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Born of Osiris / Angel Or Alien(2021)〜さらなる高みへ、プログレッシブメタルコアバンドの大作〜


01. Poster Child
02. White Nile
03. Angel or Alien
04. Waves
05. Oathbreaker
06. Threat Of Your Presence
07. Love Story
08. Crossface
09. Echobreather
10. Lost Souls
11. In For The Kill
12. You Are The Narrative
13. Truth and Denial
14. Shadowmourne

シカゴ出身プログレッシブデスコア〜メタルコアバンド、通算8枚目。
2017年リリースの1stアルバムのリメイク『The Eternal Reign』、そして2019年8曲入り『The Simulation』とコンパクトな作品が続いていたが、ようやく大作がきた。

フルアルバムという考え方で言えば実に5年振り。そりゃあ期待値もぶち上がるわけで。

このバンドの評価って結構割れる部分があって、初期のDjent+デスメタルなスタイル、唐突に大作をぶち込んで大きく評価を上げた『The Discovery』、よりコマーシャル性を意識したそれ以降の作品とでかなり毛色が変わる。

まあ今思えば『The Discovery』は衝撃的すぎたんよ。シーン屈指のギタリストLee MckinneyとJason Richardsonが共作している時点でもう化け物なのは確定しているし、そんでバンドのキモになってるキーボーディストJoe Burasの大胆なアレンジが炸裂しまくったんだから。
個性の塊みたいな集団がかろうじてお互いを繋ぎ止めながら、ギリギリのところで作られた感覚さえ覚える傑作だった。

いずれにせよLeeとJasonが邂逅を果たしたのは『The Discovery』だけだったし、今後も絶対に拝むことは出来ない組み合わせだろうね。そのへんはかなりビジネスライクに割り切った関係性だったのかもしれない。

まあ結果的にJasonはクビって感じだったようだが、バンドメンバーのアルコールや処方薬への依存に対してかなりヘイトを持っていたようだからね。仕方ないね。

バンドは後任を迎えずギタリストがLeeだけになった影響もあるだろうけど、以降はメロディーの部分をキーボーディストのJoeがとことん引き受けた印象がある。それによって必然的にかなりコマーシャル性が上がったし、RonnieとJoeのツインボーカル体制もその中で培われたものだと思う。個人的には今のスタイルも好きだよ。

大分話が脱線したので少しずつ戻していこう。

そう、新作だ

前作『The Simulation』はかなりコンパクトな作品だったから、実際物足りなさみたいなモノはあったんだよね。

だからこの『Angel Or Alien』にはめちゃくちゃ期待してたんだ。

14曲55分、そうだよ、こういう濃密なのを待ってたんだ。

しかも長らくサポートを務めてきたNick Rossiを正式にギタリストとして迎え入れて本作は制作された。
先行公開された「White Noise」ではLeeと仲睦まじくメロディーを紡ぐNickの姿に涙さえ溢れそうになったね。

ど頭からしっかり曲の感想を言っていこうと思ってたんだけど、とりあえずこの激エモ展開だけは皆抑えておいてくれよな。Nickは笑顔と弾き方が可愛いよな。兄貴分的な立ち位置でLeeが優しく見つめてるのもなんかいいよな。

で、ここからはアルバムについて語っていこうと思うんだけど、結論から言ってしまえば最近のBorn of Osirisの路線を踏襲しているんで、激烈な感じを求めているなら本作にはまず満足出来ないだろう、ってこと。

だが前作を聴いてもなお彼らのファンであると公言出来る諸君には、やっとこさこのボリュームで楽しめる、まさに最高の1枚に仕上がっているはずだ。

#1「Poster Child」はいつも通りの、というか彼らの十八番でもある壮大なシンセによるメロディーが先行してくるタイプの曲。後期のBorn of Osirisってアルバム冒頭はほとんどこういう印象的なシンセの音色からスタートしていく。ここのメロディー任されるJoe Buras、毎度ながらすげーな。
比較的ゆったりとしたグルーヴでバキンバキンと揺らぎながら、RonnieとJoeの掛け合いで魅せていく。フェードアウトで不意にサックスが乱入してきて打ち込みでフィニッシュ。

#2「White Nile」も先行公開された曲。まあこれは上述したようにLeeとNickの仲睦まじき姿が拝めるのでとにかくMVを見てくれればそれでいい。ツインギターになったからと言って音に凄みが出たかというと意外とそんなことはなくて、むしろ楽曲のグルーヴと時折見せるメロディーに重点を置いているような雰囲気だ。なんならメロディーパートは可愛いまであるな。

#3「Angel Or Alien」は前曲のポップさすら覚えるメロディーを引き継ぎ、煌びやかなギターワークとスペーシーなシンセが有機的に絡み合うナンバー。後半のギターソロは素晴らしくキャッチー。この曲とかは新生BOOを許せない人達からは総スカン食らうこと間違いなし。

#4「Waves」は気怠いメロディーに合わせてRonnieとJoeが掛け合う新基軸のアレです。サビメロとか意識しちゃう感じの曲で、もう本作の持つ“艶やかさ”とか“キャッチーさ”みたいなものが滲み出ちゃってるよね。

#5「Oathbreaker」は多少アグレッションを取り戻したギターが垣間見え、高低差を意識したスクリームをちらつかせながら、要はメロディーラインをどう魅せるか、ってところにスポットした曲。まあこのバンドはかなり前からメロディーを重要視していることは公言していたし、今の方がやりたいことやれてるんじゃないかね。

#6「Threat Of Your Presence」はスペーシーなシンセとテクニカルなギターで進行、やっぱメロディーを歌ってるのよ思いっきり。その割にボーカルのテンション感はかなりアゲアゲ。エモいギターソロを交えてブレイクダウンで締めます。

#7「Love Story」。ラヴストーリー!?ついにそんなロマンチックなところまでいっちまったのか。「俺達この路線でいきますけど、気に入らないなら打ち捨てて下さい」と言わんばかりのリリック。

#8「Crossface」はアルバムの中ではかなりアグレッションの高い曲。こういう曲も普通に書けるんだと思うんだが、今まで攻撃性7:3メロディーって感じだったのが逆転してんだよな。

#9「Echobreather」はマブダチのペリっぽいリフ、控えめなシンセアレンジを施しながらサビメロに突入。そのわりにシュレッドLeeも炸裂。というかもうペリじゃねえか?これ。

続く#10「Lost Souls」はラスボス感満載のシンセ、ユニゾンギター。メロディーパートこそあるものの、これは中期の彼らが好きならニヤつく曲かもなあ。

#11「In For The Kill」は久々に真っ当にジェンティッしてるナンバー。この音はもう明らかにニキを彷彿とさせるソレよ。過去ファンを繋ぎ止めるためにもこの手の曲はアルバム前半に置いておけばよかったのにな。

#12「You Are The Narrative」なんてもう完全に原点回帰のDjent+デスコアをやってて、後半にこういう曲を固めてくる覚悟よな。後期の彼らが気に入らないなら多分ここまで辿り着けてないと思うし。やりゃあできんだけどね。やんねえのよ。っていう皮肉じみたものさえ感じる。

#13「Truth and Denial」も攻撃性抜群のテクニカルデスコアナンバー。やっぱ意図的にそうしてるよな?明らかに#11〜#13の流れは原点回帰だ。Leeはインタビューで「過去の自分達の最高な部分を抽出した」みたいなこと言ってたしな。いや気持ちええ。#10でラスボス降臨したと思ったけど、そこから猛アタックされて見事に俺のラオウは昇天した。

ラストソング#14「Shadowmourne」はオリエンタルなイントロと渋いDjentリフでこれまたペリっぽいなと思った曲。Joeがめちゃくちゃ歌うナンバーで、スケール感あって良いね。しかもラストはサックスまで入ってきちゃって(#1のリフレインやんな?)Shrezzersとかそういう気配さえ感じてしまうよね。

今のBorn of Osirisを手放しで賞賛出来る気概があるなら本作は十分期待値は満たしてくれているとは思う。

個人的には主張しまくるシンセとギターのせめぎ合いみたいなものがBorn of Osirisの最大の魅力だと思っていたから、あの忙しなさみたいなものがやっぱ好きだったんだよね。

バンドとして円熟を迎えつつある彼らの目指す先はこれらのパーソナリティーの完全な融合なのかもしれないな。

このアルバムも暫く聴き続けることにはなるだろうが、『Soul Sphere』、『Tomorrow We Die Alive』、『The Discovery』というあの流れが全盛期だったんかなと思っちゃう節もあるよな。

とはいえ、Nickの正式デビューとなった本作はおめでたいよ。これからも聴いていこう。

★★★★☆








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