Silverstein / Misery Made Me (2022)〜衰えぬメロディーセンスと進化〜
カナダ出身ポストハードコアバンド、2年振り通算10枚目のフルアルバム。
2000年から活動する超ベテランの彼ら。
グッドメロディー+スクリームという現代ポストハードコアの1つの形を20年以上に渡ってやってきたバンドで、今までリリースしたアルバムは世界で100万枚を超えるセールスを記録している。
そもそもキャリア22年で10枚もフルアルバムを出しているという事実も驚きだ。デビューアルバムは2003年ということを考えれば、ほぼ2年に1枚というスパンを完璧に守りながら活動を続けてきたことになる。間には企画盤やEPも挟んでいるから、本当に恐ろしいペースだ。
セールスの変動は若干あるものの、ポストハードコアバンドとして世界中にファンベースを築くことに成功した数少ないバンドだと思う。
前作も素晴らしい出来栄えだったが、本作も裏切らない仕上がりだ。Silversteinは毎回この感想になってしまう。
Shaneのメロディメイカーとしての才能はとっくに臨界点を突破していて、バンドはそれをベースにアルバム内でどんなチャレンジが出来るかを常に模索出来る状態。
かといって惰性で作り続けてるわけじゃなくて、色んなアーティストを客演に迎えたり、ベテランの雰囲気を感じさせない勢いに満ちた作品を続々とリリースしている昨今。
ベースであるグッドメロディー+メタリックポストハードコアという軸がブレない限り、このバンドは成功し続けるだろう。
ほんとこのバンドからは“老い”を感じたことがないんだよね。
彼らを知ったのは実際には2009年リリースの『A Shipwreck In The Sound』からの完全な後追い組で、それからはリアルタイムで聴いてきた。
アルバムのトータル的な流れが1番好きなのはやはり上述した『A Shipwreck In The Sound』なんだけど、本作はそれに肉薄する出来栄えだと思う。
#1「Our Song」はタイトル通り最高のアンセムソング。もはやSUM 41とかそういう雰囲気さえ感じるよ。シニカルな歌詞をポップなメロディーに乗せる最高のオープニング。リダックス盤をリリースした影響なのか、リフが初期の頃のような雰囲気。
#2「Die Alone」はCOMEBACK KIDのAndrew Neufeldがフィーチャー。これがもう完全にカオティックハードコアやっててびっくりした。端々にメロディーはあるんだけどね。
#3「Ultraviolet」はモダナイズされたメタリックサウンドとこれまた最高のメロディーでキラーチューン確定。小細工とかあんまりしないブレイクダウンも潔くて良いね。ってか普通にリフが良いね。
#4「Cold Blood」はTrevor Danielがフィーチャー。落ち着いたアンサンブルから始まるこれも彼ららしい曲だね。こういう曲はラストに持ってくることが多いけど、今回はこの配置。ってかこの2人の歌声最高だなまじで。
#5「It's Over」はチルいアレンジが実験的ではあるものの、メタリックな演奏とアグレッションが絶妙なバランスで構成されている。
ゴリゴリのスクリームで駆け抜ける#6「The Alter/Mary」。やっぱりバンドサウンドが少しカオティックになったか?と思ったらトラップ要素や最近のBMTHみたいな展開を見せるこれまた面白い曲。
#7「Slow Motion」はモダンなエレクトロポストハードコア。粘っこいリフがニューメタル的である。アルバムをトータルで聴くってより、楽曲毎の個性が今作はかなり強い。TDWPのMike Hranicaを迎えてるあたり、最先端のポストハードコアをしっかり抑えてるよなあ。
#8「Don't Wait Up」は太めのベースラインの中キレキレのメロディーを歌い上げる。後半にかけて壮大に展開していくスケールのデカい曲。
#9「Bankrupt」はちょろちょろ顔を出していたカオティック成分とニューメタル要素を散りばめながら、やはりそれをSilverstein風にしちゃってる。前作あたりから音がめちゃくちゃモダンになってるよなあ。
#10「Live Like This」はnothing,nowhereがフィーチャー。この曲がまたメロディーが最高すぎて泣ける。というか客演の迎え方も巧い。無理にコラボしてる感じもしない。ゲスト側の株も上がるよ。
#11「Misery」はアコースティックバラード。で、これがここ最近の作品のラストソングの中で1番好き。
まあ結局このバンドはいつ聴いても最高なんだなと痛感。ここ最近のリリースの中では1番気に入った。
★★★★★