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子供達の主体性が育まれる「土壌(環境)」をどうつくっていくか…それをテーマにして、ミニバスケを使った親子向けワークショップを運営している任意団体の躍心JAPAN
躍心JAPANが提唱しているものは、「子供達よりも、まずは我々大人から変って行こう」というメッセージ性があります。

この任意団体が発足するキッカケとなった一つ、今から15年ほど前の2007年辺りに、ボクが呟いていた「3つの感謝の気持ちを育む」というものがありました。
感謝の気持ちが強くなると、誰でも不思議と素直にもになれる…。
現代社会の誰もが疲弊しやすい情勢では、子供達よりも大人の方が、もっと自分にも周りにも素直になる必要性も感じるのです。

以下のコラムは、ミニバスケを喩えに出して語っている部分が多いですが、少年スポーツに関心が無い方でも、目を通してもらえると嬉しいです。

1.ヒトへの感謝

「あなた達が大好きなバスケを続けられることについて、誰に感謝する必要がありますか?」という問いに対し、多くの子供からは「親」や「指導者」の名前がでてきます。

これは確かに間違いではありません。
プライベートの時間を削ってまで、毎日・毎週のように子供達と真剣に向き合って頂いている指導者。
毎朝・毎週子供達よりも早く起きてお弁当を作って下さったり、応援に駆けつけて下さる保護者。

ときどき子供にとっては、指導者や親が口うるさい存在にしか見えない日もあるでしょう。それでも、大概のお子さんは、指導者と親の支えがあって、大好きなバスケが続けられる認識は持っています。

感謝すべき人たちは…

実は…感謝しなければならない人達は、もっとたくさん存在しています。
公式戦の大会だけはなく、小さなカップ戦や練習試合であっても、試合の運営には、とても多くの人が支えていることを意識しなければなりません。

大会関係者、試合当日のボランティア審判、会場提供先の方々、多くの人達の理解と賛同があってのことだと気づいているでしょうか?

さらに、そうした人達は、試合の日だけ働きまわっておられるのではなく、開催準備に走り回ったり、打ち合わせに時間を割いたり、審判を務める人などは、子供達のために審判講習会などに出向く時間を割いて勉強もされていたり、目に見えない努力も多くされています。

そしてそういう審判やオフィシャル席を任される人は、試合では大きなプレッシャーを感じながら奮闘頂いているのです。
(納得できないジャッジをする審判を詰る親御さんまでたまに見かけるが、そこにはボランティアで懸命に走っている人への感謝の欠片も見えない。)

感謝すべき人達はさらに…

そしてさらに、感謝すべき相手はこうした人達だけではないのです。

対戦してくれる相手チームの選手、オフィシャルをしてくれる他チームの選手…この選手達も、あなた達と同じように、もしくはあなた達以上に練習して、同じ試合会場に来て対戦してくれるのです。

そう考えると…対戦相手の選手たちは「敵」ですか?もし、そういう考え方があるなら、少し残念です。
(ここでも、対戦選手のミスやファールを詰り、心無い声を浴びせる親御さんの姿を見るたびに、哀しくなる。)

戦うべき相手は、あくまでも「周りの人への気配りも忘れ、自分勝手な振る舞いばかりをしてしまう自分自身」です。
これは、親子共に言えることです。

対戦相手の選手たちは、「日頃の練習の成果、日々の自分の生活態度を試すために、胸を貸してもらえる人達」と思えば、試合会場に来てくれただけでも感謝の気持ちが生まれませんか?
そう思えるなら、会場で他チームの子達に顔合わせしたら、自然と「こんにちは!」と大きな声で挨拶ができるはずなんです。

娘がミニバスケ時代にお世話になった指導者のお言葉ですが、「試合」というのは、日々の生活態度の「試し合い」です。

あなた達のあいさつには、本当に「気持ち」がこもっていますか?
相手がどういう強さのレベルであっても「自分達のバスケをする強い意思」を持って、対戦相手に敬意を払ってあいさつしていますか?

まだまだ感謝すべき人はいる…

さあ、もっと感謝すべき人を、身近に感じてみましょう…。

バスケは何人でするスポーツでしょう?
さらに、ミニバスケではチームに最低10名揃っていないと、大会登録すらできません。

日頃から、同じチームに入った仲間に感謝していますか?
「お前、下手くそやねん!おれにパスよこせ!」…なんて気持ちが過ったことなどはありませんか?

10名以上のチーム全員で、意識レベルも技術レベルも一緒に高めていかないと、心から楽しめるバスケはできません。
それならば、まずは「チームに入ってくれたこと」に感謝すべきでしょう。
感謝の気持ちが強ければ、つらい練習でも厳しい試合の流れでも、仲間を励まし、勇気づけ、心と技術を高め合うという気持ちと行動に変わるはず。

つまり、バスケに関わる全ての人に感謝できない人は、決して上手くなれないのです。


2.モノへの感謝

このモノというのは、バスケの道具というものだけはありません。
場所も含まれます。

日頃練習や試合で使える自分達の体育館…当たり前のように使っているかもしれませんが、しっかりとバスケが練習できる体育館がなかなか確保できないチームもあるのは知っていますか?
体育館が、毎日・毎週、あたりまえのように使えるということは、すごい幸せなことなんです。

体育館を使用させてくれている小学校の理解、地域の理解に支えられています。場合によっては、使用料などのお金を出して下さる人達によっても支えられています。
そして、子供達のケガをしないように、ワックスがけの状態を常にチェックしておられる裏方の人の存在もあります。

そうした大切な場所であるという意識があるならば、練習前や練習後に自分達が行うモップ掛けなどは、気持ちを入れてしっかりやるはずです。
そういう意識で掃除もする選手は、不思議と不用意なケガもしません。

さあ、今度は道具についても考えてみましょう。

あたりまえにあるのではない…

チームが保管する倉庫にたくさんあるボール…。
これは、おそらく先輩達が残していったり、保護者や地域の方々が提供して下さったものであることが多いと思います。
チームを卒業していった先輩たちの苦労で獲得した賞品のボールや、周りの人のご好意でお金を出して寄付されたものであったりもします。

何の意識も持たず、当たり前のように日頃ボールに触っているかもしれませんが、多くの人の協力によりチームが手に入れた大切なボールという感謝の気持ちはありますか?

感謝していればこその行動

少しでも上手くなりたいという意識レベルの高い選手なら、どういう背景でチームにボールや各種練習道具があるのかを感じ取りながら、大切に扱います。
少し空気が抜けてると感じるならば、自ら進んで空気を入れますし、汚れといると感じたら磨きもします。

そして、身につけているバスケットシューズ…これは決して安い買い物ではありません。

お父さんやお母さんなど、皆さんの保護者が、毎日働いたお金で買ってもらったものですよね?
その感謝の気持ちがあるなら、バッシュを絶対に床にポンっと投げたりする子はいないはずです。


3.トキへの感謝

トキ…つまり、時間です。

どんなスポーツでも、長い時間を使って練習したいところです。
しかし、どのチームも練習時間は限られています。
限られた時間の中で、どれだけ集中して、自分が成長できるために有効に時間を使うかがとても大切です。

人の時間も使っている

これは「ヒトへの感謝」にも通じる点ですが、監督やコーチなどの指導者、練習に立ち会う保護者の方など、どれだけ多くの人達が、自分達に時間も使っているのかも意識する必要があります。
多くの人の時間を使って練習できているという認識から、「時間」を大切に使って欲しいのです。

「今という時間」を感謝する人は、練習中の指導者の言葉を一言も聞き漏らさず、チームメイトの動きもしっかり見るなど、「集中力」が高くなるはずです。

競技自体が時間の勝負

そもそもバスケットボールなどの競技は、時間のスポーツでもあります。

ミニバスケであれば、6分×4Q。
(中学バスケであれば、8分×4Q。高校以上であれば、10分×4Q。)

1Qあたり6分間で、最大のパフォーマンスを出し切り、残り時間何秒の間に逆転する、またはリードを守りきるという「時間」との戦いです。

日頃から、「時間」を意識して練習しているチームは、間違いなく強い。
そういうチームは「時間の使い方」の意識が、日々の生活態度にも表れている傾向が強いです。

日頃の生活でも、さっさと着替える。
さっさと行動する。
遊びと勉強の意識をさっさと切り替える。

この「トキ」への感謝は、日々の暮らしの中に宿っているものです。

感謝の先にあるもの

  1. ヒトに感謝する

  2. モノに感謝する

  3. トキに感謝する

自分以外の人のこと、道具や場所の存在、時間のありがたさを意識していくと、人間は不思議と「素直」になります。

「素直になる」というのは、実は大人でもとても勇気がいることなのですが、「自分にできないことを誰か(何か)にしてもらっている」ことを認識することから始めれば良いんです。

自分にできないことをしてもらえる喜びとありがたみを理解している人は、他の人にも優しくなれるし、自分にできることは何だろう?という気持ちが自然に芽生えます。

体格や身体能力の差に関係なく、コート上でも、日々の生活でも、チームに貢献できる仕事はいくらでもあります。そうした事を理解して努力する子には、バスケットボールは正直に君達に応えてくれるはずです。


4.子供より親から変る必要性

さて…ここからは、子供達へのメッセージというより、少年スポーツをしている親御さんへのメッセージになります。

ボク自身は、娘のバスケの「追っかけ」をしてきた一人の保護者に過ぎず、指導者でも教師でもありません。ましてや、バスケットボールは素人です。
娘のチームに試合に勝ってほしいばかりに、過干渉のダメ親父だった時期もあります。

まさに教育ではなく、自分自身も気づかされた「共育」でした。
ありがたいことに…娘のミニバスケご指導の様子から、ボク自身が上述のことに気づかされました。

3つの感謝の気持ちは、まずは親御さん同志で話し合い、我々大人達から感謝の気持ちが行動に表れると、不思議と子供達の行動が変わりました。
彼女達のバスケも変わりましたし…何よりも日頃の生活態度を自分から変えて行きました。
もちろん、美談だけではなく、もどかしい局面など、苦汁の日々もありましたが、確実に子供達から変っていき、試合にも勝つようになりました。

稚拙ながらの経験談ですが、この「3つの感謝の気持ち」を子供達に気付かせるためには、親が変わらないといけないということを実感したものとして、エピソードを以下二つ付記します。

(1)親が示す「ありがとう」

一つ目は、「感謝の気持ち」は親のほうから先に子供に示そうということです。ちょっとしたことでも、親から子供に伝える「ありがとう」の言葉数を、家庭の中で増やすことがすごく大切です。

このあたりまえのことが、案外できていない自分に気づきます。
照れくさいし、今さら何をと思う人もいるでしょうが…それでも、「生まれてきてくれてありがとう」から始めて良いと思います。

そして、何気ない「電気つけてくれてありがとう」「お醤油とってくれてありがとう」「バッシュを大事に履いてくれてありがとう」など、いくらでも子供にありがとうという言葉を掛ける機会はあります。

「うちの子は、親に全然感謝してへん!」と嘆いて相談してくる親御さんも多いですが、家庭事情をお聞きすると、その大半が「まず親から子供に対し、様々な感謝の気持ちを示す姿勢を見せていない」のが実態です。

日々、我が子に「ありがとう」を伝えていないのに「親に感謝しろ!」というのは、まず子供の心には響きません。
そして、日頃各家庭の中で「親から子へ」「子から親へ」「兄弟姉妹の子供同士で」どれだけ「ありがとう」という言葉を発するようになると、まちがいなく「心」が動いていきます。
「心」が動かないと「体」は動かないのです。

また、指導者との連携も大切です。

指導者が「私らにもっと感謝しろ」
保護者が「私ら父母に感謝しろ」

子供にそれを言うのは、ナンセンスですね。
感謝したくなる言動・振る舞いを、大人達から魅せているでしょうか?

むしろ、家では「監督や試合会場の方々に、どれだけ支えてもらっているのか…私達は常に感謝している。」をじっくり子供に話すことですし、指導者は「どれだけ家の人の協力があるのか、君ら肌で感じているか…感謝すべきは私ではなく親御さん達だ。」を話してもらうことです。


(2)本質を伝える必要性

2つ目は…「モノへの感謝」のところで、バスケットシューズの話を子供達にしたときのエピソードです。

お金の意味…働くとは何かをしっかり子供に伝えないと、「バスケットシューズを粗末にするな!」だけでは、子供の心には響かないということです。

「君達の大切なバッシュを買ってくれたお父さんやお母さんは、毎日働きに出て、誰からお金を貰っているんだろう?」と聞くと…
大半の子供が「社長」「上司」「国」と言ってくるほか、本気で「銀行のATM」という返答もあります。

この子供達の回答って…今の世の中を象徴しているのかもしれません。

「勤め先の会社からお金をもらっている」というのは、給与支払いという事象の回答としては全く間違いではありません。
しかし、それは社会の勉強としては、あまりにも寂しいなので子供達には、保護者会代表の立場で、次のような話をしたことがあります。

君達の親御さんには、おそらく君たちの親御さんの働きぶりによって、できた商品やサービスに感動したり感謝して、お金を払ってくれる人がいるはず。つまり君たちの親御さんが勤める先でつくられた商品の先には誰がいるんだろう?

こういう問いには、ご自宅でご商売をしているお子さんが即答します。
「あ!…お客様だ、」

お金というのは、エライ人から貰うんじゃなくて、人に喜ばれたり、助けてあげたりする…つまりお客さんが感謝の気持ちをお金にして支払ってくれている。それが『経済』というんや。
そして経済は『ありがとうの循環』でできている。
君たちのお父さんは、お客さんに喜んでもらう働きを毎日しているから、お金が入るし、そうしたお客さんの笑顔の積み重ねのお金で、君達はそんな立派なバッシュが履けるんやで…。

こうした話は、子供達は案外知らされたことではなかったりするので、とても大いに関心を寄せます。
今の学校教育では、そうした社会の事に触れた話もないのでしょうか…。
中には、感動して涙ぐむ子もいたりします。

単なる「買ってもらった」のではなく、「どういうお金で買ってもらった」という話を理解してくれると、心の響き方が違うようです。

お金を「単なる物の流通機能」として味気ない無機質なマネーゲームと違って、温かみのある有機質なものとして子供に理解してもらうと、その温かみがモノ(バッシュ)に替わっていると捉えて、大切にしようとします。

そうしたお金で、自分の足を守ってくれていると認識した子供達は、一人もバッシュをポンと粗末に投げ置くなんて行為もなくなります。

1つ目も2つ目も、あくまでも体験談。

でも、「バスケを通じての人間形成」という観点では、社会の縮図や、現代社会で希薄になりがちな「人とのつながり・感謝」という点を絡ませて、子供に接することは、とても大切なんだろうなと思ったりするわけです。

バスケ経験も浅く、指導者でもない僕の経験談では、参考にはならないかもしれませんが、バスケを通じて、多くの子供達の心が磨かれることを切に願っています。

そのためにも是非、明日からでも親御さんの方から、日常生活において、たくさんの「ありがとう」を伝えてあげて下さい。
いや、それは今日からでも、今からでもできることですよね!

躍心JAPAN 団長
河合 義徳

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