2020J1第20節 横浜F・マリノスvsヴィッセル神戸@三ツ沢
「負けた、、でも楽しかった。」
試合終了後、私が抱いた純粋な感想でした。
無論、負けて良い試合など一つもありません。楽しかったから勝てなくて良いわけありません。生じた課題にはしっかりと目を向けて次に活かすことが大切です。
しかしその一方で、この試合で得られた成果にも目を向け、書き留め、それを賛美するべきだとも思うのです。結果が出なかったからすべてダメだったではなく。
この試合を振り返る際の大きなトピックとして、システム上のマイナーチェンジが挙げられます。
そのマイナーチェンジの内容と経緯を分析しつつ、成果と課題をまとめる形で進めます。
では、始めます。
【Starting Lineup】
■横浜F・マリノス
◇基本システムは3-4-2-1
◇前節からスタメン7人変更(畠中、小池、渡辺、ティーラトン、エリキ、マルコス、エジガル)
◇前節から中3日
■ヴィッセル神戸
◇基本システムは4-3-3
◇前節からスタメン1人変更
◇前節から中3日
【マイナーチェンジの内容と経緯】
この試合のマリノスは前節までの3-4-2-1からシステム上のマイナーチェンジを施してきました。
図解すると上図の通りです。最大の変更ポイントはCBに入った扇原です。これまでの3バックの中央のポジションに求められていた背後のスペースのカバーではなく、積極的に前に出ていく、いわゆる"フォアリベロ"の役割を果たしていました。
なぜこのようなマイナーチェンジを施したのかについて、経緯は2点あると考えています。
①前節・鳥栖戦の反省
②vs神戸専用シフト
まず「①前節・鳥栖戦の反省」についてです。
前節は頻繁に5バック化して後ろに重たくなり、ボールを奪いに行くことができず押し込まれる時間帯が多くなってしまいました。ボスのお怒りポイントです。
この文脈で考えると、今節も同じようにボールを持たれて押し込まれることを嫌ったのではないでしょうか。
続いて「②vs神戸専用シフト」についてです。
神戸との対戦における前提として、"中盤の数的不利問題"が生じます。神戸の3センターに対してマリノスの中盤はボランチの2枚。しかも稀代の名手・イニエスタがいて、山口螢とサンペールというボール保持に優れた選手もいます。
この数的不利を放置していては中盤を制圧されてボールを奪うことができません。だからこそ扇原を前に出して中盤の数的不利を埋める必要があるのです。
これら2つの経緯から今回のシステムを採用したのだと私は考えます。
【課題:プレッシング】
試合を通じてですが、プレッシングがハマらないシーンが多かったです。
それも、特定のハマらないポイントがありました。
ズバリ、神戸のサイドバックのところです。
これは1失点目の原因にもなっているのですが、神戸のCBにプレスをかけるシャドーの裏を使われていました。
本来であればウイングバックが出て塞ぐべきポイントなのですが、神戸の両ウイングが最前線で幅を取るポジションにいることから前に出るのがどうしても遅れてしまいます。
シャドーの裏側のスペースのケアについては、今後も対応を迫られる部分なので改善する必要がありそうです。
【成果:崩しの局面】
神戸が前から奪うことをせず、引いてブロックを構築してきたことから、マリノスは90分間のほとんどを相手陣地で過ごすことになりました。ボールを握り、主体性を持って攻める状況を作り出すことに成功したのです。
結果的には開始早々と終了間際の2点しか取れていません。しかし、この日のマリノスにはあの手この手で相手を崩そうとする姿勢と非常に論理的な試行錯誤、さらに従来からの成長の跡が見られました。
成長を感じられたのは「即興コンビネーションに頼らず、サイドを起点にしてエリア内に侵入していた点」です。
というのも、これまではアクロバティックなヒールパス等を多用して中央を強引に切り崩しにかかろうとすることが多く、成功率が低く非効率的な試みの数々は大きな課題でした。
翻ってこの試合では、左右どちらからでも堅実なパス回しからハーフスペースを攻略するシーンが非常に多かったです。
この試合の圧倒的なスタッツは、中途半端かつ悪い形でボールを奪われなかったことによって実現したのではないでしょうか。中央を固められてもサイドを起点にして多くの選手がハーフスペースに顔を出して突破していたのは見ていて楽しかったですし、今後がもっと楽しみになる崩しの数々でした。
それだけにもっと点を取って勝ちきりたかったのが本音なんですけどね。笑
【まとめ・考察】
この試合についての論点をざっくりまとめると以下のようになります。
■マイナーチェンジ
▼扇原のフォアリベロ(アンカー)起用
⇒鳥栖戦の反省の側面
⇒vs神戸専用シフトの側面
■課題
▼ハマらないプレッシング
⇒相手サイドバックへの対応は今後も課題
■成果
▼崩しのレパートリーの豊富さ
▼不確実な即興曲芸コンビネーションに頼らない
この試合になぜ負けたか、それは点を取られるタイミングが悪かったからではないでしょうか。開始早々に先制をして勢いに乗ろうとした矢先の1失点目、後半イニシアチブを握って押し込み始めた矢先の3失点目と、どれもマリノスがリズムに乗りかけたところで失点をしてしまいました。
時にこうした不運な試合もあるなかでいかに勝負強さを発揮するか、こういう試合に勝つにはある種の運のような要素も必要なのでしょうね。これも含めてサッカーの奥深さなのかもしれません。
冒頭にも書きましたが、私は見ていて楽しい試合でした。今後に向けて希望も見えました。やっていることには自信を持って良いと断言できます。
次こそは内容と結果が伴う試合になって欲しいものです。
水曜日のルヴァンカップ準決勝!みんなで勝って国立へ行こう!!
10/4 Sun. 16:00K.O. J1第20節 横浜2-3神戸
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?