Worm Shepherd / Ritual Hymns(2022)〜暗黒ブラッケンドデスコアの鬼才〜
マサチューセッツ出身ブラッケンドデスコアバンド、1年振り通算2枚目のフルアルバム。2020年結成にも関わらず驚異的なスピードで作品をリリースしているね。
本作でUnique Leader Recordsと契約を果たし、デビュー作も再発されている。
前作『In the Wake Ov Sol』では、ブラッケンドデスコアと基調としながらも、ダウンテンポに特化したサウンドや暗黒ドゥームを感じさせる曲、シンフォニックなアレンジなどデビュー作にしてなかなかの手練れっぷりを見せていた。まあまだ認知度は低いけど今後かなり来るんじゃないかと期待しているバンドだ。
で、非常に短いスパンでリリースされた本作。今回も収録時間50分と長め。短すぎる制作期間でどれほどの作品に仕上がってるのか少々不安があったのも事実。
#1「Ritual Hymns」は壮大なオーケストレーションを大々的にフィーチャーし、じっとりと聴かせるナンバー。相変わらずの極悪ブレイクダウンは最近のバンドの中でも屈指のブルータリティー。ただしブレイクダウンを除けばデスコア要素は低めで、荘厳なシンフォメタルを聞いているような印象を受ける。あれ、雰囲気変わったか?
#2「Ov Sword and Nail」はドッシリとしたベースラインから細やかなデスメタルリフを挟み、爆走へと突入。テクニカルなフレーズが満載のアグレッシブなパートやビートダウンで下劣なガテラルを聴かせるヘヴィネス溢れる曲に仕上がっている。最後のイかれたノイズから暴走する雰囲気は怖さすら感じる。
#3「The Ravens Keep」は呪詛のようなボーカルからスタートし、前作とは趣きの異なるリフが登場。爆走パートは変わらずアグレッシブなんだけど、リフが粘っこくて前作でチラ見せした暗黒面が際立つ。この手のバンドでUlcerate系の音を使うバンドって少ないから、これはかなり個性が強い。
#4「Chalice Ov Rebirth」は初手からシンフォニックな装飾とともに爆走、これまたじっとりズッシリと聴かせる展開へ突入。しかし前作では控えめだったギターがテクニカルなフレーズを多用するようになってて、暗黒面のドス黒さと良い塩梅で混ざり合ってる。
7分越えの大曲#5「Blood Kingdom」。スリリングなリフが満載でこれは素晴らしい。Mental CrueltyのLucca(飛んだけど)やZxyvixsを客演に迎えて非常に豪華な曲。ドゥーミーな要素だけフォーカスされたら少し退屈になるかもしれないなと思ってたんだけど、むしろリフとか展開は前作より練られてる。
#6「Wilted Moon」は前作の雰囲気を引き継いだブラッケンドな爆走にテクニカルなデスメタルリフが小気味良く鳴り響く。前作はダウンテンポに落とし込んでブルータリティーを維持していた印象だけど、本作は楽器隊の成長著しく、爆走とテクニカルな演奏が目立つようになった。この曲の後半の展開とか素晴らしいよ。
#7「A Bird in the Dusk」も6分越えの長尺。前作のレビューでチラッと名前出したけど元祖ブラッケンドデスコアと言ってもいいCarnifexからScottがフィーチャーしている。シンフォ満載の爆走からトリッキーなプレイで魅せるギターがアグレッシブ。ボーカルに埋もれがちだった前作から大幅に改善。気が狂ったように落とし込んでいく様は圧巻。
#8「The River Ov Knives」は陰湿なクリーンとスクリームの掛け合いから始まる曲で、前作のラストトラックみたいな方向性。やっぱりメンバーは暗黒デスメタルが好きなんだと思う。アトモスフェリックな空気がたまらなく良いね。
キャリア最長の#9「Winter Sun」は序盤からテクニカルなギターが冴え渡る。やっぱり本作の傾向として、シンフォ要素やボーカルのエグみに楽器隊が負けてない。中盤からはむしろギターや爆裂ドラミングが曲をぐいぐい引っ張っていくじゃないか。
前作も良かったけど、今作ではギターの成長が著しいね。Ulcerate系の音を鳴らすデスコアってあまり聞かないし、持ち合わせてる個性も十分だと思う。
これからのブラッケンドデスコアシーンを牽引していける実力のあるバンドだ。
★★★★★