#INTEGRAL_CAM Variation展 解説記事
suzuki_ithさんの「Gallery 2718702a」の2階をお借りして行った企画展「#INTEGRAL_CAM Variation展」の解説記事を書いていきたいと思います
Gallery 2718702aのワールドはこちら!
展示概要
今回の展示では、私が2023年5月から2024年6月頃までの約1年間にわたり、Integralカメラで撮影した写真を展示しています。
展示の目的としては、Integralカメラでこんな写真が撮れるんだよというサンプルを紹介したかったこと、そしてさまざまな機能が追加される中で、写真がどのように変化していったかをお見せしたかったという点があります。
タイトルの「Variation」は、Integralカメラで撮れる写真のバリエーションの多さと、機能の追加に伴い“変化”していった写真を表現するために名付けました。
展示写真解説
展示してる写真について詳しく解説していきたいと思います。
Integralカメラのわからない言葉が沢山出てくるかもしれないので以前書いた記事も乗せておきます。
ただこちらの記事は2024年の1月に書かれたものなのでローリングシャッター以降の機能の解説はないのでご注意ください…!
DrivingCity at Night By amesake
Integralカメラでは長時間露光が可能だと聞き、現実でいうスローシャッターのような写真を撮ってみたいと思い試した写真です。
カメラを固定し、実際に車を運転しながら撮影してみたのですが、VRChatのFPSでは光源の移動が早すぎると光が線ではなく点で表示されてしまうことに気づきました。
そのためこの車は歩くよりも遅い速度で移動させて撮影しています。
まず停止状態で車の像を綺麗に撮った後、ゆっくりバックすることで光跡を綺麗に撮影できました。
Explosion dismantling By 50chiffon
自分のお気に入りの写真集に、畠山直哉氏の「BLAST」という発破の瞬間を撮影したシリーズがあります。
いつか自分もスローシャッターで破壊の瞬間を撮ってみたいと思っていたので、さまざまなものを破壊できるワールドで撮影しました。
ただ近くで撮影すると、火花や破片が飛ぶ速度が早すぎて綺麗に撮れないことがわかりました。
そこで破壊地点から少し離れ、フレンドにワールドにある自走砲を撃ってもらいその瞬間を撮影しました。
結果として破壊がメインではありませんが砲撃する瞬間のブレを撮ることが出来ました。
Juno․ By Meiji
これは軸上色収差(Axial Chromatic Aberration)の機能を使えば、光源の縁や雨の部分が虹色に見えることに気づき、それを撮影しようとしたものです。
ただ長時間露光の途中で誤ってフォーカスポイントをずらしてしまい、ピントがずれて街灯がブレてしまったのですが、その際に色収差の虹色だけが残ることに気づき、まるでオールドレンズのゴーストやフレアのようでかっこいいなと思い撮影しました。
このブレを活かして色収差だけを抜き出した写真を撮るきっかけになった一枚です。
Absent By yo-guruto
この頃になってやっとIntegralの被写界深度(ボケ)に慣れてきて撮った写真です。
Integralは思ったよりボケる印象があり、Apertureをあまり上げずに撮影しています。
Integralは他のカメラアセットとは違い、ピントが合っていない部分をブレさせることでボケを作り出しています。
そのボケの滑らかさと、軸上色収差によるノイズが合わさることで、空気感のようなものを捉えられたのではないかと思います。
Labyrinth By rokumori_
このワールドを歩いていた時、ふと空を見上げた瞬間の視点がとても良かったので、その場でさっと撮影しました。
あまり手持ちでの撮影はしていなかったのですが、ここらへんからIntegralカメラを手持ちで持ちながらワールドをうろちょろすることにハマっていきました。
Phatta By Sumeru
口径食(Vignetting)を使い露光時間を短めで撮ると写真に波紋の様な模様が残る事に気づき、これによって光が段階的に暗くなっていく感じが撮れた写真です。
これにより手持ち+短時間露光で撮影することが増えていきました。
月も色収差で光漏れのような感じになっておりお気に入りです。
Northern Night Remastered By Rusty Beans
この写真を撮る少し前に、カメラをぐるぐる動かしながら打ち上げ花火を撮影するというのをやっており、Integralカメラでも手持ちで回しながら撮れば面白いのでは?と思い、撮った写真です。
森の中で空を見上げ、雷が落ちる瞬間にカメラを回転させているのですが、最初は全然うまくいかず、森を駆け回りながら必死にカメラをぐるぐる回しながら撮影しました。
Silver and You By phi16
この写真は、まずこのワールドに行ってもらわないとよく伝わらないと思うので行きましょう。
とても綺麗な銀髪があります。
VRChatのアバターではなかなか表現できない髪が流れる感じをどうしても撮りたくて、このワールドに行き手でさらさらと流しているところを撮りました。
銀髪最高!
[JP] the bike shed on a rainy day By tar_bin
Integralカメラでアバターの写真が撮れないかと試行錯誤していた時の写真です。
長露光だとどうしても顔がブレてしまうので、振り向いて顔を止めた瞬間に短い露光時間で撮って、髪だけ揺らして撮影しました。
今ならAvatarPoseSystemがあるので、もっと綺麗に髪だけ揺らして撮れるはず…!
Pepiement By puri_san
自分はロケットの打ち上げ写真がとても好きなのですが、VRChatでも撮れないかと考えたところ、打ち上げ花火がいいのではと思いつき撮影しました。最初は手持ちで撮っていたのですが、近すぎて火花と軌道が綺麗に撮れず、完全に引きでカメラを固定して何度も打ち上げて撮影しました。
Stabilizer By uk2
ローリングシャッター機能が追加され、アレコレ試していた時の写真です。
画面を任意の方向から読み取っていくような挙動をするのですが、その際Apertureを入れると、ピントを合わせた場所以外の画面がブレているため、ずれて表示されます。
また口径食を入れておくと、こういう黒い線が入ることがわかり、それを使って撮影しました。
ブロックノイズのようなものが加工とかせずそのまま撮れるのが結構衝撃でここからどんな使い方ができるかあれこれ考えていくことになります。
NeoWorlds By Widget365
このワールドも実際に行っていただきたいのですが、古のMMOのようにディスプレイ上で自分のアバターが動いている様に見えるワールドです。
ここでさっきのローリングシャッター機能を使えば面白いんじゃないかと思い、バグったゲーム画面のような写真が撮れました。
VRChatのカメラなんだからリアルのカメラとは違うことができてもいいじゃんという気づきを得た写真です。
Blackwater By honeyjinsang
これもローリングシャッター機能とApertureのブレを使って撮影しました。湖の中に木が立っているのですが、それをバラバラと散っていく様に撮れて、それが人が塵になっていくように見え、グリッチみたいなのだけでなくこういう表現もできるんだなと思いました。
The place where the canon reverberates - カノンが響き渡る場所 By katsuhiko_gfmd
IntegralカメラのApertureの範囲が拡大し、F値を0.004まで下げられるようになりました。
これによりドローンで高高度からF値を下げて建物を撮影すると、ジオラマ撮影のような写真が撮れるようになりました。
この電車と駅も小さく写っている人と比較すると、結構な大きさがあるのですがジオラマのように撮影することによって、ワールドで感じた寂しさや侘しさを表現できたかと思います。
Event Horizon By⠀
Integralカメラのアスペクト比が変更できるようになり、ちょうどVR PHOTO EXHIBITION 2の為に1:1のスクエアの写真が必要でその流れで撮った写真です。
このワールドはブラックホールがあるのですが、それを拡大しローリングシャッター機能で読み取りスクエアで切り撮ることで、惑星の表面のような模様になりました。
流れと色があるだけの写真なのですが、これでも結構成立するんだなぁと思いました。
TOKYO MOOD by BEAMS By BEAMS_STAFF_1
TOKYO MOODフォトコンに参加した時の写真です。
夜の街を撮った時の記憶を辿り、人のいる街を表現するにはどうするのがいいだろう…?と悩んでいた時にフレンドに別のカメラアセットのInstantCameraを勧められ、これで撮影すれば街撮りの雰囲気が出るだろうと試したのですが、どうしても人が行き交う喧騒を表現するために人間のブレや、ノイズや看板等の白飛びしてる感じが欲しかったのでIntegralカメラに切り替えて撮影しました。
終わった世界の降り落ちる涙滴で By ポケット
Spherical Aberration(球面収差)によるソフトフォーカスが追加され、写真を滲ませることができるようになったので、霧の濃いワールドで撮りました。
よく見ると、真ん中の下あたりに人がいるのですが、霧でほぼわからないようになっています。
全体的にぼやっと写っていて、奥に空間があることしかわからない、不明瞭な感じが出せるようになりました。
最後に
Integralカメラは他のカメラアセットより使いやすいとはなかなか言えないのですが、機能が多様でとても試行錯誤が楽しく、思いも寄らない写真を生み出すことができるカメラです。
今回の展示写真も、リアルな機能や現象の再現と、それを使って新しい写真が撮れないかと試行錯誤した結果と偶然によって撮れたものばかりです。
またIntegralカメラを1年以上使ってはっきりくっきり綺麗に撮るだけが写真ではなく、もっと色々な選択肢があるんだということに気づけたのも大きかったです。
ぜひ皆さんもIntegralカメラで色んな写真を撮っていただけたらと思います。
Integralカメラはスズ製作所にて好評発売中!!!
またサンプルアバターや使い方が書かれたワールドがありますのでこちらで試して頂けたらと思います。
自分の撮ったIntegralの写真をこちらにまとめてありますので参考にしていただけたら…
最後にもう1回載せるのですが今回の記事を見てIntegralカメラ触って見たいと思った方はこちらの記事に使い方や用語解説、一部の写真の撮影時のパラメータなど書いてあるのでこれを見ながら試して頂ければと思います!