愛すべきおじさん
これはロックだ!と思う物って人それぞれあると思う。
私がパッと思いつくのは独立前の会社の勝新太郎さん似の社長。
高校を卒業しパチプロとしてその日暮らしをしていたのですが芸能や音楽にまったく興味のなかった自分がさまざま人間の紹介で芸能マネージャーの仕事につくことに。
しかし短気な私が一年も経たず芸能事務所の社長と案の定喧嘩。辞めたあとひと月も経たないうちにその事務所のチーフマネージャーから電話が来て「なんか知んないけど○○があんたの事気に入ってるから現場来ない?」「望まれるのであれば」この信念は今も変わりません。望まれるのであれば全力でやる。そうじゃないなら離れる。
そしてそのフリーで担当していた大女優から、ある日ロケの待ち時間唐突に
「あんた音楽の仕事向いてんじゃない?」
「いや俺は音楽通知表普通って評価取ったの小1の1学期だけだしあとずっと1か2っすよ」
「向いてると思うけどね〜」
ってやりとりがあり。その後そろそろ就職かな?と考えた時その時言われた向いてるって言われた部分だけチラつきたまたま受けた制作会社。
その会社もたまたまその大女優に「あたしの現場ない時手伝い行かない?」と言われ手伝いに行った王子様系アーティストの会社のアーティストが求人に名前を並べていたから受かると思って受けただけ。
社「好きなアーティストは?」
私「いやー音楽あんま聴かないっす」
社「なんかあるだろ?」
私「ブルーハーツは好きですねぇ」
社「俺やってたんだよ」
私「ヘェ〜」半信半疑
社「セールスポイントあるか?」
私「休みなくても大丈夫っす」
社「他は?」
私「時間とか気にしないっす」
その晩電話が鳴り
社「土曜日山梨泊まりで行けるか?」
私「もちろん」
このスピード感が合ったのかも
ちなみにその現場はLINDBERG
その翌週から別の大御所パンクアーティストの全国ツアー
戻ったタイミングでZIGGYを紹介される事になる。
後にイベントでハイロウズと一緒になった時ハイロウズが社長に挨拶しに来た。
その時ヒロトさんマーシーさんがすごい笑顔で挨拶をしてるのを見て「おぉー」と思いました。
そんなこんなで始まった音楽業界
普通手本にするのは社長
とにかく人柄は褒められる。
ただ仕事は酷評
まわりの人間は
「良い人なんだけどずっと競馬新聞読んでるからなぁ」
「良い人なんだけど仕事がなぁ」
「現場ほったらかしで地方競馬に消えた」
「近所の市場でカニ買ってきて楽屋中カニ臭くなった」
「あれだけTシャツが似合うおじさんはいない」←唯一の褒め言葉
だからその分お前が頑張れ!と皆によく言われた。
よくおじさんと喧嘩もしたなぁ。
ぶっ殺してやるからかかって来いよ!って言うようなアタマのおかしな社員でした…
でもこのおじさんが言ってた事で
「電話1本逃すと100万、1000万逃すのがこの業界だから電話は常に意識しとけよ」
ってのは今も大事にしてます。
コロナで寝込んでる間もスマホは離さず電話も枕元に置いて起きてる間中チェックしてました。
その会社にいる時に個人事業主ROCKGUILDを立ち上げて後に法人化。
その後も業務提携してやってました。
うちの社員は電話への意識の件聞いちゃくんないけど…これが人柄の違いか…
ちなみにこの社長はファンクラブイベント等ステージ上で挨拶してるシーンでも電話に出る有言実行のおじさんです。
そして痛風おじさんは酒とタバコとギャンブルがとにかく好き
ある日奥様から電話が鳴る
「主人が酔っ払って階段から落ちて救急搬送されました」
翌朝病院に行くとICUのストレッチャーの上で電話してた。頭縫ってるのに…
りんごのネットみたいなのかぶってるのに…
「この馬が来るから絶対買え」
外して買うと当たる
「携帯電話の基地局の権利が」
まんまと騙される
事務所の引っ越しで内見行った時咥えタバコで現れ
「ここ禁煙です」
「あぁすみません」
消した直後に新しいタバコに火をつける
「沖縄の肉は大丈夫なんだよ」
翌日案の定痛風
「銀河高原ビールは大丈夫なんだよ」
翌日痛風
健康に気を使い始めウォーキングを取り入れたら大動脈破裂で緊急入院
見舞いに行くとタバコが吸えないのが辛いと
退院後連絡が来てファミレスで会うと
社「ワイン飲んで良いか?」
私「おじさん退院したばかりっしょ?」
社「赤ワインは健康にいいんだよ」
でこんなおじさんも今年70歳
数年前のある日私は別の病院で人間ドックを受けてて終わりでおじさんが検査入院を受けてる病院に行った。
ちょうど検査結果を聞かされるタイミング
社「お前も立ち会ってくれ」
医「息子さんですか?」
社「家族みたいなもんだ」
と言われ立ち会い
医「結論から言いますと肺癌です。転移も見られます。」
社「そうですか…治療はどういう感じで?」
医「抗がん剤等試しますが余生を考えてください」
みたいな事を言ってた気がする。
あぁこのおじさん死んじゃうんだ…マジか…
って思った。
医「この後また採血したりするんで30分後くらいには部屋にいてください」
社「あぁ気が重くなるな…」
私「まぁでも歳食ってるから病気の進行も遅いんじゃないの?」
社「ちょっと外の空気吸いに行こう」
あぁ凹んでんだなぁ…と思い一緒に行く
病院の敷地を出ると
社「ライターあるか?」
私「は?」
社「いや病院じゃタバコ吸えないだろ?」
私「おじさん肺癌宣告されて即吸うとかバカじゃないの?」
社「いやいやいや笑」
めちゃくちゃ無邪気な顔
結局この時2本吸い
病室に戻り採血
注射の跡押さえてくださいと言われたのにまったく押さえず気づいたらベット血塗れ
大動脈の関係で血液をサラサラにする薬を飲んでたからエゲツない血溜まりだったな。
でちょっと笑ったんでこのテンションのまま帰ろうと思い
私「そろそろ帰るわ」
と言うと
社「下まで送ってくよ」
私「ジジイタバコ吸うつもりだろ!」
案の定吸ってました
あれから数年定期的に酒を一緒に飲み
自分が担当していたアーティストは元気か?
と気にしていて
いやあんたが大丈夫か?
みたいなやりとりを毎回してる
先月電話した時も
社「今大変だろ?大丈夫か?」
私「いやそっちは大丈夫なの?」
社「脈が乱れてて先週入院してたんだよ。まぁ退院したから今度飲み行こうよ」
私「緊急事態宣言あけたらね」
というやりとり。
とにかくブレない
芯が通ってる愛すべきおじさん
結婚もしていて離婚もせず子供も自立してるし
独立前は業界に名を馳せ
独立後はうまくいかなかったけど元社員が会社起こしてそれなりにやってんだから男としては成功なんじゃないかな?
俺もかくありたい
おじさん借金塗れだし
俺が毎回飲み代すべて奢ってるし
1000万貸してるけど…
でもなんにしてもこの人が社長じゃなかったら今の自分はなかったのは間違いない
とにかく長生きして欲しいもんだわ
追記
2023年9月11日自宅で亡くなられたと息子さんより連絡ありました。
春先に電話来た時
社「おぉ最近どうだ?」
私「ちょっと体調崩しててあんま良くないんすよね」
社「気を付けた方がいいぞ」
私「お前が言うな」
みたいなやり取りが最後でした
そっちでたばこと酒とギャンブルして待ってくださいな
俺はもう少し頑張りますよ
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