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Worm Shphered / In The Wake Ov Sòl (2020)〜ブラッケンドデスコア期待の新星〜

マサチューセッツ出身ブラッケンドデスコアバンドのデビューアルバム。

正直今までこのバンドはあまり聴いたことがなかったんだけど、Unique Leaderとの契約が決まってこのデビューフルも再発されることになったんで、ちゃんと聴いてみようと思った次第。

ブラッケンドデスコアはシーンの中では結構トレンドになっていて、イタリアのDrown in Sulpherやアメリカのロナショア、あるいはドイツのMental Cruelty(ボーカル飛んだけど)とか、世界的にもデスコアのサブジャンルとして定着しつつあるんじゃないかと思う。まあCarnifexとかが元祖かもな。

で、これ凄い個人的なことなんだけど、尺の長いアルバムってワクワクすんのよね。聴くのに体力はいるんだけど、聴き終えた時になんとも言えない充足感に満たされる。

ブラッケンドデスコアって結構長尺の曲を演るバンドが多いんで、そういう意味でやっぱ期待しちゃうジャンルなんだよな。

数年前にフィジカルは全て売り払ったんだけど、キャリアとして3枚以上リリースのあるバンドは集めても良いかなと最近思い始め、
最近チマチマと買ってるんだが、このWorm Shepherdはまだ2枚なのに思わず注文しちまった。
どちらのアルバムも50分くらいは尺あるし、普通のバンドの3枚分くらいは楽しめるだろうと踏んだわけ。

基本的にはいつも全部聴いてから改めて1曲ずつ感想を書いていくんだけど、今回はリアタイで聴きながら一気に筆を進めてみようと思う。

#1「Accursed」は元Chelsea GrinのAlexがフィーチャー。元祖ゲテモノデスコアボーカルと言えばこの人だよな。ただここのバンドのDevin Duarteも相当やばい。それこそCJ McCreeryとか彷彿とさせる下劣なグロウルやハイピッチを持っていて、悲壮感漂う爆走との相性は抜群。
スタイル的にはやはりかっちりタイトなドラムと物憂げな高音ギター、要所でタフなビートダウンを挟んでいく感じ。


#2「In The Wake Ov Sol」は仰々しいイントロからおよそ歌詞など聞き取れない咆哮でギャワギャワと叫び倒す。バックでは結構テクニカルなフレーズを弾いてるギターも良いね。ボーカルのエグみにやや埋もれがちではあるけど。

#3「Ragnarok」を聴いてやっと気付いたんだけど、これDevin to Embersからの再録やん。ブラッケンドデスコアプロジェクトとしてMVが公開されてたよ。要はそれをフルバンド化したのがWorm Shepherdなんだな。どおりで結成からアルバムリリースまでのスパンが短いわけだ。
で、この曲が7分を超える大作なんだけど、かなり良い。荘厳な雰囲気のイントロから一瞬テクデスっぽい展開を見せて、そこからブラックメタルのようなパタパタとした爆走へと繋げていく。それこそロナショアが「Immortal」でやってのけた壮大なブラッケンドデスコアに近い。まあボーカルは変な問題で告発されてないけど。そこ重要。

#4「Wrechedness Upon the Gates」はSigns of the SwarmのDavid Simonichがフィーチャー。こちらもまたゲテモノボーカルだね。というかこの2人のコラボは危険すぎるだろ。
Metallumではシンフォニックデスコアと形容されているだけあって、クワイアが入る。普通のブラッケンドデスコアだと爆走しそうな部分をダウンテンポでひたすら落とし込むのもこのバンドの特徴で、かなりドスの効いたサウンド。

#5「The Emptiness Between Stars」は陰湿なアルペジオからダウナーなデスメタルリフで攻める曲。DisentombとかUlcerateみたいな暗黒デスメタルを彷彿とさせられて、デスコア成分はかなり低い。

#6「The Frozen Lake」もDevin to Embersの再録だね。不気味なSEとオーケストレーションを経てDevinの凶悪なパフォーマンスが火を噴く。高低を自在に使い分け、独特な歪みを持ち合わせたソレはデスコア界隈でもトップクラス。高速ドラミングを挟んでビートダウンした後はフロリダ系ダウンテンポを思わせるオラついた咆哮へ。ザクッとした刻みや爆走にシンフォニック要素が折り重なって醜悪ながら荘厳という不思議な曲。後半はブレイクダウンの連続でことごとくぶちのめしていく。

#7「Aether」はコンパクトに爆走とテンポチェンジを繰り返しながらバックではシンセが鳴り響く。確かにシンフォ要素は強いかも。

細やかなドラムアレンジで暴走した後ダウンテンポな展開へと持ち込む#8「Loathe」。落とし込んだ後もドラムがテンションを保ってて緊張感がすごい。この手のバンドはドラムの手数足数があってなんぼって感じなのでそこはしっかりクリアしてる。というかダウナーな展開が多めなのにダレないのはリズム隊が健闘しているからだね。

#9「The Crimson Moon Unwithered」はピアノを大々的に取り入れ、シンフォニックなデスコアを披露。物憂げなピアノの旋律と悪魔的なボーカルが最高にカッコ良い。Entombed in the AbyssのAdam Mercerがフィーチャー。彼もEITAだけじゃなくA Wake In Providenceとかで頑張ってるよね。この曲まじで推し。
何故かプレイスルーしか無いのでこれを掲載。

#10「Chasm Dweller」はShadow of Intentばりの仰々しいオーケストラアレンジに最高潮を迎えたブラストビート、加えてなんとクリーンが導入されてるじゃないか。ほんのアクセント程度だし使い方も上手いね。爆走との対比は退廃的な美しささえ感じる。

こりゃすげえな。
デビュー作にしてここまでの完成度を誇るブラッケンドデスコアは他にないのでは。
暗黒ドゥーム系の音や退廃的なクリーンの導入など、新人バンドにして様々な要素を巧みにバンドサウンドに取り入れてて、これはもう期待しかないね。
Unique Leaderさん猛プッシュを頼むわ。

★★★★★


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