぴばら:「何が?」
はむすた:「お湯だよ」
かぴらら:「お湯がどうしたの?」
というやりとりが発生するわけだ。

こうなると、どうせ聞き返すなら「何が?」ではなく、もし主語が聞き取れているのであれば「お湯がどうしたの?」と言うか、あるいは「何?」などと文全体を聞き返せばよいという話になる。

もちろん、はむすたも別に日常会話でそこまで細かいことを言いたいわけではない。
言い慣れた、言いやすいセリフを繰り返し使うことが楽なのはよくわかる。

ただ、お互い正常な耳を持つ2人で会話をするのであれば無駄なやりとりを多少挟んだところでそこまでコストはかからないが、残念ながら私たち夫婦は耳が悪いので、「何が?」や「お湯だよ」のセリフも数回繰り返す可能性がある。
そうなってくると「何が?」という口癖のマイナス面がどうしても目立つ。

ちなみにはむすたは自分の耳が悪い(正確には、言語が聞き取りづらい)ことに、大人になるまで気づかなかった。
なぜなら冒頭に書いたように、音の大きさとしては正常に聞き取れているので、聴覚検査などで一切ひっかからないためだ。
もちろん親や学校側も気づかない。
そのため、学校の授業で教師から指名されて質問されても、質問文が聞き取れないために何度も聞き返して怒られ続けてきた。

はむすたの場合は耳だったが、他にも目や手足などの器官に本人でも気づきづらいような障害を抱える子どもはいくらでも存在する。
目下めざましく発展し続ける医学によって、そういった子どもたちの「見えづらい生きにくさ」が少しでも解消される未来に期待したい。


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