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2019J1第25節 横浜MvsG大阪@三ツ沢



スタメンはこちら。

前節・名古屋戦で5-1と大勝し、連敗を止めたマリノス。様々な課題がありつつも効果的なカウンターによって得点を積み重ねた末の勝利は、ある意味では薄氷の勝利とも言えるが、チームの士気の向上など様々な面でプラスに働くものに違いない。

今節の相手はG大阪である。マリノスは、前節からスタメンを1人変更。左ウイングは遠藤からマテウスへ。名古屋戦で2G1Aと獅子奮迅の活躍を見せた遠藤渓太は無念のベンチスタートとなった。

一方のG大阪は、5戦連続引き分けという状況でこの試合に臨んでくる。今夏には大規模な人員整理を敢行。(確かな計画性があるのかどうかは未だ不明)
大黒柱の今野を放出したが、宇佐美、井手口、パトリックらが復帰している。大規模な人員整理を行なった影響もあり、未だにシステム、やりたいサッカー、スタメンは試行錯誤が続いているようだ。その証拠に、ここ数試合は毎試合スタメンが変わっている。

システムは5-3-2。2トップは宇佐美とアデミウソン。スペースが与えられた状況で活きる2人をFWに据えてきたことで、カウンターを効果的に使って攻撃をしたい、という意図が見て取れる。


【ガンバの守備・それに対するマリノスの攻め方】



この試合の注目ポイントであったボール非保持時におけるガンバの出方についてであるが、5-3-2のブロックを形成し、自陣深くに構える策を採用してきた。この守備ブロックの狙いは、マリノスが使いたいスペースを人数をかけて消し、焦れて無理な縦パスを引っ掛けてからスピードのある2トップにボールを預けてカウンター、あるいは陣地回復をする、というものだ。

細かいポジションごとのタスクに目を向けてみる。

まず、2トップのアデミウソンと宇佐美には、守備のタスクをほとんど与えられていなかったと考えられる。あくまでもカウンター要員として前線に残しておくことで、ハイラインを敷くマリノスのDFラインを牽制したかったのだろう。

次に、中盤の3センターである。右から矢島、井手口、倉田と並ぶこの3枚に課せられたタスクは、ボールサイドにスライドし、数的優位を作って守ることだ。基本原則はゾーン守備に当たる。特に、アンカーの井手口は危機察知能力が高く、守備範囲が非常に広い。バイタルエリア付近でマリノスの選手が良い形でボールを持つ場面では、体を投げ出し、シュートブロックをするなど、フィルターとしての役割を果たしていた。

しかし、その反面弱点もあった。チームとしての守備の基本原則はゾーン守備であるが、井手口は人に強く付きすぎる傾向がある。とりわけバイタルエリアの最も危険なスペースを管理するアンカーがこのように人について行ってしまうと、重要なスペースを空けることになる。フォーメーションの噛み合わせ上対峙するマルコスと井手口のスペースをめぐる駆け引きは非常に興味深いものだった。

最後に、5バックである。これはシステムの特徴であるが、5-3-2は後方、つまり5バックの部分で数的優位を作りやすい反面、前線や中盤のところで数的優位を作られやすい。単純な噛み合わせを考えても、ガンバの中盤3枚に対してマリノスは2ndラインに4枚を配置している。すると、必然的に逆サイドのSBがフリーで浮いた状態になる。基本的には逆サイドにボールが移動するタイミングで中盤の3枚がスライドして対応していたが、スライドが間に合わない時にはWB(ウイングバック)が前に出るなどしてなんとか中盤の数的不利を消そうとする動きも見て取れた。


これに対してマリノスは、同サイドにある程度の人数をかけてポゼッションをするなかで、機を見て逆サイドに振る、という方法を積極的に採用していた。これによって、ガンバの中盤にスライドを強いるだけでなく、5バックを引き出すことによって守備陣形に穴を開けることを試みたのだ。

また、ウイングが幅を取り、ガンバのWBをピン留めすることによって、中盤の数的不利を埋めるべく前に出ることを牽制し、常に先手を取ることによって、優位に試合を進めていた。


先制点はまさにスライドを強いることによって生じる守備陣形のズレ、寄せの甘さを突いて奪ったものだった。



このシーンでは、ガンバをPA内に押し込んだ状態で右サイドでポゼッションし、ガンバの中盤3枚を同サイドに集結させる。その状況でバイタルエリアでフリーとなったティーラトンにボールが渡った。確かにティーラトンのシュートは芸術的で素晴らしかったが、それだけの技術を持った選手に時間とスペースを与えられたチームの設計が素晴らしい。

このゴールは、ガンバのミスによって生じた偶然ではなく、必然だと自信を持って言える。



【後半:ガンバの攻勢】


後半立ち上がりにマルコスが追加点をあげた。それから5分後、ガンバは2枚替えを行なってきた。中盤の倉田と矢島に替え、遠藤保仁とパトリックを投入。


(※訂正:図中では左ウイングがマテウスになっておりますが、遠藤渓太と置き換えてください。)

システムを4-4-2とし、より前に圧力を掛けてくるようになる。

自陣でビルドアップを試みるマリノスに対し、4-2-4の形でプレッシングを敢行。一方的な展開ではないが、マリノスのビルドアップに制限が加わり、自陣でボールを失う場面も散見された。一方、前に出てきたガンバに対し、空いた背後のスペースを積極的に突くことで、チャンスも作ることができていた。この時点で、自陣と敵陣を行ったり来たりする構図となり、いわゆるオープンな展開となっていた。


この状況下で息を吹き返したのは、井手口陽介だった。あまり動き回らず、中央のスペースをしっかりと埋められる遠藤保仁が入ったことで、相方の井手口は積極的に前に出てボールを狩ることができるようになったことは、ガンバの攻勢をより強める一因となった。


ボールを奪った後は、右サイドにパトリック、左サイドにアデミウソンを配置し、独力でボールを運ぶ力を持った選手に預けてのカウンターが攻め手であり、これはかなり有効な手法となっていた。

オフサイドでノーゴールとなったものの、75分に右サイドを抜け出した遠藤保仁のクロスからパトリックにヘッドを沈められたシーンは、オフサイドを取れたのがラッキーと捉えられるほど危機的なものだった。相変わらず、プレッシャーがかかっていないにも関わらず、DFラインを闇雲に上げてしまう癖は抜けていない。

目下、致命傷になりかねないマリノスの守備面の最大の弱点と言っても良い。できるだけ早いうちに策を講じねばならない。



【エリキのポジショニング】


名古屋戦のエリキは、攻守ともにフリーダムで、結果は出したもののフィットしているとは到底言えないパフォーマンスであった。

しかし、この試合では、いくつかの改善が見られた。その中でも、攻撃面にスポットを当てて考察してみたいと思う。

この日のエリキには、マリノスのウイングに求められる動きを着実に体得している、その成長過程を見ることができた。それは、主にポジショニングについてである。

アタッキングサードの崩しの局面において、すぐにゴール前に入っていくのではなく、右サイドで幅を取るタスクをしっかりとこなした。その甲斐もあって、左サイドでボールを受けた扇原からのサイドチェンジを受けるなど、ガンバの中盤を横にスライドさせて疲弊させるというチームの戦術に大きく貢献した。


また、これは現地で見ていて気づいたことであるが、試合中に何度も広瀬のポジションをチェックし、指示を送り合うなどしてコミュニケーションを取り、自分がいるべきポジションを探る作業を繰り返していた。広瀬がハーフスペースに位置する時にはエリキが大外、広瀬が大外に位置する時にはエリキがハーフスペース、というような具合である。

試合の中でのこうした確認作業の一つひとつがエリキをフィットさせる。こうしたポジショニング以外にも守備面等他の課題は山積みだが、そのような課題も試合を重ねるごとに必ず改善されるだろう。




8/31(土)19:00 J1第25節 横浜3-1G大阪

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