Chelsea Grin / Suffer in Hell, Suffer in Heaven (2022-2023)
ユタ州出身デスコアバンド4年振り、連作となる通算6.7枚目のアルバム。
元Lorna ShoreのTomが事実上引き抜かれてAlexの後釜を務めているややこしいバンドである。CGに限らずデスコア界隈はいつもこの手の話題で賑やかだが。
ダウンテンポデスコアの頂点に君臨するバンドだが、Jason Richardsonが参加していた『Ashes to Ashes』から徐々に人気は落としている。まああの頃は界隈も随分と賑わっていたしね。
トリプルギターで獰猛性を剥き出しにしていた初期やJason加入時のプログレ感は薄れている。とはいえダウンテンポというジャンルから色々飛躍してやってきた彼らだし、今ぐらいがちょうど良いのかもしれんね。
メインのコンポーザーも変わったしボーカルもAlexではないし、もはやChelsea Grinと呼べるのかは別としても、Alexのいた頃のようなどうしようもなく病んでる雰囲気はかなり減退している。個人的にはどうもコレジャナイ感。
#1「Origin of Sin」は仰々しいシンセのアレンジが目立つリードトラック。TomのボーカルはAlexほどとは言わんがかなりクセ強。後任としては素晴らしいボーカルを手に入れたよね。音作りが前作よりさらにモダン化してて、ドス黒い下水道を思わせる初期の雰囲気はほぼ感じられない。
#2「Forever Bloom」は今は亡きBDMのTrevorがフィーチャー。そういえばTomのボーカルって結構Trevorリスペクトなところあるよな。立体的な音作りですごくモダンなデスコア。洗練されまくった感じがなんだからしくない印象を突き上げつつ、これはこれでクオリティーは非常に高い。
#3「Deathbed Companion」を聴いて“これは良いかも?”と思った。病的でシリアスな空気とテクニカルなリフが気持ち良いし、これまで培ってきたChelsea Grinの良さみたいなのがきちんと出てる。もはやCGとは呼べないと言ったことを少し反省。
#4「Crystal Casket」はノイズと不安定な高速リフが入り乱れ、Tomのガチグロイカレボーカルが際立つ。一変ブレイクダウンはシンプルで分かりやすい。
#5「Flood Lungs」は陰鬱としたメロディーから病んだ歌詞が垂れ流される。あれ?これはむしろ前作より良い流れなのでは?
#6「The Isnis」は前作っぽいタイトで正統派のデスコア。こういう曲で地味にリフセンスが光ってるのが良いよな。
#7「Mourning Hymn」はドラマ性の高い構成にやられる。あれ、これもしかして普通によいやつ?
#8「Suffer in Hell, Suffer in Heaven」は本作のタイトルトラック。これがもうタイトルをただ叫んでるだけのイカレナンバー。次のパートへの繋ぎを果たすのだろう。
ここからは『Suffer in Heaven』となるが便宜上トラックナンバーは地続きとさせて頂く。
#9「Leave with Us」は病んだ空気が全開のゲテモノナンバー。突発的な爆走や細やかなデスメタルリフ、不安定な刻みが焦燥感を煽る。
いや、これ流れとしては最高に良い。ケチくさいことは言わずに同時に1枚のアルバムとしてリリースすべきだったよこれは。
#10「Orc March」はFilthがフィーチャー。微妙なサンプリングの仕方とかが気怠い空気に拍車をかけていて良い感じ。
#11「Fathomless Maw」は轟音で押し切るアグレッシブなデスコア。音の生々しい空気は前作譲り。
#12「Soul Slave」は低音弦が圧殺しにかかるミドルテンポなデスコア曲。目新しさこそないがクオリティーはお墨付き。とはいえ瞬発的なアグレッションでCGに勝るバンドは腐るほどいるからね。細かいアレンジで魅せていくあたりがオサレ。
#13「The Mind of God」はTomの咆哮が噛み付くように楽曲に絡む。テクニカルなメロに謎のナレーションとかも挟んで、デスコアやりつつもメロデスとかそっち系へのリスペクトを感じるな。
#14「Yhorm the Giant」はモダンなアレンジのミドルテンポデスコア。シンフォニックデスコアだな。
#15「Sing to the Grave」はブヨブヨのグルーヴリフも相まってTomの別バンドDarkoあたりを彷彿とさせられる。実際このサイドプロジェクトから逆輸入的に影響を受けてる側面はあるんだよな。
#16「The Path to Suffering」は本作の集大成的な仕上がり。
悪くはないんだけど、色んなところの美味しい部分をかき集めたって感じがしていまいち振り切ってない感触の残る作品だった。瞬発的なアグレッションとかでは他のバンドで腐るほど代役はいるけど、前作より実験的な作風だからトータルではかなりは楽しめる。2枚あってなんぼのアルバムだね。