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ロックばかり聴いてきたおじさんが性加害問題を機にアイドルについて考えてみた

先週9月7日に、ジャニー喜多川の性加害の問題でジャニーズ事務所が記者会見を開き、4時間以上にわたって質疑応答に応じました。

その内容については、すでにあらゆる媒体や一般人の間でも色々な意見が出ていますので、この記事ではあらためて詳細は触れません。

ここではタイトル通り、アイドルに疎いおじさん(私)が、ジャニーズ性加害問題を機に、アイドルについて少し真剣に考えてみた内容を書かせていただきたいと思います。

私は普段、主に洋楽・邦楽のロックに関する記事を投稿しているのですが、これまでの54年の人生でいわゆる「アイドル」にハマった経験が一度もありません。

小学3年生の頃にピンクレディーが大流行し、中学生の頃には松田聖子・中森明菜・たのきんトリオなどの80’Sアイドルが時代を作りました。その後もシブがき隊・少年隊・光GENJI・おニャン子クラブ・小泉今日子・森高千里・モーニング娘・AKB48等々がそれぞれの時代を彩りました。

私のようなUKロックとかオルタナティブ・ロックばかり聴いてきたような偏屈な音楽ファンでも、特に考え込まなくてもこれだけすらすらとアイドル達の名前が出てくるというのは、それだけ「日本のアイドル」というものが、生活に密着した身近な存在である事を示していると思います。

ジャニーズ事務所の性加害問題では、同事務所に所属する男性タレント達に対しても「権力にすり寄って犯罪行為を黙認した共犯者なのではないか?」と責任意識やその姿勢を問う声も少なく無く、本件は「日本のアイドル輩出システム」の根幹を揺るがしかねない問題にまで発展しています。

冒頭に述べましたとおり、私個人はアイドルに夢中になった経験が無いので、ジャニーズ事務所の性加害問題には子を持つ親として強い関心があるものの、「アイドルとはこうあるべきだ」とか「アイドル育成の仕組みはどうあるべきか」というようなテーマで何か論じられる程の知識や主義主張を持っていません。

ただ、そんな私でも、一度だけアイドルの魅力といいますか、「凄み」を強烈に体感した事があります。

それは2006年に国立競技場で開催されたSMAPのライブでした。私はその当時、SMAPについては「テレビの力で売れているタレント」という程度のイメージしか持っておらず全く関心がなかったのですが、当時結婚前の妻がたまたま何処からか二人分だけチケットを入手したので、「まぁ暇つぶしで行ってみっか」程度のノリで参加しました。

そのSMAPのライブを体験した感想なのですが、これは誇張でもなんでもなく、生涯見たライブのベスト10に入る位の衝撃でした。とにかくオープニングからエンディングまで、徹頭徹尾エンターテインメントで「来た観客を100%楽しませる」という気概が5人のメンバーからひしひしと伝わってくるパフォーマンスでした。

特に今でもよく覚えている光景があります。ライブの後半で移動式のゴンドラに乗ってメンバーが場内を周遊する仕掛けがあったのですが、たまたま私達の席の割と近くに中居正広のゴンドラが近づいてきたので、私はなんとなく彼の表情と動作を観察していました。その時、彼はカメラで抜かれていた訳でもないのに、ファンに向かってまっすぐ真剣な眼差しで、全身を使って手を振り続けていました。「まぁこんなもんでいいだろう」というような手抜き感など微塵も感じられないその姿に、ミック・ジャガーやマイケル・ジャクソンにも通じる凄みすら感じました。この日、私の中で「この人たちは本気でアイドルをやっているんだ」と、SMAPに対する認識が180度ひっくり返りました。

今後、あの時のSMAPのような「アイドルとしての生き方に殉じる」タレントを本気で目指そうという人材が、もしジャニーズ事務所の性加害問題によって必要以上に委縮してしまう事があるとしたら、それはそれでとても大きな損失だと思います。

個人的には今回ジャニーズ事務所が発表した対応内容は、現時点ではとても不十分な内容であり、問題の本質が見えていない(見ようとしていない)姿勢には、前途多難な印象を持っています。

さらにいえば、テレビ・新聞・雑誌などのマス・メディア、広告代理店、スポンサー企業、そしてアイドルを下支えするファンは、この件をジャニーズ事務所固有の問題として矮小化せず、それぞれの立場で性加害含め、業界の既得権益者の延命を許すような構造を見直すための動きをしていく必要があると思います。

これまでの幾多のゴシップと同じように一過性の話題として消費・風化させてしまっては、「日本のアイドル」は衰退に向かって一気に加速してしまうような気がしてなりません。

(おわり)




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