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Yngwie Malmsteen & Alcatrazz

Yngwie Malmsteen - Rising Force (1984)

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 ギターは古くからあった楽器と思うがエレキギターとなってからはまだ100年も経過していないし、そこまでにはまだまだ時間がかかる。それくらいに新しい楽器の世界だが、一度発展した文明は転がり落ちるかのように日進月歩で機材は発展し、周辺機器も同様に発展し、当然の如くプレイヤーのテクニックは加速度的に発展して革命者が続々と出てくる。また様々な使い手が想像もしない方向の音楽を奏で、ギターの限界を大きく超えて音を鳴らし音楽を紡ぎ上げ、更にそこから発展した楽器にまで進んでいく始末。ギターそのものも改良され、7弦ギターから今では9弦ギターあたりまであるらしい。一方古くからのギターの形も発展し、変形ギターから材質の変化、ヘッドレスやボディと弦の鳴り方の探求から分離したもの、アームだってどんどんと発展していくしコンピュータを搭載してのオートチューニングもあればステレオ出力ギターだってある。一言エレキギターだと言ってもどこから斬っていくかによって話は全然別方向に進むが、そんなギターそのものを主力としたプレイヤーにイングヴェイ・マルムスティーンがいる。

 スティーラーからアルカトラズに参加して知名度を上げながら日本公演までをこなし、その時から既にアルカトラズを脱退する意向を持っており、その時点からマネージメントと日本のレーベルで結託してイングヴェイ・マルムスティーンにギターを中心としたソロアルバム制作を打診、日本市場ではスーパーギタリストというだけである程度の需要が見込めたし、しかもイングヴェイ・マルムスティーンの超速弾きスタイルは既にウケまくっていたから確実に売れると見込んでどの国よりも早くそのオファーを出したらしい。一方のイングヴェイ側もどちらにしろソロ活動を中心にしない限りあのエゴは満たせないのもあっただろうから、渡りに船的に話に乗って、ツアーの合間合間でスタジオに入りレコーディングを進めていたらしい。結果的にはさっさとバンドを辞めてしまって、一気にアルバム制作が加速して1984年に「Rising Force」とのタイトルでリリースされた。この時点で既に確実に何かが違うギタリストとして認知されていたので、この「Rising Force」が以降の世界を変えたアルバム、ギタリストとして認識するには少々弱かったが、それでも今現在に至るまでネオクラシカルメタルの始祖として崇められる作品、そしてイングヴェイ自身の作品の中でも一二を争う出来映えのアルバムとして語られる事が多い。自分的には丁度このアルバムがリリースされた頃にイングヴェイを知って聴いたので正にそのまま、何だこれ?的に耳にしていたし既にギターを自分でも弾いていたので、全く理解不能なこのアルバムはどう取り組めば良いか分からない聴き方だった。ただ、ひたすらに美しいし、メロディアスでギターの音もマイルドでキレイに粒が揃っている、ガサツさは全く見当たらないし、完璧なクラシカル作品に聞こえていた。クラシックをそこまで知らなかったガキの頃なので、ホント、何なのか理解不能だった。まだリッチーのギターも聴けていない頃だったのもあるか。

 冷静に事ある毎に聴いたり1985年の日本公演のライブ映像を当時から見たりもしていたが、ギターを使い、クラシックと同様のスタンス、メロディ、曲の構成、組み立てや組曲へのアプローチ、スケールなどそのどれもがブルースから発展したロックとは無縁の世界だと気づくのにはかなり時間を要した。その自分の概念にはない世界が目の前で繰り広げられ、しかもどう見て聴いても凄いのだから困る。自分が弾けるギタープレイではないし、どう聴いて良いかも分からないので、その意味ではハマらなかった、ハマりようもなかったので、以降メタルの世界とは一線を画した接点を持って聴いているのはその辺が理由だろう。ところがひとりの単なるリスナーとして聴いていると、これはもうとんでもないアルバムだし、ギターインスト中心のアルバムと言ってもそれこそクラシックと同じく音楽が構築されているのだから単なるギタリストのエゴ丸出しのソロプレイ弾きまくりやフュージョン作品とは違うし、当然歌の入ったポップアルバムでもないからその意味でも自分的には初めて聴いた音楽で、後追いで歴史を紐解いてみてもこういう作品は本作まで存在していなかったと思う。ジェフ・ベックのアルバムがギターインストで音楽を奏でている作品だが、全く趣の異なる音楽世界だし、フュージョン系統ともまるで異なる。ロック、と言うよりはメタルギタリストのソロインスト中心アルバムだとこうなるのかとの斬新さが味わえるアルバム。以降の世代に進むと本作のようなスタイルのアルバム、また、こういうのもありと証明された結果、スティーブ・ヴァイやフランク・ギャンバレなどの素晴らしいクリエイター、ギタリスト達がまた異なる角度での音楽を作り出していったが、その意味での始祖は本作となるだろう。ジミヘン、エディと来ての同じ意味合いでのイングヴェイとは語られないが、リッチーとかなり親しいくらいの意味でギターの革命者だと思う。

 アルバムのオープニングがクラシックギターの美しい音色と旋律で紡がれ、今となってはかなりチープに聴こえるドラムの音色で始まるが、その時点からとんでもないギターの音色とプレイと旋律で聴くものをとにかく一気に惹き込みそのメロディを植え付ける「Black Star」、続いての「Far Beyond The Sun」になると今度はもうこれこそ後のイングヴェイを決定付けるかのようなフレーズ、スケール、音色、プレイ、革新的なスタイル、これぞネオクラシカルと言わんばかりの唯一無二の世界で起承転結を明確に表した素晴らしき楽曲が繰り広げられる。それもぶっ飛びのギターテクニックと共に奏でられるので、どうしてもプレイそのものへの注目度が大きくなりがちだが、音楽として素晴らしい完成度を誇る傑作。同様の意味では正にクラシック界ではとても良く知られている「アルビノーニのアダージョ」からの流用となる「Icarus's Dream Suite Op.4」のアレンジや構築美、構成においてもこれが二十歳そこそこのミュージシャンが作り上げた代物とは思えない、正しく天才としか言えない曲を披露している。2曲だけボーカル参加の楽曲もあるが、さほど重要性は高くなく、やはり音楽の構築とギターでの披露度合いに着眼点が置かれる作品として仕上がっている。ギターと言う楽器がこんな風に進化するなど、誰も考えなかったが、発想の源にはやはりスウェーデン人だから故のクラシック文化、パガニーニとジミヘンに加えてリッチー・ブラックモアからの影響を見事に消化しての音楽、凄い。

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好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪