見出し画像

2020J1第33節 横浜F・マリノスvs名古屋グランパス@日産ス

ボロボロの大阪・秋の陣から中3日、チームは見事なリバウンドメンタリティを見せてくれました。

上位を争う名古屋を相手に2-1での勝利。内容を見ても、チームがやりたいこと、これまで積み上げてきたことを発揮することができていました。この素晴らしい試合を早速振り返っていきましょう。

今回のテーマは、”原点回帰”です。巡り巡ってここに帰ってきたかという感じですかね。配置とボールの動かし方の両面について述べつつ、精密な名古屋のプレッシングに対してどうビルドアップを行なっていたか、という具体的な攻防の部分にも触れていきたいと思います。

構成は以下の通りです。

⑴配置の原点回帰
⑵ビルドアップをめぐる攻防
⑶まとめ・考察

では、始めます。

【Starting Lineup】

■横浜F・マリノス
 ◇基本システムは4-2-1-3
 ◇前節からスタメン8人変更(朴、小池、渡辺、和田、天野、水沼、松田、エジガル)
 ◇前節から中3日
■名古屋グランパス
 ◇基本システムは4-2-3-1
 ◇前節からスタメン2人変更
 ◇前節から中2日

【配置の原点回帰】

では、早速配置の面での原点回帰について述べていきます。

回帰のポイントは主に2つあります。
一つは「幅取り役」でもう一つは「偽サイドバック」です。そして、これらは密接に関連しています。

9月に3バックを導入し始めて以降は、ウイングバック、ないしはサイドバックが幅を取っていました。これは、大外よりも内側で活きるエリキやマルコスを前線で使いたかったからです。

翻ってこの試合では、松田詠太郎と水沼宏太の両ウイングが幅を取っていました。それに伴い、サイドバックの小池と松原が内側に入っていました。

そもそもなぜこの変更をしたのでしょうか。

それは、使う選手の特徴を活かすことを考えての部分が大きいと考えます。というのも、この試合で先発した松田と水沼は両名とも内側よりも大外で活きるプレイヤーだからです。松田は大外からの仕掛けが得意な選手ですし、水沼は大外からの精密なクロスによってチャンスメイクをすることに長けた選手です。

ウイングだけではありません。この試合で逆足ながら左サイドバックのポジションで起用された小池についても同じことが言えます。逆足のサイドバックを大外に置いたところで縦への突破ができないわけですから、それなら内側に置いて"偽サイドバック"させた方が小池にとってもプレーしやすいですよね。

まとめると、起用する選手の特徴・強みを最大限に活かすことを考えて、現実的な路線でこの配置にしたというのが真相だと私は考えます。

【ビルドアップをめぐる攻防】

大前提として名古屋はリーグでも指折りのプレッシングの強度を誇るチームです。特にボランチの2人、米本と稲垣は対人に強みがあり、彼らのところを突破しなければボールを前に運べません。

前回対戦時もマリノスは名古屋のプレッシングに大変な苦労をし、そこから失点を喫して敗れています。

立ちはだかる課題として、名古屋のプレッシングを回避しなければ勝つことはできないのです。

では、この試合のビルドアップはどうだったのか。結論から言うと、うまく前進できていた場面が非常に多かったです。名古屋の側に連戦による疲労が色濃く見えたことは大きな要素としてありましたが。

キーマンはトップ下に入った天野でした。噛み合わせ上ライン間で浮く彼の動きによってマリノスのビルドアップが安定するかどうかが懸かっているわけですが、彼はその才覚を遺憾なく発揮してくれました。

上図に示した通りですが、彼が相手のボランチにもCBにも捕まらないように適切なタイミングでサイドに流れることで、うまくプレッシングを回避することができていました。「天野存するところに数的優位あり」というわけです。

また天野が素晴らしかったのは、ボールを受けるためにむやみやたらに後方に降りてこなかったこと。常に相手のDF-MFラインの間のスペースを横に移動することで、名古屋にとって嫌な位置に居続けましたし、攻撃に厚みをもたらす存在であり続けました。

ほんと、あとはゴールだけ取ってくれたら完璧だったのに・・・。笑

もう一つ論点を挙げるとすると、渡辺皓太のポジショニングです。ボール保持時は敵陣ライン間に位置していました。前述した天野がサイドに流れる動きに呼応してライン間に顔を出すことで、前線の人数を確保し、攻撃に厚みをもたらす役割をこなしてくれていました。

天野が流れたサイドで起点を作ってそこから逆サイドに展開する際、とてもスムーズにボールを動かすことができていたのは、渡辺の"地味な"ポジショニングの妙があってこそなのです。

【まとめ・考察】

論点をまとめると以下の通りになります。

■配置について
 ◇使う選手の能力最大化するための現実的な全体配置
  ✓ウイングが幅を取る
  ⇒水沼・松田の特徴・強みを活かすため
  ✓偽サイドバック
  ⇒逆足の小池がプレーしやすいから
■ビルドアップについて
 ◇名古屋は4-4-2の形でプレッシング
 ◇キーマンは天野純
  ✓タイミングよくサイドに流れて逃げ道つくる
  ✓ライン間を横移動
   - むやみに降りてこないことのすばらしさ
  ✓呼応して前へ出ていく渡辺皓太

さて、今回のレビューは"原点回帰"がテーマでした。しかしそれと同時に、形式上は原点回帰をしながらもチームの進化も見て取れました。
例えばビルドアップにおけるポジショニングを挙げましょう。同じ4-2-1-3のシステムを採用していた時でも、以前は選手が動きすぎるあまりパスコースがなくなってしまいビルドアップが詰んでしまう場面を我々は何度も目にしてきました。
その後3バックを導入し、選手が大きく動かずともボールを前進させる経験を積んだことで、4-2-1-3を採用しても静的な配置を保ったままボールを前進させることができるようになっていました。

たとえ静的な配置のままボールを失っても、バランスを保てていればカウンターのリスクを減じさせることにも繋がるので、この変化・成長は守備面の安定をもたらすと考えられます。

ただの原点回帰ではなく、着実な成長を伴ってこの場所に帰ってきたのです。

様々な経験を積んで成長する。「チームは生き物」とよく言われますが、まさにその通りだと思います。

次の試合ではどんな配置でどんなサッカーを見せてくれるか、それは相手チームにも予想がつかない。紆余曲折を経てこのチームは在るべき場所に、底知れぬポテンシャルを持って戻りつつあるのです。

10/21 Wed. J1第33節 横浜2-1名古屋

いいなと思ったら応援しよう!