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VMVとかコーポレートメッセージばかり書いているコピーライターが最近の開発プロセスをざっくりまとめてみたぞ2021

はじめに

先日、自分の脳内整理のために、ざっくりぽんとFacebookにVMVやコーポレートメッセージの開発プロセスを投稿したところ、意外にもけっこう反響があったので、少し加筆修正してここに書いておこうと思います。

先に断っておくと、この方法論自体は、これまで現場で学んできたこと、書物から模倣したことなどを独学・独断で合成・補正して構築したものですので、そこんとこよろしくお願いいたします。

なお、ここで書き出しているプロセスは、テンプレじゃありませんし、複数のプロジェクトで実装した方法論を棚卸しして再構成しているので、全案件、このまんま走らせてるということでもないっす。あと、正直、僕の理想論みたいなものも混ざってるかもしれません。

たまに、若い同業者さんとか、「こういう仕事やってみたいんですよ」って言ってくれたりもしますが、ねー。めちゃくちゃ重たいんですよ。しかも、自分のみならずクライアントにとっても重い。コピーというか、フレーズとしての言葉を書く時間なんてプロジェクト全体の5%くらいのもんで、それまでにあるのは、計画・調整・調査・取材・整理・可視化・共有・議論・破壊・再考……の嵐です。通常のコピーがコピーライター1人で書くものだとしたら、VMVはより多くの人間を関与させて書かねばならない類いの言葉だったりもします。いや、この「関与」がまたね、むちゃ大変。

でも、仕事としてはものすごく健全な側面もあります。だって、社内で悩み抜いても結論が出なくて、それでも、自社をドライブさせる言葉を求めて、さして知名度もない僕なんかを探し当てて依頼してくださるわけですよ? クライアントがその言葉の必要性に対してガチ of ガチなんですよ? 圧倒的に言葉が主軸の仕事です。誰のために書く?とか、何のために書く?とか、悩む余地なんてないんです。ええ。めちゃ重いです。でも、めちゃおもしろい。と、僕は思っています。

と、前置きが長くなりましたが、ここからが本編です。とりあえずある程度は時系列のプロセスでナンバリングしてあります。


(1)相互理解
クライアントにとって重要極まりない言葉の開発を引き受ける以上、クライアントを知ることだけでなく、こちらの実績、考え方、目指すことを、関与してくださるプロジェクトメンバーに知っていただく。
もっと言えば、好きになってもらえるためのフローを丁寧に重ねていきます。具体的にはプロジェクトのオープニングセレモニーとしての全体会議とか、けっこう重要かなと思っていて、「お前誰だよ」「なんかよそからきたやつがカッコつけた言葉つくって消えてったぞ」にならない努力からはじめることにしています。

(2)プロジェクトフローの設計
言葉の開発に当たって、社内の誰をどう巻き込むかを定義します。主には経営者主導型の「トップダウン」、育成なども兼ねた「ボトムアップ」があります。VISION・MISSIONレイヤーについては経営者と、VALUEは社員参加型で。みたいなやり方もありますが、これはもう、クライアント社内の状況や課題によってどんどん提案の仕方を変えています。いずれにせよ、成果物以前の「プロセス」から会社の現状整理、社内間の課題共有、理念浸透につながる道筋を組み立てることがキモです。 

(3)具体的事業・サービスの理解
無形サービスであればユーザーインタビュー、担当各所のスタッフインタビュー。有形のシステムとかならデモやレクチャー、ロールプレイングなどを実施して、その会社が何を提供しているのかを具体的に把握していきます。  
これは単純に反省なのですが、ある程度規模感のあるクライアントの場合、いきなり経営者のインタビューとかを実施して、マインド部分を深掘りするよりも、こっちの具体的な業務レイヤーから体験型でインプットすることをおすすめします。その方がマインド部分の解像度も格段に高くなり、経営者に対するインタビューの質も向上します。

(4)「問い」の設計
陥りがちですが、いきなりワークショップやって「VISIONはなんですか?」などと聞いてもなかなかよい答えは導き出せません。
VISIONならVISION、MISSIONならMISSIONの構成要素を分解し、その構成要素を導き出せる「問い」を設計していく必要があります。やり方は……いずれまた。

(5)「答え」の整理
(4)を通じて得られた答え=キーワードを整理します。整理の軸は「時系列」になるケースが多いように感じています。
すなわち、未来=実現していないけど実現したい、実現しなければならないことが「VISION」の元になり、現在=実現している、果たしていることが
「MISSION」の元になり、過去=企業文化として培われてきた、大切にされてきた価値観が「VALUE」の元になる……みたいな構造がわかりやすい例でしょうか。(いや、わかりやすいか?これ?)

(6)構造化
ここまでで得られた情報・エッセンスを言葉ではなく、視覚的な図などで整理して表現して、これからつくるべき言葉の立ち位置、役割、使い方を定義し、合意を形成していきます。

(7)レターワーク
ここまでで理解してきた企業の人格、指向性、具体的行動や社会的機能などを踏まえて、自己紹介からはじまる「手紙」を書きます。この「手紙」の中に織り込まれていくメッセージ性やフレーズがもろもろの材料になって行ったりしますし、この「手紙」自体がAbout Usやステートメントの原型になったりもします。因みに「レターワーク」という言い方は独自のものです。というか、つい最近思いついた暫定呼称ですね。でも、ライティング特化のRockakuらしい手法かなと思ってます。

(8)ハードルチェックボックス
最終的なクリエイティブとなる「言葉」が、はたしていなければならない機能や効果を箇条書きのチェック項目として立てていきます。この項目が提案した「言葉」の評価基準となります。

(9)提案
ここまで長い道のりでしたが、上記を踏まえて「言葉」を提案し、フィッティングしながら「コピーライターの言葉」から、「クライアントの言葉」へと磨き上げていきます。


……とまあ、ひとまずはこんな感じ。とある企業媒体で寄稿した原稿も、近日、こっちで公開していいことになったので、またこの手の話は書いて見たいと思いますよ。んでは。

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