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自宅近所の変な一軒家を借りて仕事場にしてからの変化と、これからのこと。

久しぶりの更新となりますが、前回「前編」で終わっていたこのnote↓の続きを書いていこうと思います。今回が「後編」かというと、うーん。なんだろう。「続編」って感じですかね。

前回までのあらすじ

少し時系列を整理しますが、2020年春……言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大が起こって、在宅での仕事を余儀なくされました。

んで、5月前半くらいまでは仕事も減って、かなり不安な気持ちを抱えたまま、それでも必死に仕事をして……幸いにも徐々に仕事量が増えていき、狂ったようにオンライン会議+オンラインプレゼンをこなしているうちに7月に長男が誕生。

その直後くらいに、家の近所で昔から気になっていた古い元床屋→喫茶店→雑貨ショップ兼カフェ→空家の窓が開け放たれているのを見て、急に「借りてみようかな……」と思い立ったものの、どの不動産屋さんに聞いても大家が見つからず。結局、近所の顔なじみのクリーニング屋の女将さんに紹介してもらって、めでたく9月から入居……というところまでが前回のあらすじですね。

それから早くも3ヶ月。その間の変化とか、考えてきたこととか、この先のあれやこれやについて、少し書き記していこうと思います。

ひとまず、コピーライターらしく
「名前」から設計しはじめてみる

そもそも、この場所を借りるに当たって考えていたことは、ざっくりこんな感じでした。

・基本的にはあくまでもサブの仕事場として使用する
・飲食店用の設備はあるが飲食業には手を出さない
・なんとなく地域に対して開けた場所にしたい
・育児支援的な意味合いでオムツ交換とかにも使って欲しい

この時点では、そんなに整合性とか客観性を持ってない状態で、「そうだったらいいかもな」くらいの妄想レベル。

でも、ちょっと考えればわかるはずなんだけど、これってけっこう無理があるんですよね。

想像してみてください。「自分が住んでたり、通勤通学で毎日通りかかる場所の空家を誰かが使い始めたらしい」という状況で、窓に"オムツ替え利用無料!"って書いた札を出したところで、みんな怖がって近づいてきやしませんよね。

そこで少しだけ考えました。

とりあえず、気になった人がネットで調べたら答えに行き当たる状況をつくろう。まずはそこからだ。と。

で、まず着手したのがこの建物のネーミングでした。いくつか候補を考えましたが、最終的に行き着いたのが「ときどき事務所」という名前でした。

▼「どきどき事務所」ネーミングコンセプト
 ・エッジの立った「二の線」を狙わずにハードルを下げる
 ・「ときどきしかいないこと」を担保する
 ・「ときどき」+業態名でいろいろなことを柔軟に展開できる設計
 
▼「ときどき」の展開例
 ・ときどき書店=リトルプレス販売会
 ・ときどき画廊=作品展示スペース
 ・ときどき食堂=フードイベント
 ・ときどき市場=フリーマーケット など

つまり、こういう感じです。↓

↑この「ホワイトボード可変式サイン」は僕的にはなかなかの発明で、SNSでもまあまあ評判になりました。そうそう、盟友・岩沢兄弟が主催する「グッときたデザインアワード2020」も受賞しちゃいました。いえい!

当初はWIXなどで簡易的なサイトをつくろうとしたんですが、そもそもサイトをつくるほどのコンテンツもない状態なので、まずはInstagramのアカウントを作成。戸田市や戸田公園に紐付くハッシュタグやアカウントをたどって、地域の人たちをフォローしていくことからはじめました。


Instagramアカウントの立ち上げから見えてきた
まちの先輩プレイヤーたちの存在

そこで初めてわかったのは、20年近く住んでいる戸田のまちについて、自分はほとんど何も知らなかったということでした。

例えば、「トダピース」というユニークな活動している「平和建設株式会社」という不動産会社があったり、その平和建設さんが運営するギャラリーとアトリエが付帯した木造賃貸住宅「はねとくも」という場所が話題になっていたり、「HeyCoffee」というスペシャルティコーヒーとうんまいフードを出すイキなお店が人気になっていたり、まちづくりにも積極的に取り組み、自社内に「戸田研究室」まで発足している建築系企業「39JAPAN」さんがあったり、駅前の退去した居酒屋物件で「さぼり場」というキッチン付きの多目的スペースが生まれていたり、なにより、戸田公園エリアを草の根的に網羅しているローカルメディア「戸田公園ガイド」があったり……

正直、「花火と競艇場とカレーハウスチリチリ以外何もない」くらいに思っていたこのまちが、一気におもしろそうに思えてきたわけです。

建物が持っていたポテンシャルに助けられる

↑床屋時代から10年以上停止していた時計の復活に成功。まちの景色の一部に関与できたような、ちょっと嬉しい気持ちに

戸田のまちに関わるアカウントをフォローしまくること数日。徐々に変化が出てきます。そう。フォローバックです。そして、なんとなくわかってきたのが、「みんな、この建物を気にはしていた」ということでした。

そして、ついにファーストコンタクトが。先ほどご紹介した39JAPANの戸田研究室の室長から「一度おじゃましたい」とのDMが届いたのです。

これを皮切りに月に2〜3件くらいのペースで、地元の企業の方や、フリーランスの方、普通に気になっていた方などとのコミュニケーションが生まれ続けました。
「トダピース」を運営する平和建設さんの社長ご夫妻に至っては、ふらっと飲みに来てくださることもあったりして。

そしてついには我がまちが誇るローカルメディア「戸田公園ガイド」さんにも掲載していただくことができました。

まちなかの路面店で「仕事場」を開くということ

人を呼びたいならカフェとか店の方がいい。コーヒー1杯300円でも"お金を出してその場にいる"という関係性はとてもシンプルに完結していて、安心感があるから。でも、"とりあえず無料です。どなたも気軽に遊びに来てください"は、逆に警戒されるよ。

これは、この数ヶ月起きたさまざまな出会いの中で、特に印象的だった会話の一部です。僕にはそこそこ忙しい本業があるので、ここで常時コーヒーを売ったりすることはできません。そして、一応、運営しているのは歴とした営利企業である株式会社Rockakuで、そもそもボランティア活動がしたいという思いもそれほどないわけです。

ただ、普通の住宅街の、寂れ切った(元)商店街の一角に、なぜか「コピーライター事務所がある」という状況から、怪しさを極力排除して、おもしろさだけを広げたい。もっとシンプルに言うと、たぶん、友だちが欲しいだけなんですよね。

最初は張り紙をつくって挨拶文を掲載してみたりもしましたが、怪しさが増すばかり。とりあえずは、Instagramに振り切ってジワジワ認知を広げていく方向にシフトしながら、コロナがやや落ち着いていた2020年11月に第一回イベントとして芋煮会を開催。そこでも多くのご縁が生まれました。

そして最近(2021年1月)になると、公園で「ときどきさんですか?」と声をかけてもらえるようになるという謎の浸透度合いを見せています。

いやまあ、別にそこから仕事が生まれたり、大きなムーブメントが生まれたりとかではないんですよ。一つひとつは本当に些細な出来事にすぎないかも知れない。でも、そこには、この建物を借りる前には想像もできなかった、「得体の知れない現象」がたくさん生まれている。とりあえずは、ここに価値を見出して、おもしろがりながら、本業は本業でがんばっています。

でも、せっかく、こんな路面店を持つことができたので、コロナの件とも向き合いながら、いろいろな企画を考え中です。

・地元企業・個人店向け「現状持ち込み制チラシ改善教室」
・集客改善設計ワークショップ
・お座敷フリーマーケット(2階にある12畳の座敷を活用)
・落語会(2階にある12畳の座敷を活用)
・作品展 などなど

「地域の中で何かしたい」という人がいたら、ちょこっと参考になるかも知れませんが、ある程度、長い間、その場所にあった古いアイコニックな建物を拠点にすることは、想像以上にメリットが一杯あります。

・建物は個人の顔より物理的に大きい存在感がある
・建物はその場所にずっとあり、衆目に触れるメディアたり得る
・居場所が明らかである=信用につながりやすい
・建物自体への興味から新しい縁が生まれやすい
・特に路面1階物件はまちとのアクセスがダイレクトになる

まあ、他にも色々あるんですけど、例えば僕が自宅3階の物置部屋を拠点にしたままだったら、フルリモートでこのまちからあまり出ない生活を続けていても、今のような状況は生まれなかったと思うんですよね。建物の強さって、ローカルの文脈に入っていく中では、かなり重要なエッセンスになりそうだなと。

あと、もう一つあるのが、これはまあ、僕に限ったことですが、「コピーライター」という職業のレア度がけっこうなキーになってたりもします。たぶん、市内で活動している同業者、ほとんどゼロなんじゃないですかね(住んでいる人はいると思いますが)……。

「物珍しさ」とは、市場のなさとも直結しますが、とは言え、マーケティングのしがいはあるところですし、そこも含めて、「あの元床屋に巣をつくっているコピーライターがいるらしい」という話題が、僕の知らないところで、けっこう盛り上がってたという噂もあり、実際、地元のビジネスコミュミニティーにお呼ばれしていく機会も生まれつつあったりします。

緊急事態宣言も発令され、ますます先が読みにくい状況になっている昨今ですが、Rockakuも完全にフルリモート体制に移行し、僕自身もこのまちに物理的な軸足を置きつつ、柔軟に動いていこうと思ってます。

ということで、今回の「続編」はここまでにしておきます。またちょこちょこと更新&発信していきますが、もしもこの活動の動向が気になる!なんて思ってくださった方がいたら、とりあえずはInstagramのフォローをよろしくお願いいたします。

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