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Mental Cruelty / A Hill to Die Upon(2021)〜シンフォニックスラミングデスコア〜

ドイツ出身デスコアバンド、2年振り通算3枚目のフルアルバム。

ジャーマンと言えばメタルコアを想像すると思うけど、最近はデスコアシーンもアツい。

もう解散してしまったがCall of CharonやWar From A Harlots Mouth、あるいはWalking Dead On Broadwayといったバンドなど、何気に良質なバンドがゴロゴロいる。

中でもこのMental Crueltyはかなりキテいるバンドだ。

デビュー当時こそコテコテのスラミングサウンドを鳴らしていたが、リリースペースが早い割にその進化は著しい。

前作『Inferis』でやや王道のデスコアに寄ったが、本作はブラックメタルやシンフォニックメタルの要素が強い。Shadow of Intentやロナショアもサブジャンルをメキメキと飲み込み進化をしているし、時流には乗れてるんじゃないかな。

もうちょっとレーベルもプッシュして良いバンドな気がするんだけど、意外と伸び悩んでるんだよね。Spotifyは月間3万人とかだし。スラミング上がりなのがダメなのかねえ。いや、理由は別にあるかもしれねえ(後述)。

気怠いイントロ#1「Avang」からリードトラック#2「Ultima Hypocrita」へ。さすがスラミング上がりだけあって声質はかなり下劣。圧殺しにかかるハンマーリフとクワイアが荘厳な雰囲気を醸し出し、オーケストレーションと共に爆走。で、ここ最近聴いた中で1番かもしれんギターソロが聴けるんだけど、これ日本人ギタリストのYo Onityanなんだよね。

静寂と爆走を行き来する#3「Abadon」。デスコアにしてはやや長尺の曲なんだけど、ここぞの場面でブレイクダウンと下劣ピッグスクイールを聴かせてくれる。ロナショアほどのインパクトは無いにせよまた違った良さがあるね。てかもうアルバム終わるんじゃねえかっていうくらい壮大なラスト。

#4「King Ov Fire」はマシンガンのような爆裂ドラミングにエグみの強いボーカルがぐいぐい引っ張っていく。若干だけどグルーヴィーなパートも顔を見せ、スラミングらしい展開とブラックメタルの爆走を掛け合わせた不思議な曲。スラミングデスコアとブラックメタルの融合はあんまりやってるバンドいないんじゃないかな。

#5「Eternal Eclipse」はクサめのメロディーからBPMの高い爆走とハイピッチの組み合わせが悪魔的。てかこのバンドのドラムやばいね。

で、本当は言いたくないんだけどここのボーカルLuccaはどうやら問題起こしてバンドやめたみたいね。CJにしろさすがにデスコア界隈こういうの多すぎ。

まーじでもったいね。ボーカル騒動はもう勘弁してくれ。

さあ、気を取り直して#6「Death Worship」。この曲がまじでかっけえのよ。ディープなグロウルとピッグスクイールでブイブイ言わせながら、壮大なオーケストレーションと共に爆走。新機軸のブラックメタル要素を取り入れつつかなりスラミングデスコアしてる曲で最and高。

川のせせらぎ(いや海か?)と共に煌びやかなギターを聴かせるインスト#7「Fossenbrate」を挟んで#8「A Hill to Die Upon」へ。これがタイトルトラックってだけあって素晴らしい。猛烈なドラミングから幕を開け、最高潮に達したボーカルパフォーマンスに、イカれた爆走とパンチの効いたビートダウンを矢継ぎ早に繰り出していく。中盤のビートダウンまじでいかれすぎ。

#9「Extermination Campaign」は冷ややかなメロディーを纏いながら猛烈な爆走で押し切る曲。そう、本作の彼らは意外とメロディーがあるのよね。この曲はそれが顕著。

#10「The Left Hand Path」はイントロ聴いて“なにこれ?”ってなった。甘さを感じるメロディーに相変わらずな爆裂ドラミングをぶち込んで、オーケストレーションで壮大さを演出していく。正直3分あたりでもうやることないだろうと思ってたんだけど、ロナショアっぽく何層にも折り重ねたブレイクダウンで一旦仕切り直す。シンフォ要素の荘厳な雰囲気も相まっていよいよラストパート。ギターソロをなびかせて、ゆったりフェードアウト。

まあLuccaが事実上のクビなんで、新しいボーカルを迎え入れても別バンドって感じになりそうだな。

星4つ付けたいところだけど、空中分解寸前なんで星3つ。

★★★☆☆


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