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Osiah / Loss (2021)〜UK発の脳筋デスコア〜

UK出身デスコアバンド、2年振り通算3枚目のフルアルバム。

元々Humanty DepravedのボーカルRicky Lee Roperのソロプロジェクトとして始まったバンドで、レーベルと契約する前に『Reborn Through Hate』というEPを出している。

サウンドプロダクションはさておき、これが中々ハイクオリティーだったんで、メンバーを揃えてフルバンド化したのは嬉しかった。当時の記憶ではこのEPはフィジカル化はしてなかった気がする。

改めてSpotifyを開くと1曲追加して再リリースされていて、収録時間29分とアルバムとして考えても良いような感じになってる。
せっかくUnique Leaderと契約したんだから、リダックス盤なり再発盤なり作ってくれることを切に願う。

さてこのバンド、UKのバンドとしては珍しくオーソドックスなデスコアサウンドを鳴らす。

UKはブルデス寄りのIngestedや、テクデス系のTrigger the Bloodshed、変態テクニカルデスコアInfant Annihilator、最近だとドゥーミーなサウンドが特徴のBound In Fearなど、割と変わり種が多い国。Acraniaもイギリスか。

上記のメンツを見るとこのOsiahは少し地味に感じるけど、作品を重ねる毎に着実なレベルアップを果たしていて実に素晴らしい。

元々Rickyは1人でプログラミングからギター、ベース、ボーカルをこなす多彩な人だったけど、Human Depravedからの盟友Chris Keepin、最近ベースからギターに転向したAndy MallabyはテクニカルデスコアバンドNexilvaでも活動してたから、メンツ的にはかなりすごいんだよね。

ちなみにNexilva(解散済み)のボーカルはGaz Kingで、現From Sorrow To Sernityのフロントマン、そしてFSTSにはBleed From WithinのギタリストSteven Jonesが在籍。

実際GazはOsiahのデビューアルバムで友情出演してるしね。

そんな豪華メンツのOsiah、前作では緩急の使い分けが巧みになって一皮剥けた感があったけど、今作でもその路線は概ね踏襲。

ドラムが安定しないバンドでそこが唯一不安な点ではあるんだけど、何故かアルバム単位で見るとその点はしっかりクリアしてるんだよね。

プロダクションはさらに向上した印象で、よりUnique Leaderらしいかっちりとしたサウンドへと変貌を遂げている。このクリアさが冷徹さを感じるような空気感を演出していて、機械的な刻みやダウンテンポパートでの破壊力が増大。ギターは暗く陰鬱なメロディー成分が少し増えたかな。ブラッケンドデスコアとまでは言わないものの、ブラックメタルからの影響を少し感じる。

不気味なイントロ#1「Realm of Misery」から#2「The Second Low」へ。高音メロディーを奏でるブラッケンドなギターと細やかな刻みが今作の傾向を象徴してるね。前作までの良さは残しつつメロディーも取り入れてきたのが大きな違いか。元々リズム隊や刻みが正確無比だったこともあり、冷ややかなメロディーとの相性は抜群。

#3「Paracusia」は序盤からザクザクと切り込んでいく残忍なリフからアグレッシブなグルーヴパートへ移行。1分ほどでスマートにブレイクダウンを挟んでメリハリを付けた後はデスメタリックな疾走を見せて再び落とし込む。リフもパート毎に変化させていて起伏がある。

#4「Queen of Sorrow」はブラックメタルのようにカラッとした高音ギターからフェードイン、ダウナーな曲かと思ったら突発的な爆走へと転じる。やはり所々でメロディーが顔を出し、荘厳な空気感になる。正確無比な刻みとのバランス感が絶妙。
というかRickyのパフォーマンスもさらに向上してて、グロウルやガテラルはもちろん、ミドルのスクリームやハイピッチ、下劣系ボイスまで巧みに操っている。“Insane Vocalist”みたいな動画では全く取り上げられないけど、彼相当凄いと思うんだけどな。

#5「Temporal Punishment」はテクニカルなリフの応酬とバスドラで音圧を上げてゴリゴリと攻め立てる。筋肉質で硬派なデスコアサウンドだからThy Art Is Murderとかが好きな人にも薦めたい。

アルバムタイトルトラック#6「Loss」は冷たいアルペジオを纏いながらブルドーザーのようなエグい攻撃性を爆発させる。刻みのバックでしっかり印象的なリフが曲を彩るのは相変わらずセンス良いね。ブラックメタル的な爆走を経てIngestedのJason Evansが客演、のはずなんだけど曲に合わせてか声質がかなり似てて聴き分けがつかない。

#7「Terracide Compulsion」はテクニカルなリフがメインの楽曲。戦車みたいな爆走はしっかりとあるものの、結構メロディックな楽曲に仕上がってて面白い。最後はギャングスタイルの煽りを入れてブレイクダウン。

#8「The Eye of the Swarm」はチャぐいノイズがジャキジャキと唸りながら爆走へ。Shadow of IntentのBen Duerrがディープな早口グロウルを聴かせて曲を引き締める。

#9「War Within Walls」は瞬発力の高いドラミングがえげつない。こういう瞬間的な攻撃力があるからこそダウンテンポパートが活きてくる。その黄金式をそのままなぞった優等生的な曲。

#10「The Omninous Mind(Jaded Inside)」は不穏なメロディーの中悪魔的なボーカルを聴かせ、一気にバウンシーなパートへ。ボーカルもメロディーを追って悲痛な叫びを聴かせる。やはりブラックメタルからの影響が強いな本作は。

#11「Celer Et Audax」はミドルグルーヴ主体のデスコアナンバー。突発的な爆走をスパッと取り入れて攻撃性を高めているけど、粘り気のあるリフや少しダウナーな展開はニューメタル的でもある。中盤のリフや展開がナイス。

#12「Echoes」はデスメタル然としたメロディーを主体にお決まりの機械的なグルーヴを絡みつかせて突進する曲。このバンドは音数をかなり詰め込むタイプだけど、本作の中では比較的シンプルかな。

#13「Already Lived」はテクニカルなリフと突進を見せつつプリミティブでシンプルな刻みをさらっと取り入れる。粘り気のあるグルーヴやミニマルなブレイクダウンを挟んで他の曲との差異化を図っている。単純に引き出しが増えたよね。


凄く良いアルバム。
シーン的にももう少し注目されて良いはずなんだけどな。確かに奇をてらうようなことはしてないかもしれないけど、演奏技術やセンスの良さは着実にレベルアップしていて、デスコア好きならドンピシャのアルバムに仕上がってる。

Unique Leaderさん初期作の再発まじでたのんます。

★★★★★







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