Korpse / Insufferable Violence (2021)〜ノイジーなスラミングブルデス〜
オランダ出身スラミングブルータルデスメタルバンド、5年振り通算3枚目のフルアルバム。
Dictatedのメンバーが結成したバンドだね。前作『Unethical』では1stからは比べ物にならないくらいプロダクションが改善されていて、一気にB級感が薄れたアルバムだった。リフや展開もコテコテのスラミングというより、ハードコア由来のタイトな音とブルデスを組み合わせたような、それこそIngestedとかを彷彿とさせるサウンドがかなりイケてた。
今作は音質はさらに向上して各パートがすっきりクリアに聴こえるようになった。それに伴って一層ハードコア由来の攻撃性とブルデスの残虐性が上手く混ざり合い、とてもモダンな音になっていると思う。
その分突発的な爆走パートやテクニカルな音像を増やして、意図的に残忍なブルデス感を演出している。あくまでバンド側としてはスラミングブルータルデスメタルの土俵で勝負していきたいってのが伝わってくるね。ただ本作は耳をつん裂くようなノイジーなギターがほとんどの曲に出てきて食傷気味になる可能性あり。というか自分はなった。
#1「PTSD」はバンドサウンドはあるけど、台詞のみのインストナンバー。戦場に出た兵士が罹患することが多いPTSDについて話している。
“PTSDと向き合うのは兵士だけじゃなくその家族もだ”というシリアスなメッセージもある。
#2「Insufferable Violence」はネジが外れ気味の突撃爆走スタイルのドラムに残忍なリフでグチャッとしたブルデスを披露。音質が向上した上で敢えてこういうサウンドをやるのが面白いね。
#3「Disposable Underaged Objects」はハンマーリフからチャンキーなノイズを撒き散らしてブレイクダウン。シンプルな構成で比較的分かりやすい曲。
#4「Self Preservation」は王道のスラミングナンバー。本作は不協和音的なフレーズが多くて、ノリノリのグルーヴに焦燥感を募らせるようにギターが唸る。アンバランスな組み合わせで独特なアグレッションがあるね。
#5「A Final Lesson」も猛烈な爆走とノイズを掛け合わせた曲。ピロピロギャリギャリとやかましくギターが主張しながらダーティーに落とし込んで、最後に突発的な暴走を一瞬だけして終わる。
#6「Genocidal Bloodbath」も基本的な流れはノイズと爆走にあるんだけどこの曲はリフがテクニカルでかっこいい。
#7「Callousness」は立体的な音作りの高品質なブルデスナンバー。スラミング系でありながら“速さこそ正義”と言わんばかりに爆走パートを突っ走る。気が狂ったようなギャリギャリとうるさいギターと爆走。本作はひたすらこれに尽きるね。
#8「Vital Transactions」もしつこいくらいにチャンキーノイズがまとわりつく。これはさすがにやりすぎだな。ボーカルのエグみやスラムパートのかっこよさは変わらずなんだけど、ギターのノイズがしつこすぎてそればかり耳に残ってしまう。後半のブルドーザーみたいな爆走はかなりスリリングでいいんだけどね。
#9「Molestation Condonation」も序盤は同じような感じ。ただスラムパートを抜けてからのデスメタル然とした爆走はかなり良い。音も立体的で意外と繊細なプロダクションをしてる。
ラストトラック#10「Epochs of Melancholy」は不気味なSEと不穏なリードをバックに響かせてズンズンとスラミングする曲。なんでこの曲ボーカル無しなのよ。
前作のが圧倒的に楽しめた。音質は向上したけどつん裂くようなギターがやけに主張しすぎてて逆にダレました。
リマスターしたデビュー作のが全然良いので聴くならそっちがおすすめ。
★★★☆☆