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97年にオアシスをロンドンで観た話(80~90年代ロック放談その2)

この投稿は、80~90年代の洋楽・邦楽を偏愛する筆者の、極私的音楽体験をつらつらと書き綴る内容です。
あまり理屈っぽい内容にはしたくないので、「架空の対談形式」でお届けします。

●対談するひとたち
ロックさん
推定年齢50歳前後。筆者の分身。音楽文化が栄華を極めた80~90年代に青春時代を過ごした。音楽が彼の人格形成や物事の考え方に多大な影響を及ぼしている。
最近、加齢のため記憶が曖昧な事が多い。その割に若いころの記憶についてはときどき妙に鮮明に覚えていたりで、家族や周囲の人を微妙に困らせている。

ロールくん
推定年齢30歳前後。筆者の空想上の音楽友だち。Apple MusicやSpotifyを使いこなし、洋楽・邦楽・年代を問わず、幅広いジャンルの音楽ファン。80~90年代の音楽への興味が強い。最近レコードの収集に熱意を持ち始めた。

※「オアシス初来日ライブ」の思い出(80~90年代ロック放談その1)
からの続きです。

ロールくん
「前回はロックさんがオアシスがどうしても観たくなって、ロンドンへ行くところで終わったんでしたね。」

ロックさん
「まぁ、追っかけという程の話ではないんだけどね。97年9月だったかな。
でも初めての一人ぼっちの海外旅行で。
当然、スマホもまだ無い時代で、今みたいにとりあえず行ってみて後はGoogleさんに導いてもらうという訳にも行かなかったからねぇ。
不安だったなぁ。
地球の歩き方(*注1)に事前にたくさんマーカー引いてね。
電車の乗り方、道順、ご飯の頼み方とか、とにかく予習を重ねて。」

ロールくん
「準備が大変だったわけですね。ちょっと想像つかないです。」

ロックさん
「でも、苦労したせいか、旅行の道中に起きた事をすごく鮮明に覚えているんだよねー。
最近は旅行でも何でも、先週の出来事すらロクに思い出せないもんね。」

ロールくん
「それは単に歳のせいかと…」

ロックさん
「まぁとにかく必死に頑張って、なんとかライブ会場に辿り着きましたよ。
アールズコート(*注2)という場所だったんだけど、ライブビデオとかで憧れを持っていた海外のライブ会場とイメージが違って、体育館みたいなところで。
開場する際、外に列ができてたから並んでたんだけど、もうそこから客がすごい騒いでいるわけ。サッカーの応援歌?「Oh-Oh-OhOhOh~~!! WowWowWow~~~!!!」みたいなのを合唱してて。みんな目が座っていて、怖いんだよ(笑)。これが噂に聞いたフーリガンかな、と。」

ロックさんが写ルンですで撮影した会場外の様子。ノエル・ギャラガーさんの巨大パネルが怖い。


ロールくん「よく一人で行きましたね….」

ロックさん
「で、会場入りしたら、床がなぜか濡れてびしょびしょなのね。
なんだコレは?と思ったら、あちこちで客が酔っ払っていて、ビールをブチまけていて、酒臭いのなんの。」

ロールくん
「音楽を楽しむという環境ではないですね。」

ロックさん
「まぁでも、それも文化の違いで、振り返ると貴重な体験だったね。」

ロールくん
「肝心のライブの方はどうでした?」

ロックさん
「言い忘れたけど、そのライブは3枚目の『ビィ・ヒア・ナウ』のリリース直後のライブだったんだよね。


だから、それは盛り上がったし最高だった…と言いたいところなんだけど、実はあまりオアシスの演奏は良くなかったんだよね。」

ロールくん
「えー、そうなんですか?」

ロックさん
「何年か後に色々と記事を読んで知ったんだけど、あまりに急激に大成功してしまったので、バンドメンバー全員、ちょっとおかしくなっていたみたいね。
酒とドラッグと女、みたいな。ありがちな話だけど。
ノエルもリアムも、変なテンションなんだよ。意味も無く叫んだり、マイクスタンド叩きつけたり。
客の方も、例のシンガロングというのかな、どの曲も大合唱なんだけど、どっちかというと一緒に騒いでいるだけみたいな殺伐とした感じで。
ん-、そういう意味ではオアシスだけでなくファンの方も、時期的におかしくなってたのかもね。
なので、前回話した、渋谷クラブクアトロで観た、垢抜けないんだけど一心不乱に音楽やっていたあのオアシスからだいぶ変わってしまって、戸惑ったねぇ。」

ロールくん
「へー。でもある意味、イメージ通りという感じですけどね。」

ロックさん
「実はオープンニングアクトがザ・ヴァーヴ(*注3)だったんだよね。
ザ・ヴァーヴの名前は、なんとなく聞いた事あるなぁくらいの感じだったんだけど、振り返るとザ・ヴァーヴの演奏の方が印象に残っているよ。
後にUKロックの歴史に残る名曲になるんだけど、
『ビター・スウィート・シンフォニー』をその時初めて聴いたんだよ。

イントロのストリングス、ライブではシンセサイザー音源だと思うけど、あれが始まった瞬間、それまでビール飲んで大騒ぎしてた客がピタって静かになって。
で、曲が終わる頃には、なんというか、波がうねるような?「ざわわーん」みたいな歓声が起きてねぇ。あれは鳥肌が立ったなぁ。」

ロールくん
「へぇぇ。その曲は知らないです。今度サブスクで聴いてみますよ。」

盛り上がるロンドンのオアシス・ファン酔っ払い達。ロックさん撮影。

ロックさん
「なので、今回の話は、
『オアシスを追っかけてロンドンまで行ったはいいけど、結局ザ・ヴァーヴしか印象に残らなかったよーん』
という悲しいオチですな….」

ロールくん
「でもいいですね。やっぱり音楽も部屋に籠って聴くだけじゃダメですね。
僕も海外ライブに行ってみたくなりましたよ。」

ロックさん
「コロナも一応落ち着いたし、若いうちは思いついた時に、後先考えずにやってみるのもいいと思うよ。
歳とると、金も気力も時間も無くなる一方だからねぇ….」

ロールくん
「金も気力も時間もロックさん自身に原因があるだけだと思いますけど….
とにかく貴重なお話をありがとうございました。」

*注1…旅行ガイドブック。1979年創刊。世界各地を紹介する旅行ガイドブックが計100タイトル以上も販売されている。
*注2…正式名称はアールズ・コート・エキシビション・センター。レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドのライブが行われた会場としても有名。2014年12月13日に閉鎖。2016年までに建物はすべて解体された。
*注3…イギリスのロックバンド。1997年発表の3枚目のアルバム『アーバン・ヒムス』は14週連続で全英チャートの1位を独占。

●おまけ

言わずと知れた『アビーロード』の、あの横断歩道を意気揚々と渡る、観光客丸出しのロックさん。

次回の「80~90年代ロック放談その3」に続く。

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