Thy Art Is Murder / Human Target (2019)〜頂点に君臨する脳筋デスコア〜
オーストラリア出身デスコアバンド、2年振り通算5枚目のフルアルバム。
オーストラリア、いや世界を代表するデスコアバンドのザイアート。名曲「Reign of Darkness」では1800万回を超える再生回数を叩き出すなど、桁違いの人気を誇っている。
にも関わらず、ボーカルのCJは「バンドなんかで食ってけねーからまじで」と一回脱退してるんだよね。なんやかんやで戻ってきたけど。これだけ売れても界隈ってそれが現実なんだよな。
スーサイのメンバーが「ザイはおんなじような曲しか書けねえ」みたいにDisって大炎上をかましたのは記憶に新しいけど、よほどきちんとデスコアして見せてるのはぶっちゃけザイアートかなと思う。
少なくとも劣化版ニューメタルみたいなことはしてないし、あくまでデスコアという土俵で勝負をしてるのは好感持てるかなあ。
今作も前作の延長線上にある作風で、筋肉質なデスコアを叩きつける真っ当なスタイル。
ただこのバンドの場合、各々のパートが非常にタイトでセンスも良いというのがデカい。リフの切れ味も良く、爆走パートは猛烈な攻撃性を剥き出し、それでいてキッズの求める縦ノリ感も忘れてない。要は非常に巧いバンドなわけ。人気に実力がしっかり伴ってるよね。
活動がこのまま順調にいけば、2020年代では非常に貴重な正統派デスコアとして君臨することになるだろうなあ。
#1「Human Target」はギロチンのようなリフに脳筋グロウルを絡ませて爆走パートへと突入。ライブとか見るとすごい簡単そうに咆哮してるんだよな。CJの喉はどうなってるんだろ。やはり瞬発力が凄くて、前任ドラマーLeeの脱退が響くかと思ったけどそんなことなかった。元Black Crown Iniciateだっけか。
#2「New Gods」はシンガロングしたくなるアンセミックな咆哮から鋭いリフを連発、バウンスするようにガツガツ刻んでいくパートとの対比が実に彼ららしい。
#3「Death Squad Anthem」はテクニカルなイントロからミドルグルーヴで攻めつつ、落とすところはスパッと落としてメリハリを付ける。変に間伸びせずバンドサウンドも攻撃性を維持しているのが良いよね。
#4「Make America Hate Again」は政治色の強い曲。賛否は分かれるだろうけど、良かれ悪かれこういうのは話題になるからね。でもリフは鋭いし普通にデスコアとしてカッコいいよ。
陰鬱なメロディーに合わせてCJの咆哮が響き渡り、不気味な雰囲気の中、突発的な爆走を見せる#5「Eternal Suffering」。非常に良いタイミングでアルバムの流れを変えてくる。
#6「Welcome Oblibion」は冷たい高音ギターと刻みが折り重なってチャグい音やら手数足数で魅せるドラムが心地よい。彼らはこういう冷ややかなメロディーと脳筋デスコアをうまくまとめるよね。特に『Holy War』以降はそういう展開の見せ方が上手くなった。
#7「Atonement」は物憂げな高音ギターを一瞬披露してそのまま爆走へと転じる。いやドラムが本当えげつなくて、良い後任を見つけたなとしみじみ。爆走後のリフも印象的で、効果的に楽曲を構成してる。展開の隙間をセンスの良いリフで繋いでいくのがさすがすぎるな。
#8「Voyeurs Into Death」は初期の作風を思わせるデスメタリックなミドルグルーヴを見せられて、なんか懐かしくなる。彼らの作品って残念ながら1stとEPが軒並み高値で取引されてて、ふと断捨離したタイミングで全て売り払ったんだけど、この曲のせいで買い直すことにした。まあEPに関してはボーカル違うから良いかなって惰性はあるけど。
#9「Eye For An Eye」の冷たいメロディーも良いね。ダウナーな展開に脳筋グロウルが乗っかるのがすげえ気持ち良い。予想通りではあるけどしっかり爆走してくれる。中盤からは勢いそのままにテクニカルなリフを連発してCJは吠えまくる。
#10「Chemical Christ」は高音ギターとガツガツした刻みから一気にテンションを上げて爆走、これまた切れ味の鋭いデスメタルリフが合間を縫うように埋めていく。
今回もきっちり10曲、捨て曲皆無の素晴らしいアルバムだと思う。デスコアが好きな人なら間違いなく気にいるだろうし、世界的な人気にも納得がいく。
正直規格外の人気が出ちゃってるから、この先が少々不安ではあるんだけどね。そろそろ新作聴きたいね。
なんならスーサイの新譜とぶつけてくれても良いぞ2022年!
大きな路線変更が無ければ世界一のデスコアを名乗っても良いと思う。
★★★★★
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