日本語と英語 言語の性質の違いその1 子音と母音
日本人には英語嫌いが多い。
少なくとも苦手な人は周りに複数いるだろう。
その原因は、学校の受験を前提とした英語にあると言われる。
しかし、それはどうだろう。
語学学校に留学した際に、海外の英文法の教科書を見て驚いた。日本とは全く異なっていたからだ。
このことについては別の記事で深く述べるが、とにかく日本の英文法の教え方は非常に体系化されていて少なくとも文法を学ぼうとするならば、あれほど優れたものはないと思う。
それでも英語を難しく感じるのはなぜか。
それは単純に日本語と英語が違いすぎるからだ。
私が5年英語を教えてきて感じた決定的で本質的な違いを3つ紹介したい。今回はそのうちの第一弾。
子音と母音による言葉の形成
いわゆる、あいうえお、aiueoの母音とその他の子音とで言語は形成されているわけだが、日本の場合にはこの二つがほぼ必ずペアで用いられる。
鍵=かぎ=kagi
子音と母音でペアを作り、それが一文字として表される。これが日本語である。
五十音の最初にくるあいうえおだけは母音で形成されているが、それ以外は全てこのルールに従う。
一方、英語は二重母音や子音の連続が当たり前のように起こる。例えば、
air
はaとiを組み合わせて、エという一つの音を表している。
strike
の場合にはs,t,rはそれぞれ子音であるが3つ並んで現れ、日本語ではそれができないために
ストライク=sutoraiku
というように、それぞれに母音を補って表記される。
このことがどんな特徴を生み出しているか。
省略のレベルである。
例えば、英語の場合にはリンキングや省略(正確には聞こえにくい音)が起こりやすい。
All Rightという場合には語末の子音であるtが省略されてオーライに聞こえる。
また、hand over のように二語の前者の語末の子音と後者の語頭の母音がくっついて、ハンドオーバーではなく、ハンドーバーと聞こえる。
つまり、音の変化が起きやすい。
一方で日本語にもリンキングに近い現象がある。
それが名前は忘れてしまった(大学の音声学で習った)が、以下のようなものである。
渋い+柿=渋柿
これを声に出して読んでみると、"かき"が"がき"に変化しているはず。逆にしぶかきと言うと不自然さを感じるはずである。
この濁音はどこからきたんだと言われると説明しにくいが、英語話者がリンキングしていない英語を聞いたらこれぐらいの違和感を覚えると思えば、リンキングについて学びたくなるだろう。
また、音の省略に近い現象もある。
あざーす
日本人なら誰もがありがとうございますのことだとわかる。
しかし、外国人が聞いたらどう思うだろうか。
ありがとうございますと同じ言葉だと認識できるだろうか。
初見では不可能だろう。
こちらも音がなくなることによって、言葉の認識の難易度が上がる点では英語の音落ちに近い。
しかし、英語と日本語で根本的に異なるのは母音の使用度である。
日本語は必ずすべての文字、言葉に母音が必要だ。
ゆえに、ありがとうございますを、
ありがとう
と
ございますで
リンキングさせることもできないし、
オーライのように子音だけを消すこともできない。
その結果、英語のような文字の構成とは関係なく、
実際に声に出した時に強く発音される部分だけが残る傾向がある。
ありがとうございます→あざーす
アの音は母音の中でもはっきりと強い音で、ありがとうの中で一番強く読まれる
ざもアの音を含んでいて、ございますの中で一番強く読まれる
すは強い音ではない上に、実は声に出している時にはsという子音でしかないのだが、それでも省略されずに残っているのは最後の文字だからかもしれない。
あざー、ということもあるので、その場合には弱い"す"は落としていると考えていいだろう。
だが、我々日本人はこうした省略を若者言葉と捉え、忌避する傾向にある。知らないうちに、すべてきれいに正しく発音されなければならないと思い込んでいるのだ。本当に不思議な話だ。これは感覚にまで刷り込まれているのだから。
しかし、一つ知っていてほしいのは人間は怠惰であるということ。すなわち、言語もその怠惰さによって変化するということ。
言いにくければ言いやすくする。
読みにくければ読みやすくする。
そうした積み重ねによって今の言語が作られている。
そのため、英語のリンキングや音落ちのように日本語にない怠惰さの極みを受け入れなければ、英語を聞き取ったりうまく話したりすることはできない。
英会話を学ぶ時にリラックスして力まずに、と言われるのはこういうわけなのだ。
言葉が違いすぎるからこそ、その違いを知り、仕組みを知ることでより習得に近づくことができる。
以下は、英語のリスニング力向上に役立つと思うオススメ本の一例である。
それぞれのレビューはいずれ別の記事で個別に紹介したいと思う。
今すぐ試しても構わないし、私の書評を待って参考にしていただけるなら本当に嬉しい。
スキの数が多ければ、ぜひ書評を更新していきたいと思う。
もちろん理想は海外で暮らして英語の波に飲まれて、知らず知らずのうちに身につけることであるが。
次回は明確さと曖昧さについて書こうと思う。